会社法 条文 会社法 解説
第5編 組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転

第4章 株式交換及び株式移転

第1節 株式交換
第1款 通則

第767条 【株式交換契約の締結】


 株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。
株式交換とは、A会社の発行済株式全部をB会社に取得させ、その代わりにA会社の株主にB会社の株式や社債などを割り当てることである(第2条第31号)。

ある会社の総株主の議決権数の過半数を他の会社が持っている場合、過半数を持っている会社を親会社、持たれている会社を子会社という(第2条第3号、第4号)。そして、議決権数の全部を持っている会社を完全親会社、持たれている会社を完全子会社という。

つまり、株式交換をすると、完全親会社(株式交換完全親会社)と完全子会社(株式交換完全子会社)ができることになる。

完全親会社と完全子会社を作る方法は、株式交換以外に、株式移転によって作ることもできる(第772条以下)。

株式交換完全親会社は、株式会社か合同会社に限られている。株式交換完全子会社は当然ながら、株式会社に限られている。株式交換には、株式を取得される会社と、株式を取得する会社との間で、株式交換契約を締結しなければならないからである。
第2款 株式会社に発行済株式を取得させる株式交換

第768条 【株式会社に発行済株式を取得させる株式交換契約】


 @ 株式会社が株式交換をする場合において、株式交換完全親会社が株式会社であるときは、株式交換契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株式交換をする株式会社(以下この編において「株式交換完全子会社」という。)及び株式会社である株式交換完全親会社(以下この編において「株式交換完全親株式会社」という。)の商号及び住所

 2 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

  イ 当該金銭等が株式交換完全親株式会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交換完全親株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項

  ロ 当該金銭等が株式交換完全親株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ハ 当該金銭等が株式交換完全親株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ニ 当該金銭等が株式交換完全親株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

  ホ 当該金銭等が株式交換完全親株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 3 前号に規定する場合には、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

 4 前号に規定する場合には、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

  イ 当該株式交換完全親株式会社の新株予約権の交付を受ける株式交換完全子会社の新株予約権の新株予約権者の有する新株予約権(以下この編において「株式交換契約新株予約権」という。)の内容

  ロ 株式交換契約新株予約権の新株予約権者に対して交付する株式交換完全親株式会社の新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ハ 株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、株式交換完全親株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

 5 前号に規定する場合には、株式交換契約新株予約権の新株予約権者に対する同号の株式交換完全親株式会社の新株予約権の割当てに関する事項

 6 株式交換がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)

 A 前項に規定する場合において、株式交換完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式交換完全子会社及び株式交換完全親株式会社は、株式交換完全子会社の発行する種類の株式の内容に応じ、同項第三号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。

 1 ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 2 前号に掲げる事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 B 第一項に規定する場合には、同項第三号に掲げる事項についての定めは、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。
本条は、株式交換完全親会社が株式会社である場合においての株式交換について、株式交換契約で決めておかなければならない事項について規定している。

旧商法においては、株式交換完全親会社は自社が発行する新株を株式交換完全子会社に割り当てる方法により株式交換をしなければならなかった。

しかし、現在の会社法では、株式だけではなく、金銭や社債や新株予約権を割り当てる方法により株式交換を行うことが可能となっている。これにより、企業再編等がやりやすくなった。

株式交換契約では、株式交換完全子会社の株主に対して、何をどれだけ割り当てるのかを明らかにしなければならない(第1項第2号)。また、株式交換完全子会社が種類株式(第108条)を発行している株式会社である場合は、株式交換契約において、ある種類の株式をもっている株主に対しては何も割り当てないということを決めることができる(第2項)。
第769条 【株式会社に発行済株式を取得させる株式交換の効力の発生等】

 @ 株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の発行済株式(株式交換完全親株式会社の有する株式交換完全子会社の株式を除く。)の全部を取得する。

 A 前項の場合には、株式交換完全親株式会社が株式交換完全子会社の株式(譲渡制限株式に限り、当該株式交換完全親株式会社が効力発生日前から有するものを除く。)を取得したことについて、当該株式交換完全子会社が第百三十七条第一項の承認をしたものとみなす。

 B 次の各号に掲げる場合には、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、前条第一項第三号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。

 1 前条第一項第二号イに掲げる事項についての定めがある場合 同号イの株式の株主

 2 前条第一項第二号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの社債の社債権者

 3 前条第一項第二号ハに掲げる事項についての定めがある場合 同号ハの新株予約権の新株予約権者

 4 前条第一項第二号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者

 C 前条第一項第四号に規定する場合には、効力発生日に、株式交換契約新株予約権は、消滅し、当該株式交換契約新株予約権の新株予約権者は、同項第五号に掲げる事項についての定めに従い、同項第四号ロの株式交換完全親株式会社の新株予約権の新株予約権者となる。

 D 前条第一項第四号ハに規定する場合には、株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、同号ハの新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する。

 E 前各項の規定は、第七百八十九条若しくは第七百九十九条の規定による手続が終了していない場合又は株式交換を中止した場合には、適用しない。
本条は、株式交換完全親会社が株式会社である場合においての株式交換の効力について規定している。

株式交換の効力は、株式交換契約で決められた効力発生日(第768条第1項第6号)において発生する。これにより発生する最も基本的な効力は、株式交換子会社が発行して株式の全部が、株式交換完全親会社に取得されるということである(第1項)。

株式に譲渡制限がつけられていた場合、その株式を取得した者はその株式を発行していた株式会社に対して、譲渡を承認するかしないかを決定するように求めることができる(第137条)。もし、株式交換完全子会社の発行していた株式にこの譲渡制限がつけられていた場合は、法律上当然に、譲渡を承認したものとみなされる(第2項)。
第3款 合同会社に発行済株式を取得させる株式交換

第770条 【合同会社に発行済株式を取得させる株式交換契約】


 @ 株式会社が株式交換をする場合において、株式交換完全親会社が合同会社であるときは、株式交換契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。

 1 株式交換完全子会社及び合同会社である株式交換完全親会社(以下この編において「株式交換完全親合同会社」という。)の商号及び住所

 2 株式交換完全子会社の株主が株式交換に際して株式交換完全親合同会社の社員となるときは、当該社員の氏名又は名称及び住所並びに出資の価額

 3 株式交換完全親合同会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対してその株式に代わる金銭等(株式交換完全親合同会社の持分を除く。)を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項

  イ 当該金銭等が当該株式交換完全親合同会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ロ 当該金銭等が当該株式交換完全親合同会社の社債以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

 4 前号に規定する場合には、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親合同会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

 5 効力発生日

 A 前項に規定する場合において、株式交換完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式交換完全子会社及び株式交換完全親合同会社は、株式交換完全子会社の発行する種類の株式の内容に応じ、同項第四号に掲げる事項として次に掲げる事項を定めることができる。

 1 ある種類の株式の株主に対して金銭等の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類

 2 前号に掲げる事項のほか、金銭等の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨及び当該異なる取扱いの内容

 B 第一項に規定する場合には、同項第四号に掲げる事項についての定めは、株式交換完全子会社の株主(株式交換完全親合同会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。
本条は、株式交換完全親会社が合同会社である場合においての株式交換について、株式交換契約で決めておかなければならない事項について規定している。

株式交換において、株式交換完全子会社の株主が株式交換完全親会社の社員となるには、持分の交付を受けるのではなく、別に出資をして、その氏名や住所、出資の価額を株式交換契約に記載しなければならない(第1項第2号)。

株式交換完全親会社が、株式交換完全子会社の株主に対して、株式に代わる社債や金銭などを交付するときは、その内容と算定方法を決めておかなければならない(第1項第3号)。
第771条 【合同会社に発行済株式を取得させる株式交換の効力の発生等】

 @ 株式交換完全親合同会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の発行済株式(株式交換完全親合同会社の有する株式交換完全子会社の株式を除く。)の全部を取得する。

 A 前項の場合には、株式交換完全親合同会社が株式交換完全子会社の株式(譲渡制限株式に限り、当該株式交換完全親合同会社が効力発生日前から有するものを除く。)を取得したことについて、当該株式交換完全子会社が第百三十七条第一項の承認をしたものとみなす。

 B 前条第一項第二号に規定する場合には、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、同号に掲げる事項についての定めに従い、株式交換完全親合同会社の社員となる。この場合においては、株式交換完全親合同会社は、効力発生日に、同号の社員に係る定款の変更をしたものとみなす。

 C 前条第一項第三号イに掲げる事項についての定めがある場合には、株式交換完全子会社の株主は、効力発生日に、同項第四号に掲げる事項についての定めに従い、同項第三号イの社債の社債権者となる。

 D 前各項の規定は、第八百二条第二項において準用する第七百九十九条(第二項第三号を除く。)の規定による手続が終了していない場合又は株式交換を中止した場合には、適用しない。
本条は、株式交換完全親会社が合同会社である場合においての株式交換の効力について規定している。

株式交換の効力は、株式交換契約で決められた効力発生日(第770条第1項第5号)において発生する。これにより発生する最も基本的な効力は、株式交換子会社が発行して株式の全部が、株式交換完全親会社に取得されるということである(第1項)。

株式交換において、株式交換完全子会社の株主が出資して、株式交換完全親合同会社の社員になることが株式交換契約で決められていた場合(第770条第1項第2号)、その株主は効力発生日において株式交換完全親合同会社の社員になり、株式完全親合同会社の定款が法律上当然に、変更されたものとみなされる(第3項)。