会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第2章 訴訟

第5節 持分会社の社員の除名の訴え等
第859条 【持分会社の社員の除名の訴え】

 持分会社の社員(以下この条及び第八百六十一条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。

 1 出資の義務を履行しないこと。

 2 第五百九十四条第一項(第五百九十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反したこと。

 3 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。

 4 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。

 5 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。
本条各号の規定に該当する場合には、社員(対象社員は除く)の過半数の決議により、訴えを起こして強制的に社員を除名することができる。原則的に、持分会社の社員は、会社の経営権・代表権を持っており、社員の個性や社員間での信頼関係が重視されるためである。

株式会社においては、株主であることを強制的にやめさせる制度はない。これは、株式会社は規模が大きく、株主の個性はあまり問題とはならないためである。
第860条 【持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え】

 持分会社の業務を執行する社員(以下この条及び次条第二号において「対象業務執行社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象業務執行社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象業務執行社員の業務を執行する権利又は代表権の消滅を請求することができる。

 1 前条各号に掲げる事由があるとき。

 2 持分会社の業務を執行し、又は持分会社を代表することに著しく不適任なとき。
原則的に、持分会社の社員には、業務執行権と代表権を持つ。

しかし、特定の社員にだけ業務執行権を与えることができ、この社員を業務執行社員という(第591条)。この場合、定款で代表権を持つ社員を決めない限り、この業務執行社員だけが代表権を持つこととなる(第599条)。

本条は、この業務執行社員から業務執行権・代表権を取り上げるための規定である。第859条各号の規定に該当する場合や、業務執行社員には不適任な場合には、社員(業務執行社員は除く)の過半数の決議により、業務執行社員から業務執行権・代表権を消滅させることができる。
第861条 【被告】

 次の各号に掲げる訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。

 1 第八百五十九条の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ルにおいて「持分会社の社員の除名の訴え」という。) 対象社員

 2 前条の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヲにおいて「持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え」という。) 対象業務執行社員
本条は、被告についての規定である。

・第859条の訴え:除名を求められている社員
・第860条の訴え:業務執行社員

原告はどちらの訴えでも、持分会社となる。
第862条 【訴えの管轄】

 持分会社の社員の除名の訴え及び持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴えは、当該持分会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
第859条と第860条の訴えは、持分会社の本店所在地を管轄する地方裁判所で起こさなければならない。