会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第1章 会社の解散命令等

第1節 会社の解散命令
第824条 【会社の解散命令】

 @ 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができる。

 1 会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき。

 2 会社が正当な理由がないのにその成立の日から一年以内にその事業を開始せず、又は引き続き一年以上その事業を休止したとき。

 3 業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。

 A 株主、社員、債権者その他の利害関係人が前項の申立てをしたときは、裁判所は、会社の申立てにより、同項の申立てをした者に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。

 B 会社は、前項の規定による申立てをするには、第一項の申立てが悪意によるものであることを疎明しなければならない。

 C 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十五条第五項及び第七項並びに第七十六条から第八十条までの規定は、第二項の規定により第一項の申立てについて立てるべき担保について準用する。
会社の解散とは、会社が通常の企業活動をやめることを意味する。解散事由については、会社法第471条と第641条に規定されている。

本条から第827条までの規定は、解散事由の一つである解散命令についての規定である。解散命令は、裁判所が強制的に会社を解散させるものであるため、要件は厳格なものとなっている(要件が簡単なものであると、安心して会社経営ができなくなるためである)。

解散命令の要件
その1 本条第1項各号に規定されている場合
その2 公益のために、存続を許すことができない場合
※1と2を満たした場合に解散を命じることができる。1を満たしたとしても、「会社の存続を許すことはできない」と言えない場合は、解散を命じることはできない。
第825条 【会社の財産に関する保全処分】

 @ 裁判所は、前条第一項の申立てがあった場合には、法務大臣若しくは株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、同項の申立てにつき決定があるまでの間、会社の財産に関し、管理人による管理を命ずる処分(次項において「管理命令」という。)その他の必要な保全処分を命ずることができる。

 A 裁判所は、管理命令をする場合には、当該管理命令において、管理人を選任しなければならない。

 B 裁判所は、法務大臣若しくは株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより又は職権で、前項の管理人を解任することができる。

 C 裁判所は、第二項の管理人を選任した場合には、会社が当該管理人に対して支払う報酬の額を定めることができる。

 D 第二項の管理人は、裁判所が監督する。

 E 裁判所は、第二項の管理人に対し、会社の財産の状況の報告をし、かつ、その管理の計算をすることを命ずることができる。

 F 民法第六百四十四条、第六百四十六条、第六百四十七条及び第六百五十条の規定は、第二項の管理人について準用する。この場合において、同法第六百四十六条、第六百四十七条及び第六百五十条中「委任者」とあるのは、「会社」と読み替えるものとする。
裁判所は、第824条の申し立てがあった場合、解散命令を出すかどうかを決定することになる。その間、会社が財産を自由に処分できないようにする必要が生じることもある。

そこで、会社の財産について、管理人を選任し、その者に会社財産を管理させることにする管理命令を出し、財産を自由に処分できないようにすることができる(保全命令という)。

管理命令を出す場合、裁判所が管理人を選任し、裁判所が監督することになる。

会社と管理人との関係は、民法の委任の規定が準用される。委任については、以下を参照。
第10節 委任 第643条〜第656条
第826条 【官庁等の法務大臣に対する通知義務】

 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上第八百二十四条第一項の申立て又は同項第三号の警告をすべき事由があることを知ったときは、法務大臣にその旨を通知しなければならない。
会社の解散命令を申し立てることができる権利は、法務大臣にも認められている(第824条第1項)。会社の解散命令は、利害関係人の個人的利益のためではなく、公益のために出されるものであるためである。

裁判所、その他の官庁、検察官などは、職務を行っている中で、第824条第1項にあたる事実を知ったときは、法務大臣に通知しなければならない(義務である)。

逆に、株主や社員や債権者などの利害関係には、本条の義務はない。