会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第3章 非訟

第3節 特別清算の手続に関する特則
第1款 通則

第879条 【特別清算事件の管轄】


 @ 第八百六十八条第一項の規定にかかわらず、法人が株式会社の総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次項において同じ。)の議決権の過半数を有する場合には、当該法人(以下この条において「親法人」という。)について特別清算事件、破産事件、再生事件又は更生事件(以下この条において「特別清算事件等」という。)が係属しているときにおける当該株式会社についての特別清算開始の申立ては、親法人の特別清算事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。

 A 前項に規定する株式会社又は親法人及び同項に規定する株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社についての特別清算開始の申立ては、親法人の特別清算事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。

 B 前二項の規定の適用については、第三百八条第一項の法務省令で定める株主は、その有する株式について、議決権を有するものとみなす。

 C 第八百六十八条第一項の規定にかかわらず、株式会社が最終事業年度について第四百四十四条の規定により当該株式会社及び他の株式会社に係る連結計算書類を作成し、かつ、当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には、当該株式会社について特別清算事件等が係属しているときにおける当該他の株式会社についての特別清算開始の申立ては、当該株式会社の特別清算事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
A法人が、B株式会社の議決権の過半数を持っている場合、A法人をB株式会社の親法人という。この親法人であるA法人について特別清算や再生事件などが裁判所で行われている場合に、B株式会社についても特別清算を申し立てるというときは、その申し立てはB株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所か、A法人についての特別清算や再生事件などを扱っている地方裁判所ですることができる。

ただし、同じ地方裁判所に申し立てた場合であっても、まとめて一つの事件として扱われるわけではない。
第880条 【特別清算開始後の通常清算事件の管轄及び移送】

 @ 第八百六十八条第一項の規定にかかわらず、清算株式会社について特別清算開始の命令があったときは、当該清算株式会社についての第二編第九章第一節(第五百八条を除く。)の規定による申立てに係る事件(次項において「通常清算事件」という。)は、当該清算株式会社の特別清算事件が係属する地方裁判所(以下この節において「特別清算裁判所」という。)が管轄する。

 A 通常清算事件が係属する地方裁判所以外の地方裁判所に同一の清算株式会社について特別清算事件が係属し、かつ、特別清算開始の命令があった場合において、当該通常清算事件を処理するために相当と認めるときは、裁判所(通常清算事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。)は、職権で、当該通常清算事件を特別清算裁判所に移送することができる。
裁判所が特別清算命令を出した場合(第510条)、その株式会社に対する通常の清算に関する申し立ては、その株式会社の特別清算を扱っている裁判所にしなければならない(第1項)。

ある株式会社について、通常の清算事件が裁判所で取り扱われているときに、同じ裁判所に同じ株式会社の特別清算も申し立てられたという場合は、裁判所の判断で、通常の清算事件のほうを特別清算事件を扱っている部署に回すことができる(第2項)。
第881条 【疎明】

 第二編第九章第二節(第五百四十七条第三項を除く。)の規定による許可の申立てについては、第八百六十九条の規定は、適用しない。
会社法の規定に基づく申し立ては、申し立てる理由を疎明(裁判官に一応確からしいと思わせること)しなければならない(第869条)。しかし、特別清算に関する申し立ての場合は、疎明する必要はない。
第882条 【理由の付記】

 @ 特別清算の手続に関する決定で即時抗告をすることができるものには、理由を付さなければならない。ただし、第五百二十六条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)及び第五百三十二条第一項(第五百三十四条において準用する場合を含む。)の規定による決定については、この限りでない。

 A 特別清算の手続に関する決定については、第八百七十一条の規定は、適用しない。
特別清算の手続きに関する決定で即時抗告ができるものは、清算人などの報酬に関するもの(第526条、第532条)を除き、裁判所は結論だけではなく判断理由も明らかにしなければならない。理由がわからなければ、即時抗告するか判断できないためである。
第883条 【裁判書の送達】

 この節の規定による裁判書の送達については、民事訴訟法第一編第五章第四節(第百四条を除く。)の規定を準用する。
裁判書とは、裁判の結論や理由が書かれている書面のことである。この裁判書を訴えや申し立ての当事者に送ることを、送達という。

送達の方法などについては、民事訴訟法第98条以下に規定されており、この節の規定に準用される。
第884条 【不服申立て】

 @ 特別清算の手続に関する裁判につき利害関係を有する者は、この節に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。

 A 前項の即時抗告は、この節に特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有する。

 B 非訟事件手続法第二十条の規定は、特別清算の手続に関する決定については、適用しない。
特別清算手続きに関する裁判の利害関係者は、第879条から第902条までの規定で認められている場合に限って、即時抗告という形で不服を申し立てることができる(第1項)。

通常の非訟事件において、裁判に対して不服があるときは抗告という形で不服を申し立てることができる(非訟事件手続法第20条)。しかし、特別清算手続きに関する場合は、不可である(第3項)。

即時抗告がなされた場合、原則的に、不服の対象となっている裁判は一時的に効力を止められる(第3項)。
第885条 【公告】

 @ この節の規定による公告は、官報に掲載してする。

 A 前項の公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
第879条から第902条までの規定で、公告をしなければならないとされているものについては、官報に載せるという方法で行う(第1項)。そして、公告の効力は、掲載があった日の翌日から生じる(第2項)。
第886条 【事件に関する文書の閲覧等】

 @ 利害関係人は、裁判所書記官に対し、第二編第九章第二節若しくはこの節又は非訟事件手続法第一編(特別清算開始の命令があった場合にあっては、同章第一節若しくは第二節若しくは第一節(同章第一節の規定による申立てに係る事件に係る部分に限る。)若しくはこの節又は非訟事件手続法第一編)の規定(これらの規定において準用するこの法律その他の法律の規定を含む。)に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下この条及び次条第一項において「文書等」という。)の閲覧を請求することができる。

 A 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

 B 前項の規定は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

 C 前三項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める命令、保全処分、処分又は裁判のいずれかがあるまでの間は、前三項の規定による請求をすることができない。ただし、当該者が特別清算開始の申立人である場合は、この限りでない。

 1 清算株式会社以外の利害関係人 第五百十二条の規定による中止の命令、第五百四十条第二項の規定による保全処分、第五百四十一条第二項の規定による処分又は特別清算開始の申立てについての裁判

 2 清算株式会社 特別清算開始の申立てに関する清算株式会社を呼び出す審問の期日の指定の裁判又は前号に定める命令、保全処分、処分若しくは裁判

 D 民事訴訟法第九十一条第五項の規定は、文書等について準用する。
特別清算の手続きが行われると、証拠となるような書類が提出されたり、裁判所により書類などが作成されたりする。これらは、裁判所書記官により管理されている。

特別清算手続の利害関係人は、裁判所書記官に対して、これらの書類の閲覧・謄写の請求をすることができる(第1項)。
第887条 【支障部分の閲覧等の制限】

 @ 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)を行うことにより、清算株式会社の清算の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある部分(以下この条において「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した清算株式会社又は調査委員の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び清算株式会社に限ることができる。

 1 第五百二十条の規定による報告又は第五百二十二条第一項に規定する調査の結果の報告に係る文書等

 2 第五百三十五条第一項又は第五百三十六条第一項の許可を得るために裁判所に提出された文書等

 A 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者及び清算株式会社を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。

 B 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、特別清算裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。

 C 第一項の申立てを却下する決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 D 第一項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
特別清算の申し立てがなされた清算株式会社の利害関係人は、第886条の書類の閲覧・謄写の請求をすることができる(第886条)。しかし、この書類の中には、会社の内部機密に関する情報などが含まれており、利害関係人に見せてしまうと清算に支障をきたすことがあるかもしれない。

そこで、本条第1項各号に該当するような書類については、利害関係人に見せると清算に大きな支障をきたすおそれがある場合には、裁判が終わるまで、見せては困る部分に限り、見せないような処置をとることができる。
第2款 特別清算の開始の手続に関する特則

第888条 【特別清算開始の申立て】


 @ 債権者又は株主が特別清算開始の申立てをするときは、特別清算開始の原因となる事由を疎明しなければならない。

 A 債権者が特別清算開始の申立てをするときは、その有する債権の存在をも疎明しなければならない。

 B 特別清算開始の申立てをするときは、申立人は、第五百十四条第一号に規定する特別清算の手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。

 C 前項の費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所に、特別清算開始の申し立てをすることができるのは以下の者である(第511条第1項)。

・会社の債権者(第510条が規定する特別清算開始の原因となる理由と、会社に対して債権を持っているということの二つを疎明しなければならない(本条第2項))
・清算人
・監査役
・株主(第510条が規定する特別清算開始の原因となる理由を疎明しなければならない(本条第1項))

特別清算開始の申し立てをする場合、申立人は特別清算手続の費用(第514条第1号)を、裁判所に納めなければならない(本条第3項)。
第889条 【他の手続の中止命令】

 @ 裁判所は、第五百十二条の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

 A 前項の中止の命令及び同項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 B 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 C 第二項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
特別清算開始の申し立てがあった場合、裁判所は、その清算株式会社の破産手続や、財産に対して既にされている強制執行手続などを、特別清算開始の申し立てに対して判断をするまでの間、中止するよう命令することができる(第512条)。

そして、本条においてこの中止命令を変更したり取り消したりすることができる(第1項)。この変更や取消しに対しては、即時抗告をすることができる(第2項)。ただし、即時抗告をしても、執行停止の効力は生じない(第3項)。
第890条 【特別清算開始の命令】

 @ 裁判所は、特別清算開始の命令をしたときは、直ちに、その旨を公告し、かつ、特別清算開始の命令の裁判書を清算株式会社に送達しなければならない。

 A 特別清算開始の命令は、清算株式会社に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。

 B 特別清算開始の命令があったときは、特別清算の手続の費用は、清算株式会社の負担とする。

 C 特別清算開始の命令に対しては、清算株式会社に限り、即時抗告をすることができる。

 D 特別清算開始の申立てを却下した裁判に対しては、申立人に限り、即時抗告をすることができる。

 E 特別清算開始の命令をした裁判所は、第四項の即時抗告があった場合において、当該命令を取り消す決定が確定したときは、直ちに、その旨を公告しなければならない。
裁判所は、特別清算開始の命令をしたときは、すぐにこれを官報で公告し、命令を書いた裁判書を清算株式会社に送達しなければならない(第1項)。

この裁判書が清算株式会社に届いたときから、特別清算開始の命令の効力が生じる(第2項)。

特別清算開始の命令があったときは、その手続きの費用は清算株式会社の負担となる(第3項)。しかし、特別清算開始の申し立てが却下されれば、費用は申立人の負担となる。

特別清算開始の命令に対しては、清算株式会社だけが即時抗告という形で不服を言うことができる(第4項)。しかし、特別清算開始の申し立てが却下されれば、申立人だけが即時抗告をすることができる(第5項)。
第891条 【担保権の実行の手続等の中止命令】

 @ 裁判所は、第五百十六条の規定による中止の命令を発する場合には、同条に規定する担保権の実行の手続等の申立人の陳述を聴かなければならない。

 A 裁判所は、前項の中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

 B 第一項の中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、第一項の申立人に限り、即時抗告をすることができる。

 C 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 D 第三項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
裁判所は、特別清算開始の命令をする場合、一定の要件を満たせば、担保権実行の手続き等の中止を命じることができる(第516条)。ただし、その担保権実行の手続き等の申立人の陳述を聴かなければならない(第1項)。

裁判所は、担保権実行の手続き等の中止の命令を変更したり取り消したりすることができる(第2項)。変更や取消しに対しては、担保権実行の手続き等の申立人に限り、即時抗告をすることができる(第3項)。ただし、即時抗告をしても、執行停止の効力は生じない(第4項)。
第3款 特別清算の実行の手続に関する特則

第892条 【調査命令】


 @ 裁判所は、調査命令(第五百二十二条第一項に規定する調査命令をいう。次項において同じ。)を変更し、又は取り消すことができる。

 A 調査命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 B 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 C 第二項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
裁判所は、清算株式会社に対して、清算事務と財産状況についての報告を命じるなど清算を監督するために必要な調査を命じることができる(第520条第1項)。また、裁判所はこの調査命令を変更したり取り消すことができる(本条第1項)。

調査命令、調査命令の変更・取消しの決定については即時抗告をすることができる(本条第2項)。ただし、即時抗告をしても、効力が一時的に停止されるということはない(本条第3項)。
第893条 【清算人の解任及び報酬等】

 @ 裁判所は、第五百二十四条第一項の規定により清算人を解任する場合には、当該清算人の陳述を聴かなければならない。

 A 第五百二十四条第一項の規定による解任の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 B 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 C 第五百二十六条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、清算人が清算事務を適切に行っていないような場合は、清算人を解任することができる(第524条第1項)。この場合、その清算人に弁解する機会を与えなければならない(本条第1項)。

清算人は、解任の裁判に不服がある場合は、即時抗告をすることができる(本条第2項)。ただし、即時抗告をしたとしても、解任の裁判の効力が一時停止されることはない(本条第3項)。通常、即時抗告をすれば裁判の効力は一時停止されるが、本条の場合はされないことに注意する必要がある。

また、裁判所は清算人の報酬を決めるが(第526条第1項、第2項)、清算人は不服があるときは即時抗告をすることができる(本条第4項)。
第894条 【監督委員の解任及び報酬等】

 @ 裁判所は、監督委員を解任する場合には、当該監督委員の陳述を聴かなければならない。

 A 第五百三十二条第一項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、監査委員が清算株式会社の業務と財産の管理を適切に行っていないような場合は、監査委員を解任することができる(第528条第2項)。この場合、その監査委員に弁解する機会を与えなければならない(本条第1項)。

また、裁判所は監査委員の報酬を決めることができる(第532条第1項)。監査委員は、これに不服がある場合は即時抗告をすることができる(本条第2項)。
第895条 【調査委員の解任及び報酬等】

 前条の規定は、調査委員について準用する。
第894条の規定は、調査委員にも準用される。
第896条 【事業の譲渡の許可の申立て】

 @ 清算人は、第五百三十六条第一項の許可の申立てをする場合には、知れている債権者の意見を聴き、その内容を裁判所に報告しなければならない。

 A 裁判所は、第五百三十六条第一項の許可をする場合には、労働組合等(清算株式会社の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、清算株式会社の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは清算株式会社の使用人その他の従業者の過半数を代表する者をいう。)の意見を聴かなければならない。
特別清算開始命令があったとき、清算株式会社がその事業の全部または一部を譲渡しようとする場合、清算人は裁判所に譲渡の許可をしてくれるよう申し立てをしなければならない(第536条第1項)。

この申し立てについて、清算人は清算株式会社の債権者の意見を聴いた上で、その内容を裁判所に報告しなければならない(本条第1項)。また、申し立てを受けた裁判所は、労働組合等の意見を聴いた上で、その内容も踏まえ、許可の判断をしなければならない(本条第2項)。
第897条 【担保権者が処分をすべき期間の指定】

 @ 第五百三十九条第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 A 前項の裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
清算株式会社の財産について担保権を持っている者が、法律に規定されている以外の方法で、担保権の目的となっている財産を処分しようとする場合、裁判所は清算株式会社から申し立てがあれば、その処分を一定の期間内にするように決めることができる(第539条第1項)。

この決定や、申し立ての却下に対して、即時抗告をすることができる(本条第1項)。これらの場合の裁判所の判断を示した裁判書は、当事者に送達されなければならない(本条第2項)。
第898条 【清算株式会社の財産に関する保全処分等】

 @ 裁判所は、次に掲げる裁判を変更し、又は取り消すことができる。

 1 第五百四十条第一項又は第二項の規定による保全処分

 2 第五百四十一条第一項又は第二項の規定による処分

 3 第五百四十二条第一項又は第二項の規定による保全処分

 4 第五百四十三条の規定による処分

 A 前項各号に掲げる裁判及び同項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 B 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 C 第二項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

 D 裁判所は、第一項第二号に掲げる裁判をしたときは、直ちに、その旨を公告しなければならない。当該裁判を変更し、又は取り消す決定があったときも、同様とする。
特別清算開始命令が出された場合、裁判所は、清算株式会社を監督する上で必要があれば、財産処分を禁止する仮処分などの保全処分(第540条)、株主名簿への記載・記録の禁止(第541条)などを命じることができる。そして、これらの命令の変更・取消しをすることもできる(本条第1項)。

これらの命令の変更・取消しに対しては、即時抗告をすることができる(本条第2項)。ただし、この場合、効力が一時停止することはない(本条第3項)。
第899条 【役員等責任査定決定】

 @ 清算株式会社は、第五百四十五条第一項の申立てをするときは、その原因となる事実を疎明しなければならない。

 A 役員等責任査定決定(第五百四十五条第一項に規定する役員等責任査定決定をいう。以下この条において同じ。)及び前項の申立てを却下する決定には、理由を付さなければならない。

 B 裁判所は、前項に規定する裁判をする場合には、対象役員等(第五百四十二条第一項に規定する対象役員等をいう。)の陳述を聴かなければならない。

 C 役員等責任査定決定があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。

 D 第八百五十八条第一項の訴えが、同項の期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、役員等責任査定決定は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する。
特別清算開始命令が出された場合、清算株式会社は、取締役や会計参与や清算人などの役員の責任に基づく損害賠償について、賠償請求ができるか、できる場合は金額などを裁判所に申し立てることができる(第545条)。この場合、原因となる事実を疎明(一応確からしいと裁判官に思わせること)しなければならない(本条第1項)。そして、裁判所は損害賠償について判断をする場合、当該役員に弁解する機会を与えなければならない(本条第3項)。また、裁判所は損害賠償請求について判断を下す場合、理由を明らかにしなければならない(本条第2項)。
第900条 【債権者集会の招集の許可の申立てについての裁判】

 第五百四十七条第三項の許可の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
特別清算開始の命令が出された場合、債権の申し出をした債権者等は、債権者集会の招集を請求することができる。この場合、債権者集会の招集手続が行われないときは、裁判所に対して、債権者集会を招集する許可を出してくれるように申し立てることができる(第547条第3項)。しかし、申し立てが裁判所に却下されたときは、即時抗告をすることができる(本条)。
第901条 【協定の認可又は不認可の決定】

 @ 利害関係人は、第五百六十八条の申立てに係る協定を認可すべきかどうかについて、意見を述べることができる。

 A 第五百六十九条第一項の協定の認可の決定をしたときは、裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。

 B 第五百六十八条の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。この場合において、前項の協定の認可の決定に対する即時抗告の期間は、同項の規定による公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

 C 前三項の規定は、第五百七十二条の規定により協定の内容を変更する場合について準用する。
特別清算命令が出された清算株式会社は、債権者集会に対して協定の申し出をすることができる(第563条)。そして、債権者集会で協定が可決されたときは、裁判所に対して協定を認可してくれるよう申し立てなければならない(第568条)。

清算株式会社の利害関係人は、裁判所が協定を認可すべきかどうかについて意見を述べることができる(第1項)。

清算株式会社が協定の認可を申し立てた場合、原則的に、裁判所はこれを認可することになる(第569条第1項)。そして、認可したときには、すぐに官報に載せ公告しなければならない(第2項)。
第4款 特別清算の終了の手続に関する特則

第902条 【特別清算終結の申立てについての裁判】


 @ 特別清算終結の決定をしたときは、裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。

 A 特別清算終結の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。この場合において、特別清算終結の決定に対する即時抗告の期間は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

 B 特別清算終結の決定は、確定しなければその効力を生じない。

 C 特別清算終結の決定をした裁判所は、第二項の即時抗告があった場合において、当該決定を取り消す決定が確定したときは、直ちに、その旨を公告しなければならない。
特別清算が終わったときや特別清算の必要がなくなった場合、裁判所は、清算人や監査役などの申し立てにより、特別清算終結の決定をする(第573条)。この場合、すぐに特別清算終結の決定をしたということを官報に載せて公告しなければならない(第1項)。

特別清算終結の決定について異議がある者は、公告された日から2週間以内に、即時抗告をすることができる(第2項)。2週間以内に即時抗告がなかった場合、または、即時抗告が却下された場合は、特別清算終結の決定が確定し、効力が生じる(第3項)。