会社法 条文 会社法 解説
第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転

第2章 合併

第2節 吸収合併
第1款 株式会社が存続する吸収合併

第749条 【株式会社が存続する吸収合併契約】


 @ 会社が吸収合併をする場合において、吸収合併後存続する会社(以下この編において「吸収合併存続会社」という。)が株式会社であるときは、吸収合併契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株式会社である吸収合併存続会社(以下この編において「吸収合併存続株式会社」という。)及び吸収合併により消滅する会社(以下この編において「吸収合併消滅会社」という。)の商号及び住所

 2 吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して株式会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅株式会社」という。)の株主又は持分会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅持分会社」という。)の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

  イ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該吸収合併存続株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項

  ロ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ハ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ニ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

  ホ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 3 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社を除く。)又は吸収合併消滅持分会社の社員(吸収合併存続株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

 4 吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭についての次に掲げる事項

  イ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して吸収合併存続株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ロ イに規定する場合において、イの吸収合併消滅株式会社の新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、吸収合併存続株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ハ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して金銭を交付するときは、当該金銭の額又はその算定方法

 5 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭の割当てに関する事項

 6 吸収合併がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)

 A 前項に規定する場合において、吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社であるときは、吸収合併存続株式会社及び吸収合併消滅株式会社は、吸収合併消滅株式会社の発行する種類の株式の内容に応じ、同項第三号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。

 1 ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 2 前号に掲げる事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 B 第一項に規定する場合には、同項第三号に掲げる事項についての定めは、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社並びに前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。
会社法では、会社の合併方法として、吸収合併と新設合併の二種類を規定している。本節では吸収合併についてを規定している。第749条と第750条は株式会社について、第751条と第752条は持分会社についてである。

名前 条文 説明
吸収合併 第749条〜第752条 一つの会社に、他の会社が吸収され、吸収された側の会社は解散する(第2条第27号)。吸収する側の会社を吸収合併存続会社、吸収される側の会社を吸収合併消滅会社という。


本条は、吸収合併のうち、吸収合併存続会社が株式会社である場合について、合併契約(吸収合併契約)で決めなければならないこと、決めることができることについて規定している。


吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社の両方について、商号と住所について明らかにしなければならない。また、吸収合併消滅会社が新株予約権を発行している場合、吸収合併存続会社はその新株予約権者に対して、吸収合併消滅会社の新株予約権の代わりに、吸収合併存続会社の発行する新株予約権か金銭を交付しなければならない。この時に交付する比率などを決めておかなければならない(第1項)。
第750条 【株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等】

 @ 吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。

 A 吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

 B 次の各号に掲げる場合には、吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員は、効力発生日に、前条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。

 1 前条第一項第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主

 2 前条第一項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者

 3 前条第一項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者

 4 前条第一項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者

 C 吸収合併消滅株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。

 D 前条第一項第四号イに規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者は、効力発生日に、同項第五号に掲げる事項についての定めに従い、同項第四号イの吸収合併存続株式会社の新株予約権の新株予約権者となる。

 E 前各項の規定は、第七百八十九条(第一項第三号及び第二項第三号を除き、第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第七百九十九条の規定による手続が終了していない場合又は吸収合併を中止した場合には、適用しない。
本条は、株式会社の吸収合併の効力について規定している。

吸収合併を行う場合、吸収合併契約を結び、吸収合併の効力発生日を決めなければならないが(第749条第1項第6号)、この効力発生日に吸収合併存続会社は吸収合併消滅会社の権利義務を引き継ぎ、吸収合併消滅会社は解散することになる(本条第1項)。

ただし、吸収合併契約は公示されるわけではないため、吸収合併消滅会社の解散は登記があるまで、第三者に対して主張することはできない(本条第2項)。

吸収合併消滅会社が新株予約権を発行している場合、解散する会社の新株予約権が残っていても無意味であるため、吸収合併の効力発生日に、その新株予約権は法律上消滅する(第4項)。その新株予約権を持っていた者に対しては、吸収合併存続会社の新株予約権か金銭が交付されることになる(第749条第1項第4号)。
第2款 持分会社が存続する吸収合併

第751条 【持分会社が存続する吸収合併契約】


 @ 会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社が持分会社であるときは、吸収合併契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 持分会社である吸収合併存続会社(以下この節において「吸収合併存続持分会社」という。)及び吸収合併消滅会社の商号及び住所

 2 吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員が吸収合併に際して吸収合併存続持分会社の社員となるときは、次のイからハまでに掲げる吸収合併存続持分会社の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項

  イ 合名会社 当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額

  ロ 合資会社 当該社員の氏名又は名称及び住所、当該社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別並びに当該社員の出資の価額

  ハ 合同会社 当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額

 3 吸収合併存続持分会社が吸収合併に際して吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等(吸収合併存続持分会社の持分を除く。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

  イ 当該金銭等が吸収合併存続持分会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ロ 当該金銭等が吸収合併存続持分会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 4 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続持分会社を除く。)又は吸収合併消滅持分会社の社員(吸収合併存続持分会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

 5 吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続持分会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる金銭の額又はその算定方法

 6 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の金銭の割当てに関する事項

 7 効力発生日

 A 前項に規定する場合において、吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社であるときは、吸収合併存続持分会社及び吸収合併消滅株式会社は、吸収合併消滅株式会社の発行する種類の株式の内容に応じ、同項第四号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。

 1 ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 2 前号に掲げる事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 B 第一項に規定する場合には、同項第四号に掲げる事項についての定めは、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続持分会社並びに前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。
本条は、吸収合併のうち、吸収合併存続会社が持分会社である場合について、合併契約(吸収合併契約)で決めなければならないこと、決めることができることについて規定している。

吸収合併存続持分会社の社員は、吸収合併が行われても、その地位に変化はない。しかし、吸収合併消滅会社の株主または社員は、吸収合併存続持分会社の社員になるか、持っていた株式または持分の代わりに金銭や社債などをもらうか、選ばなければならない。

吸収合併消滅会社が株式会社であり新株予約権を発行している場合、吸収合併存続会社はその新株予約権者に対して、吸収合併消滅会社の新株予約権の代わりに、吸収合併存続会社の発行する新株予約権か金銭を交付しなければならない。
第752条 【持分会社が存続する吸収合併の効力の発生等】

 @ 吸収合併存続持分会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。

 A 吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

 B 前条第一項第二号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員は、効力発生日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、吸収合併存続持分会社の社員となる。この場合においては、吸収合併存続持分会社は、効力発生日に、同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす。

 C 前条第一項第三号イに掲げる事項についての定めがある場合には、吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員は、効力発生日に、同項第四号に掲げる事項についての定めに従い、同項第三号イの社債の社債権者となる。

 D 吸収合併消滅株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。

 E 前各項の規定は、第七百八十九条(第一項第三号及び第二項第三号を除き、第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第八百二条第二項において準用する第七百九十九条(第二項第三号を除く。)の規定による手続が終了していない場合又は吸収合併を中止した場合には、適用しない。
本条は、持分会社の吸収合併の効力について規定している。

吸収合併を行う場合、吸収合併契約を結び、吸収合併の効力発生日を決めなければならないが(第751条第1項第7号)、この効力発生日に吸収合併存続持分会社は吸収合併消滅持分会社の権利義務を引き継ぎ、吸収合併消滅会社は解散することになる(本条第1項)。また、吸収合併契約で決めた内容に従って吸収合併存続持分会社の定款は変更したものとみなされる(本条第3項)。

ただし、吸収合併契約は公示されるわけではないため、吸収合併消滅持分会社の解散は登記があるまで、第三者に対して主張することはできない(本条第2項)。