会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第2章 訴訟

第7節 社債発行会社の弁済等の取消しの訴え
第865条 【社債発行会社の弁済等の取消しの訴え】

 @ 社債を発行した会社が社債権者に対してした弁済、社債権者との間でした和解その他の社債権者に対してし、又は社債権者との間でした行為が著しく不公正であるときは、社債管理者は、訴えをもって当該行為の取消しを請求することができる。

 A 前項の訴えは、社債管理者が同項の行為の取消しの原因となる事実を知った時から六箇月を経過したときは、提起することができない。同項の行為の時から一年を経過したときも、同様とする。

 B 第一項に規定する場合において、社債権者集会の決議があるときは、代表社債権者又は決議執行者(第七百三十七条第二項に規定する決議執行者をいう。)も、訴えをもって第一項の行為の取消しを請求することができる。ただし、同項の行為の時から一年を経過したときは、この限りでない。

 C 民法第四百二十四条第一項ただし書及び第四百二十五条の規定は、第一項及び前項本文の場合について準用する。この場合において、同法第四百二十四条第一項ただし書中「その行為によって」とあるのは「会社法第八百六十五条第一項に規定する行為によって」と、「債権者を害すべき事実」とあるのは「その行為が著しく不公正であること」と、同法第四百二十五条中「債権者」とあるのは「社債権者」と読み替えるものとする。
社債発行会社が、社債権者に対してした弁済や和解などが、非常に不公正だった場合、社債管理者(第702条)はそれらの行為を取り消す訴えを起こすことができる(第1項)。

例えば、同じ額の社債権者であるAとBがいた場合、Aに対しては100万円を弁済し、Bに対しては和解により200万円を支払ったというようなとき、社債管理者はこれらの行為を取り消す訴えを起こすことができる。

社債管理者のこの訴えは、社債発行会社の不公正な行為を知ったときから6ヶ月以内に行わなければならない。また、不公正な行為が行われた時から1年以内でなければならない(第2項)。

また、社債権者集会の決議において、不公正な行為が行われた場合、代表社債権者や決議執行者も、行為の取消しの訴えを起こすことができる(第3項)。
第866条 【被告】

 前条第一項又は第三項の訴えについては、同条第一項の行為の相手方又は転得者を被告とする。
第865条の訴えの被告は、行為の相手方か、相手方から譲り受けた者になる。
第867条 【訴えの管轄】

 第八百六十五条第一項又は第三項の訴えは、社債を発行した会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
第865条の訴えは、社債発行会社の本店所在地を管轄する地方裁判所で起こさなければならない。