会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第2章 訴訟

第3節 株式会社の役員の解任の訴え
第854条 【再審の訴え】

 @ 役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。

 1 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)

  イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主

  ロ 当該請求に係る役員である株主

 2 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)

  イ 当該株式会社である株主

  ロ 当該請求に係る役員である株主

 A 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

 B 第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。

 C 第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
原則的に、取締役や監査役などの会社役員を解任するかどうか決めるのは、株主である。具体的には、株主総会で解任決議がなされれば、役員は解任されることになる(第339条)。

しかし、株主総会の判断だけでは適正な結果が得られない場合も考えられる。例えば、取締役が不法行為をしたと考えられるが、株主総会ではその部分が見過ごされてしまい、解任決議が否決された場合などである。

本条は、このような場合において、裁判所に訴えることにより、中立な判断を求める機会を確保するための規定である。しかし、本条の規定はあくまで例外的なものであり、訴えを起こすことができる株主や期間などが制限されている。
第855条 【被告】

 前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。
株主は、一定の条件を満たせば、会社の役員を解任する訴えを起こすことができる(第854条)。

本条は、その解任の訴えの被告が誰になるのかを規定している。

解任の訴えについて一番強い利害関係を持つのは、解任の対象とされている役員である。そのため、この役員は被告となる。また、その他の役員や株主も利害関係を持つ可能性があるため、会社そのものも被告となる。

役員と会社の両方を被告として訴えなければならず、どちらか一方だけを被告としても却下されることとなる。
第856条 【訴えの管轄】

 株式会社の役員の解任の訴えは、当該株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
株式会社の役員の解任の訴えは、株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所で起こさなければならない。間違いにより、別の裁判所で訴えを起こした場合、本店所在地の地方裁判所へ強制的に移送されることとなる。