会社法 条文 会社法 解説
第7編 雑則

第4章 登記

第4節 登記の嘱託
第937条 【裁判による登記の嘱託】

 @ 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、会社の本店(第一号トに規定する場合であって当該決議によって第九百三十条第二項各号に掲げる事項についての登記がされているときにあっては、本店及び当該登記に係る支店)の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。

 1 次に掲げる訴えに係る請求を認容する判決が確定したとき。

  イ 会社の設立の無効の訴え

  ロ 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え

  ハ 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この節において同じ。)の発行の無効の訴え

  ニ 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え

  ホ 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え

  ヘ 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え

  ト 株主総会等の決議した事項についての登記があった場合における次に掲げる訴え

   (1) 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え

   (2) 株主総会等の決議の取消しの訴え

  チ 持分会社の設立の取消しの訴え

  リ 会社の解散の訴え

  ヌ 株式会社の役員の解任の訴え

  ル 持分会社の社員の除名の訴え

  ヲ 持分会社の業務を執行する社員の業務執行権又は代表権の消滅の訴え

 2 次に掲げる裁判があったとき。

  イ 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定による一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者の選任の裁判

  ロ 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定による一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者の選任の裁判(次条第二項第一号に規定する裁判を除く。)

  ハ イ又はロに掲げる裁判を取り消す裁判(次条第二項第二号に規定する裁判を除く。)

  ニ 清算人又は代表清算人若しくは清算持分会社を代表する清算人の選任又は選定の裁判を取り消す裁判(次条第二項第三号に規定する裁判を除く。)

  ホ 清算人の解任の裁判(次条第二項第四号に規定する裁判を除く。)

 3 次に掲げる裁判が確定したとき。

  イ 前号ホに掲げる裁判を取り消す裁判

  ロ 第八百二十四条第一項の規定による会社の解散を命ずる裁判

 A 第八百二十七条第一項の規定による外国会社の日本における取引の継続の禁止又は営業所の閉鎖を命ずる裁判が確定したときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、次の各号に掲げる外国会社の区分に応じ、当該各号に定める地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。

 1 日本に営業所を設けていない外国会社 日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の住所地

 2 日本に営業所を設けている外国会社 当該営業所の所在地

 B 次の各号に掲げる訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、各会社の本店の所在地を管轄する登記所に当該各号に定める登記を嘱託しなければならない。

 1 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社についての解散の登記及び組織変更をする会社についての回復の登記

 2 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社についての変更の登記及び吸収合併により消滅する会社についての回復の登記

 3 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社についての解散の登記及び新設合併により消滅する会社についての回復の登記

 4 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割をする会社及び当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社についての変更の登記

 5 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社についての変更の登記及び新設分割により設立する会社についての解散の登記

 6 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換をする株式会社(第七百六十八条第一項第四号に掲げる事項についての定めがある場合に限る。)及び株式交換をする株式会社の発行済株式の全部を取得する会社についての変更の登記

 7 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社(第七百七十三条第一項第九号に掲げる事項についての定めがある場合に限る。)についての変更の登記及び株式移転により設立する株式会社についての解散の登記

 C 前項に規定する場合において、同項各号に掲げる訴えに係る請求の目的に係る組織変更、合併又は会社分割により第九百三十条第二項各号に掲げる事項についての登記がされているときは、各会社の支店の所在地を管轄する登記所にも前項各号に定める登記を嘱託しなければならない。
裁判所書記官とは、裁判所において裁判の記録や調書などを作成・保管する者のことである。

会社が登記をする場合、通常は会社が登記所に登記を申請して行う。

しかし、裁判所に訴えや営業所の閉鎖を命じる申し立てがなされ、裁判の結果、設立無効の登記(第1項第1号イ)や営業所閉鎖の登記(第2項)、会社の組織変更・吸収分割などの無効の登記(第3項)などをしなければならないような場合は、裁判所書記官が、その職権により、登記所に対して登記してくれるよう嘱託することになる。
第938条 【特別清算に関する裁判による登記の嘱託】

 @ 次の各号に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、清算株式会社の本店(第三号に掲げる場合であって特別清算の結了により特別清算終結の決定がされたときにあっては、本店及び支店)の所在地を管轄する登記所に当該各号に定める登記を嘱託しなければならない。

 1 特別清算開始の命令があったとき 特別清算開始の登記

 2 特別清算開始の命令を取り消す決定が確定したとき 特別清算開始の取消しの登記

 3 特別清算終結の決定が確定したとき 特別清算終結の登記

 A 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、清算株式会社の本店の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。

 1 特別清算開始後における第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定による一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者の選任の裁判があったとき。

 2 前号の裁判を取り消す裁判があったとき。

 3 特別清算開始後における清算人又は代表清算人の選任又は選定の裁判を取り消す裁判があったとき。

 4 特別清算開始後における清算人の解任の裁判があったとき。

 5 前号の裁判を取り消す裁判が確定したとき。

 B 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、当該保全処分の登記を嘱託しなければならない。

 1 清算株式会社の財産に属する権利で登記されたものに関し第五百四十条第一項又は第二項の規定による保全処分があったとき。

 2 登記のある権利に関し第五百四十二条第一項又は第二項の規定による保全処分があったとき。

 C 前項の規定は、同項に規定する保全処分の変更若しくは取消しがあった場合又は当該保全処分が効力を失った場合について準用する。

 D 前二項の規定は、登録のある権利について準用する。

 E 前各項の規定は、その性質上許されないものを除き、第八百二十二条第一項の規定による日本にある外国会社の財産についての清算について準用する。
会社が登記をする場合、通常は会社が登記所に登記を申請して行う。

しかし、裁判所の命令で特別清算手続が行われた場合には、特別清算開始の登記(第1項)、清算人解任の登記(第2項第2号)など、特別清算に関する登記については、裁判所書記官が、その職権により、登記所に対して登記してくれるよう嘱託することになる。