会社法 条文 会社法 解説
第6編 外国会社
第817条 【外国会社の日本における代表者】

 @ 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

 A 外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

 B 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

 C 外国会社は、その日本における代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
本条から第823条までは、外国会社についての規定である。

外国会社とは、「外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するもの」である(第2条第2号)。つまり、日本の国籍を持たない会社のことである。

名前 説明
外国会社 日本の国籍を持たない会社
内国会社 日本の国籍を持つ会社

外国会社の設立は、民法で認められており、内国会社と同じ権利を有する(民法第34条)。外国会社が日本で継続的に営業をしようとする場合、日本での代表者を決める必要がある。この代表者は、一人でも複数でもよいが、最低一人は日本に住所がある者でなければならない。また、代表者は外国会社の日本での業務に関しては裁判上または裁判外の一切の行為をする権限を有する。この権限に制限を加えたとしても、善意の第三者には主張することはできない。日本における代表者がその職務において第三者に損害を与えた場合、外国会社は損害を賠償する責任を負う。
第818条 【登記前の継続取引の禁止等】

 @ 外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができない。

 A 前項の規定に違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
外国会社は、日本で外国会社の登記をしなければ、日本において取引を継続してすることができない(第1項)。日本での登記がされないうちに、継続的な取引をした者は、その相手方に対して、取引をした者と外国会社は連帯して、取引により生じた債務を弁済する責任を負う(第2項)。
第819条 【貸借対照表に相当するものの公告】

 @ 外国会社の登記をした外国会社(日本における同種の会社又は最も類似する会社が株式会社であるものに限る。)は、法務省令で定めるところにより、第四百三十八条第二項の承認と同種の手続又はこれに類似する手続の終結後遅滞なく、貸借対照表に相当するものを日本において公告しなければならない。

 A 前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号又は第二号に掲げる方法である外国会社は、前項に規定する貸借対照表に相当するものの要旨を公告することで足りる。

 B 前項の外国会社は、法務省令で定めるところにより、第一項の手続の終結後遅滞なく、同項に規定する貸借対照表に相当するものの内容である情報を、当該手続の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により日本において不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。

 C 金融商品取引法第二十四条第一項 の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない外国会社については、前三項の規定は、適用しない。
株式会社(内国会社)は、貸借対照表を定時株主総会で承認を得た後すぐに公告しなければならない(第440条第1項)。

外国会社も登記後は内国会社と同じように日本で企業活動ができるため、計算書類等についても内国会社と同じ規制を適用するのが妥当である。そのため、外国会社(日本における同種の会社又は最も類似する会社が株式会社であるものに限る。)は、定時株主総会による承認と同じか似たような手続きを経た後すぐに、貸借対照表に相当する計算書類を日本において公告しなければならない。
第820条 【日本に住所を有する日本における代表者の退任】

 @ 外国会社の登記をした外国会社は、日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の全員が退任しようとするときは、当該外国会社の債権者に対し異議があれば一定の期間内にこれを述べることができる旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。

 A 債権者が前項の期間内に異議を述べたときは、同項の外国会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、同項の退任をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

 B 第一項の退任は、前二項の手続が終了した後にその登記をすることによって、その効力を生ずる。
外国会社は、日本で継続的に取引をするのであれば、日本に住所を有する者を最低一人は代表者として決めなければならない(第817条第1項)。この日本に住所を有する代表者全員が退任するという場合、会社の債権者に退任するということに対して一定期間内に異議を述べる権利が認められている。

債権者が異議を述べた場合、外国会社は退任をしても十分にその債権者に弁済できる場合を除いて、債権者に対して債務を弁済するか、相当の担保を提供しなければならない。

そして、異議を述べた債権者に対して弁済等が済んだ後に、登記をしてはじめて、退任の効力が生じる。
第821条 【擬似外国会社】

 @ 日本に本店を置き、又は日本において事業を行うことを主たる目的とする外国会社は、日本において取引を継続してすることができない。

 A 前項の規定に違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
日本に本店を置き、または、日本において事業を行うことが主目的の外国会社を、擬似外国会社という。

この擬似外国会社は日本で取引を継続することができない(第1項)。これに違反して取引をした者は、取引相手に対して、外国会社と連帯して生じた債務を弁済しなければならない(第2項)。
第822条 【日本にある外国会社の財産についての清算】

 @ 裁判所は、次に掲げる場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、日本にある外国会社の財産の全部について清算の開始を命ずることができる。

 1 外国会社が第八百二十七条第一項の規定による命令を受けた場合

 2 外国会社が日本において取引を継続してすることをやめた場合

 A 前項の場合には、裁判所は、清算人を選任する。

 B 第四百七十六条、第二編第九章第一節第二款、第四百九十二条、同節第四款及び第五百八条の規定並びに同章第二節(第五百十条、第五百十一条及び第五百十四条を除く。)の規定は、その性質上許されないものを除き、第一項の規定による日本にある外国会社の財産についての清算について準用する。

 C 第八百二十条の規定は、外国会社が第一項の清算の開始を命じられた場合において、当該外国会社の日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の全員が退任しようとするときは、適用しない。
外国会社が日本での営業を禁止されたり、継続的な取引をやめた場合、裁判所は利害関係人の申し立てまたは職権により、外国会社の清算の開始を命じることができる。

清算の開始を命じられた場合、基本的には株式会社の清算手続に関する規定が準用される。
第823条 【他の法律の適用関係】

 外国会社は、他の法律の適用については、日本における同種の会社又は最も類似する会社とみなす。ただし、他の法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。
外国会社に対する他の法律の適用については、以下のように行う。

・会社法で決められている種類の会社と同じ種類であれば、同じ扱いとする。
・どの種類にも当てはまらない場合は、一番似ていると考えられる会社と同じ扱いをする