会社法 条文 会社法 解説
第8編 罰則
第960条 【取締役等の特別背任罪】

 @ 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 1 発起人

 2 設立時取締役又は設立時監査役

 3 取締役、会計参与、監査役又は執行役

 4 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者

 5 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者

 6 支配人

 7 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人

 8 検査役

 A 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。

 1 清算株式会社の清算人

 2 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者

 3 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者

 4 清算人代理

 5 監督委員

 6 調査委員
本条から第979条までは、犯罪と罰則についての規定である。

本条は、取締役等の特別背任罪についての規定である。刑法においての背任罪(刑法第247条)では、5年以下の懲役または50万円以下の罰金とされている。

しかし、本条の特別背任罪は、発起人・取締役・監査役・支配人・清算人などの背任について、厳しく取り締まるため、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方で処罰するとしている。

第1項は株式会社に対して、第2項は清算株式会社に対しての規定である。第1項各号、第2項各号に規定されている者が、自分もしくは会社以外の第三者の利益のために、または会社に損害を与えるために、任務に背く行為をし、会社の財産に損害を生じさせた場合は、特別背任罪となる。
第961条 【代表社債権者等の特別背任罪】

 代表社債権者又は決議執行者(第七百三十七条第二項に規定する決議執行者をいう。以下同じ。)が、自己若しくは第三者の利益を図り又は社債権者に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、社債権者に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
本条は、代表社債権者または決議執行者の特別背任罪についての規定である。5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方で処罰するとしている。成立要件などは、第960条の特別背任罪と同じである。
第962条 【未遂罪】

 前二条の罪の未遂は、罰する。
発起人や取締役等の特別背任罪(第960条)、代表社債権者か決議執行者の特別背任罪(第961条)は、未遂であっても処罰される。
第963条 【会社財産を危うくする罪】

 @ 第九百六十条第一項第一号又は第二号に掲げる者が、第三十四条第一項若しくは第六十三条第一項の規定による払込み若しくは給付について、又は第二十八条各号に掲げる事項について、裁判所又は創立総会若しくは種類創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 A 第九百六十条第一項第三号から第五号までに掲げる者が、第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項について、裁判所又は株主総会若しくは種類株主総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、前項と同様とする。

 B 検査役が、第二十八条各号、第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項について、裁判所に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、第一項と同様とする。

 C 第九十四条第一項の規定により選任された者が、第三十四条第一項若しくは第六十三条第一項の規定による払込み若しくは給付について、又は第二十八条各号に掲げる事項について、創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、第一項と同様とする。

 D 第九百六十条第一項第三号から第七号までに掲げる者が、次のいずれかに該当する場合にも、第一項と同様とする。

 1 何人の名義をもってするかを問わず、株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき。

 2 法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき。

 3 株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき。
会社設立時の株式の払い込み(第34条第1項)や新株の払い込み(第199条第1項第3号)などについて、発起人や取締役などが、裁判所や創立総会や種類株主総会に対して、虚偽の内容を報告したり事実を隠蔽した場合、会社財産の基礎が危うくなる可能性がある。

これらの行為については、会社財産を危うくする罪として、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、またはこれらの両方で処罰されることとなる。

会社財産を危うくする罪は特別背任罪と違い、発起人などが自分自身や第三者の利益を図る目的がなくてもよい。また、実際会社に損害が生じていなくてもよい。
第964条 【虚偽文書行使等の罪】

 @ 次に掲げる者が、株式、新株予約権、社債又は新株予約権付社債を引き受ける者の募集をするに当たり、会社の事業その他の事項に関する説明を記載した資料若しくは当該募集の広告その他の当該募集に関する文書であって重要な事項について虚偽の記載のあるものを行使し、又はこれらの書類の作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録であって重要な事項について虚偽の記録のあるものをその募集の事務の用に供したときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 1 第九百六十条第一項第一号から第七号までに掲げる者

 2 持分会社の業務を執行する社員

 3 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者

 4 株式、新株予約権、社債又は新株予約権付社債を引き受ける者の募集の委託を受けた者

 A 株式、新株予約権、社債又は新株予約権付社債の売出しを行う者が、その売出しに関する文書であって重要な事項について虚偽の記載のあるものを行使し、又は当該文書の作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録であって重要な事項について虚偽の記録のあるものをその売出しの事務の用に供したときも、前項と同様とする。
発起人・取締役・監査役などが、株式・新株予約権・社債・新株予約権付社債を引き受ける者を募集するときについて、会社の事業に関する説明をした文書や、募集に関する文書について、重要な事項に関して虚偽の内容が掲載されていることを知りながら、その文書を使った場合には、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、またはこれらの両方により処罰される(第1項)。

株式・新株予約権・社債・新株予約権付社債を売り出す者が、売り出しに関する文書について、重要な事項に関して虚偽の内容が掲載されていることを知りながら、その文書を使った場合には、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、またはこれらの両方により処罰される(第2項)。
第965条 【預合いの罪】

 第九百六十条第一項第一号から第七号までに掲げる者が、株式の発行に係る払込みを仮装するため預合いを行ったときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。預合いに応じた者も、同様とする。
預合いとは、発起人や取締役などが、株式の払い込みがされていないにもかかわらず、銀行などの払い込み取り扱い機関と結託し帳簿上は払い込みがあったかのように仮装することである。

預合いをした発起人や取締役、またそれに応じた払い込み取り扱い機関の代表も、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、または両方により処罰される。
第966条 【株式の超過発行の罪】

 次に掲げる者が、株式会社が発行することができる株式の総数を超えて株式を発行したときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

 1 発起人

 2 設立時取締役又は設立時執行役

 3 取締役、執行役又は清算株式会社の清算人

 4 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、執行役又は清算株式会社の清算人の職務を代行する者

 5 第三百四十六条第二項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)又は第四百三条第三項において準用する第四百一条第三項の規定により選任された一時取締役、執行役又は清算株式会社の清算人の職務を行うべき者
株式会社が発行できる株式総数は、定款において決められている(第113条、第114条)。

しかし、発起人・取締役・清算人など本条各号に規定されている者が、発行可能総数を超えて株式を発行したときは、5年以下の懲役、または500万円以下の罰金により処罰される。
第967条 【取締役等の贈収賄罪】

 @ 次に掲げる者が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

 1 第九百六十条第一項各号又は第二項各号に掲げる者

 2 第九百六十一条に規定する者

 3 会計監査人又は第三百四十六条第四項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者

 A 前項の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
取締役・監査役・清算人などが、以下のことを行ったときは、5年以下の懲役か500万円以下の罰金により処罰される(第1項)。

・その職務に関して不正な請託を受け(職務に関して特定の行為をしてくれるよう頼むこと)財産上の利益を受け取った場合
・財産上の利益を要求した場合(相手方が要求に応じる必要はない)
・財産上の利益を受け取るという約束をした場合

取締役・監査役・清算人などに対して、以下のことを行った者は、3年以下の懲役か300万円以下の罰金により処罰される(第2項)。

・取締役・監査役・清算人などに利益供与した場合
・取締役・監査役・清算人などに利益を送るという申し込みまたは約束をした場合
第968条 【株主等の権利の行使に関する贈収賄罪】

 @ 次に掲げる事項に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をした者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

 1 株主総会若しくは種類株主総会、創立総会若しくは種類創立総会、社債権者集会又は債権者集会における発言又は議決権の行使

 2 第二百十条若しくは第二百四十七条、第二百九十七条第一項若しくは第四項、第三百三条第一項若しくは第二項、第三百四条、第三百五条第一項若しくは第三百六条第一項若しくは第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)、第三百五十八条第一項、第三百六十条第一項若しくは第二項(これらの規定を第四百八十二条第四項において準用する場合を含む。)、第四百二十二条第一項若しくは第二項、第四百二十六条第五項、第四百三十三条第一項若しくは第四百七十九条第二項に規定する株主の権利の行使、第五百十一条第一項若しくは第五百二十二条第一項に規定する株主若しくは債権者の権利の行使又は第五百四十七条第一項若しくは第三項に規定する債権者の権利の行使

 3 社債の総額(償還済みの額を除く。)の十分の一以上に当たる社債を有する社債権者の権利の行使

 4 第八百二十八条第一項、第八百二十九条から第八百三十一条まで、第八百三十三条第一項、第八百四十七条第三項若しくは第五項、第八百五十三条、第八百五十四条又は第八百五十八条に規定する訴えの提起(株式会社の株主、債権者又は新株予約権若しくは新株予約権付社債を有する者がするものに限る。)

 5 第八百四十九条第一項の規定による株主の訴訟参加

 A 前項の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者も、同項と同様とする。
株主総会や社債権者集会での議決権の行使、株主総会の招集などについて不正の請託を受け(職務に関して特定の行為をしてくれるよう頼むこと)、財産上の利益を受け取った者は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金により処罰される。財産上の利益を要求したり、受け取るという約束をしただけでも、同様である(第1項)。

取締役などに対する贈賄罪は収賄罪より軽い刑で処罰されるが、本条の株主などに対する贈賄罪は、収賄罪と同様、5年以下の懲役または500万円以下の罰金で処罰される(第2項)。これは、総会屋などを厳しく取り締まるためである。
第969条 【没収及び追徴】

 第九百六十七条第一項又は前条第一項の場合において、犯人の収受した利益は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
取締役などの収賄罪、株主などの収賄罪で、犯人が受け取った利益は、国庫に没収される。また、利益を現金ではなく、例えば、車などで受け取った場合で、その車を売却したというようなときは、車の値段相当の現金を没収することになる。

本条は犯人の手元に利益を残さないようにするためであり、第967条と第968条が規定する罰金とは別に没収されることになる。
第970条 【株主の権利の行使に関する利益供与の罪】

 @ 第九百六十条第一項第三号から第六号までに掲げる者又はその他の株式会社の使用人が、株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与したときは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

 A 情を知って、前項の利益の供与を受け、又は第三者にこれを供与させた者も、同項と同様とする。

 B 株主の権利の行使に関し、株式会社又はその子会社の計算において第一項の利益を自己又は第三者に供与することを同項に規定する者に要求した者も、同項と同様とする。

 C 前二項の罪を犯した者が、その実行について第一項に規定する者に対し威迫の行為をしたときは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。

 D 前三項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

 E 第一項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
取締役・監査役・支配人等の株式会社の使用人が、株主の権利について、その株式会社自身またはその株式会社の子会社の資金で、第三者に財産上の利益を供与した場合、利益供与の罪として、3年以下の懲役または300万円以下の罰金により処罰される(第1項)。

違法な利益供与であることを知りながら利益供与を受けた者、または、第三者に利益供与をさせた者は、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはこれらの両方により処罰される(第2項、第5項)。

脅迫などをしてこれらのことをしたような場合、特に悪質であるため、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、またはこれらの両方により処罰される(第4項、第5項)。

本条に規定されている罪の典型的なものは、総会屋が絡む事件である。取締役が、株主総会が円滑に進むように、総会屋に対して、会社の金を支払うような場合である。この場合、取締役と総会屋がそれぞれ、本条の規定により処罰される。

ただし、利益を与えた取締役などが、自首した場合などは、刑を軽くするか免除することができる(第6項)。
第971条 【国外犯】

 @ 第九百六十条から第九百六十三条まで、第九百六十五条、第九百六十六条、第九百六十七条第一項、第九百六十八条第一項及び前条第一項の罪は、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

 A 第九百六十七条第二項、第九百六十八条第二項及び前条第二項から第四項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。
本条に規定されているものについては、実行された場所が外国であっても処罰される。
第972条 【法人における罰則の適用】

 第九百六十条、第九百六十一条、第九百六十三条から第九百六十六条まで、第九百六十七条第一項又は第九百七十条第一項に規定する者が法人であるときは、これらの規定及び第九百六十二条の規定は、その行為をした取締役、執行役その他業務を執行する役員又は支配人に対してそれぞれ適用する。
本条に規定されている者が法人であった場合、法人に対してではなく、その行為をした取締役・執行役・その他業務を執行する役員・支配人に対して罰則が適用される。
第973条 【業務停止命令違反の罪】

 第九百五十四条の規定による電子公告調査(第九百四十二条第一項に規定する電子公告調査をいう。以下同じ。)の業務の全部又は一部の停止の命令に違反した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
電子公告調査機関が資格を欠く状態になった場合、法務大臣は調査業務の全部または一部を停止するよう命じることができる(第954条)。

この命令に違反して業務を行った者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または両方で処罰される。
第974条 【虚偽届出等の罪】

 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 1 第九百五十条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 2 第九百五十五条第一項の規定に違反して、調査記録簿等(同項に規定する調査記録簿等をいう。以下この号において同じ。)に同項に規定する電子公告調査に関し法務省令で定めるものを記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は同項若しくは第九百五十六条第二項の規定に違反して調査記録簿等を保存しなかった者

 3 第九百五十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
本条は、電子公告調査機関についての規定である。

調査業務を中止または廃止する場合、法務大臣に届け出なければならない(第950条)。この届出をしなかったり、虚偽の届出をした者は、30万円以下の罰金が課される(第1号)。

また、調査記録簿等を作成しなかったとき、作成しても保存しなかったとき、虚偽の内容を記載したとき、立ち入り検査を拒否・妨害したときは、30万円以下の罰金が課される(第2号、第3号)。
第975条 【両罰規定】

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
法人の代表者・代理人や使用人その他の従業者が、第973条や第974条の違反行為をしたときは、その行為をした者以外に、法人も罰金で処罰される(法人を懲役させることは不可能であり、法人に懲役が科されることはない))。
第976条 【過料に処すべき行為】

 発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。

 1 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。

 2 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。

 3 この法律の規定による開示をすることを怠ったとき。

 4 この法律の規定に違反して、正当な理由がないのに、書類若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧若しくは謄写又は書類の謄本若しくは抄本の交付、電磁的記録に記録された事項を電磁的方法により提供すること若しくはその事項を記載した書面の交付を拒んだとき。

 5 この法律の規定による調査を妨げたとき。

 6 官庁、株主総会若しくは種類株主総会、創立総会若しくは種類創立総会、社債権者集会又は債権者集会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたとき。

 7 定款、株主名簿、株券喪失登録簿、新株予約権原簿、社債原簿、議事録、財産目録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書、事業報告、事務報告、第四百三十五条第二項若しくは第四百九十四条第一項の附属明細書、会計参与報告、監査報告、会計監査報告、決算報告又は第百二十二条第一項、第百四十九条第一項、第二百五十条第一項、第二百七十条第一項、第六百八十二条第一項、第六百九十五条第一項、第七百八十二条第一項、第七百九十一条第一項、第七百九十四条第一項、第八百一条第一項若しくは第二項、第八百三条第一項、第八百十一条第一項若しくは第八百十五条第一項若しくは第二項の書面若しくは電磁的記録に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。

 8 第三十一条第一項の規定、第七十四条第六項、第七十五条第三項、第七十六条第四項、第八十一条第二項若しくは第八十二条第二項(これらの規定を第八十六条において準用する場合を含む。)、第百二十五条第一項、第二百三十一条第一項若しくは第二百五十二条第一項、第三百十条第六項、第三百十一条第三項、第三百十二条第四項、第三百十八条第二項若しくは第三項若しくは第三百十九条第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)、第三百七十一条第一項(第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)、第三百七十八条第一項、第三百九十四条第一項、第四百十三条第一項、第四百四十二条第一項若しくは第二項、第四百九十六条第一項、第六百八十四条第一項、第七百三十一条第二項、第七百八十二条第一項、第七百九十一条第二項、第七百九十四条第一項、第八百一条第三項、第八百三条第一項、第八百十一条第二項又は第八百十五条第三項の規定に違反して、帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき。

 9 正当な理由がないのに、株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会において、株主又は設立時株主の求めた事項について説明をしなかったとき。

 10 第百三十五条第一項の規定に違反して株式を取得したとき、又は同条第三項の規定に違反して株式の処分をすることを怠ったとき。

 11 第百七十八条第一項又は第二項の規定に違反して、株式の消却をしたとき。

 12 第百九十七条第一項又は第二項の規定に違反して、株式の競売又は売却をしたとき。

 13 株式、新株予約権又は社債の発行の日前に株券、新株予約権証券又は社債券を発行したとき。

 14 第二百十五条第一項、第二百八十八条第一項又は第六百九十六条の規定に違反して、遅滞なく、株券、新株予約権証券又は社債券を発行しなかったとき。

 15 株券、新株予約権証券又は社債券に記載すべき事項を記載せず、又は虚偽の記載をしたとき。

 16 第二百二十五条第四項、第二百二十六条第二項、第二百二十七条又は第二百二十九条第二項の規定に違反して、株券喪失登録を抹消しなかったとき。

 17 第二百三十条第一項の規定に違反して、株主名簿に記載し、又は記録したとき。

 18 第二百九十六条第一項の規定又は第三百七条第一項第一号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)若しくは第三百五十九条第一項第一号の規定による裁判所の命令に違反して、株主総会を招集しなかったとき。

 19 第三百三条第一項又は第二項(これらの規定を第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定による請求があった場合において、その請求に係る事項を株主総会又は種類株主総会の目的としなかったとき。

 20 第三百三十五条第三項の規定に違反して、社外監査役を監査役の半数以上に選任しなかったとき。

 21 第三百四十三条第二項(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第三百四十四条第二項の規定による請求があった場合において、その請求に係る事項を株主総会又は種類株主総会の目的とせず、又はその請求に係る議案を株主総会又は種類株主総会に提出しなかったとき。

 22 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人がこの法律又は定款で定めたその員数を欠くこととなった場合において、その選任(一時会計監査人の職務を行うべき者の選任を含む。)の手続をすることを怠ったとき。

 23 第三百六十五条第二項(第四百十九条第二項及び第四百八十九条第八項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、取締役会又は清算人会に報告せず、又は虚偽の報告をしたとき。

 24 第三百九十条第三項の規定に違反して、常勤の監査役を選定しなかったとき。

 25 第四百四十五条第三項若しくは第四項の規定に違反して資本準備金若しくは準備金を計上せず、又は第四百四十八条の規定に違反して準備金の額の減少をしたとき。

 26 第四百四十九条第二項若しくは第五項、第六百二十七条第二項若しくは第五項、第六百三十五条第二項若しくは第五項、第六百七十条第二項若しくは第五項、第七百七十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百八十一条第二項において準用する場合を含む。)、第七百八十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第七百九十三条第二項において準用する場合を含む。)、第七百九十九条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百二条第二項において準用する場合を含む。)、第八百十条第二項若しくは第五項(これらの規定を第八百十三条第二項において準用する場合を含む。)又は第八百二十条第一項若しくは第二項の規定に違反して、資本金若しくは準備金の額の減少、持分の払戻し、持分会社の財産の処分、組織変更、吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転又は外国会社の日本における代表者の全員の退任をしたとき。

 27 第四百八十四条第一項若しくは第六百五十六条第一項の規定に違反して破産手続開始の申立てを怠ったとき、又は第五百十一条第二項の規定に違反して特別清算開始の申立てをすることを怠ったとき。

 28 清算の結了を遅延させる目的で、第四百九十九条第一項、第六百六十条第一項又は第六百七十条第二項の期間を不当に定めたとき。

 29 第五百条第一項、第五百三十七条第一項又は第六百六十一条第一項の規定に違反して、債務の弁済をしたとき。

 30 第五百二条又は第六百六十四条の規定に違反して、清算株式会社又は清算持分会社の財産を分配したとき。

 31 第五百三十五条第一項又は第五百三十六条第一項の規定に違反したとき。

 32 第五百四十条第一項若しくは第二項又は第五百四十二条第一項若しくは第二項の規定による保全処分に違反したとき。

 33 第七百二条の規定に違反して社債を発行し、又は第七百十四条第一項の規定に違反して事務を承継する社債管理者を定めなかったとき。

 34 第八百二十七条第一項の規定による裁判所の命令に違反したとき。

 35 第九百四十一条の規定に違反して、電子公告調査を求めなかったとき。
本条各号に規定されていることをした場合は、100万円以下の過料が課される。

過料とは、刑罰ではなく行政罰である(過料は罰金ではない。罰金は刑罰である。)。ただし、本条各号に規定されている行為が同時に、例えば取締役の特別背任罪(第960条)などの罪として処罰されるという場合は、刑罰だけが科せられ、本条が規定する過料は課せられない。
第977条 【過料に処すべき行為 その2】

 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。

 1 第九百四十六条第三項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 2 第九百五十一条第一項の規定に違反して、財務諸表等(同項に規定する財務諸表等をいう。以下同じ。)を備え置かず、又は財務諸表等に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をした者

 3 正当な理由がないのに、第九百五十一条第二項各号又は第九百五十五条第二項各号に掲げる請求を拒んだ者
本条をまとめると以下になる。

第977条 内容
第1号 電子公告調査機関が、調査委託者の商号などを報告しなかったり、ウソの報告をしたような場合
第2号 財務諸表や事業報告書を備え置かなかったり、ウソの記載をしたような場合
第3号 正当な理由なく、財務諸表や調査記録簿などの閲覧・謄写請求を拒否したような場合
第978条 【過料に処すべき行為 その3】

 次のいずれかに該当する者は、百万円以下の過料に処する。

 1 第六条第三項の規定に違反して、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者

 2 第七条の規定に違反して、会社であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者

 3 第八条第一項の規定に違反して、他の会社(外国会社を含む。)であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者
会社は、その名称を商号とし、商号の中に会社の種類を入れなければならない(第6条)。

本条をまとめると以下になる。

第978条 内容
第1号 他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者 合同会社なのに、○○株式会社などとした場合
第2号 会社であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者 会社ではないのに、○○株式会社などとした場合
第3号 他の会社(外国会社を含む。)であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者 不正な目的で、有名な大企業の名を騙った場合
※上記に該当する者は、100万円以下の過料が課される。


本条については、以下も参照。
第6条〜第9条
第979条 【過料に処すべき行為 その4】

 @ 会社の成立前に当該会社の名義を使用して事業をした者は、会社の設立の登録免許税の額に相当する過料に処する。

 A 第八百十八条第一項又は第八百二十一条第一項の規定に違反して取引をした者も、前項と同様とする。
会社は、本店所在地で設立登記をすることにより成立が認められる(第49条、第579条)。しかし、この成立が認められる前に、その会社の名義を使用して事業をした者は、会社の設立の登録免許税の額と同じ額の過料が課せられる(第1項)。

第818条第1項または第821条第1項(外国会社についての規定)の規定に違反して取引をした者も、外国会社の登録免許税の額と同じ額の過料が課せられる(第2項)。