憲法 条文 憲法 解説
第1章 天皇(Chapter 1:THE EMPEROR)
第1条

 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
本条は、天皇を統一された日本国の象徴として、また、日本国民が統一されてあることを象徴すべきものとして規定している。また、天皇の地位は、主権を持つ国民の総意だけに基づかなければならない。

天皇は、国民統合の象徴でなければならないため、公平性と中立性が必要とされている。そのため、天皇や皇太子には選挙権が認められていなかったり(特定の政党と親密な関係にならないようにするために)、皇太子等皇族男子の結婚についても本人の意思だけでは決定できないようになっている。

天皇は日本の元首であるかどうかについては、様々な学説上の争いがあり一定していないが、天皇が世襲であること、国事行為(第7条)という国会に拘束されない一定の権限が認められていることなどを考えると、元首と考えるのが妥当である。

象徴をめぐる問題について
天皇の扱いについて 天皇や皇族の扱いについては、皇室典範において規定されている。

・第22条では、天皇・皇太子・皇太孫は18歳で成年としている。
・第23条では、天皇・皇后・太皇太后・皇太后の敬称は陛下、その他の皇族の敬称は殿下としている。
・第25条では、天皇が崩じたときは、大喪の礼を行うとしている。
・第27条では、天皇・皇后・太皇太后・皇太后を葬るところを陵、その他の皇族を葬るところを墓としている。
象徴の保護について 天皇に特別の敬称を認めることと関連しているが、天皇・皇后などに対しての名誉毀損罪について、刑法は、内閣総理大臣が告訴すると規定している(刑法第232条第2項)。

また、1960年中央公論所載の深沢七郎の「風流夢譚」をきっかけとして、「象徴侮辱罪」制定の請願署名運動が行われたことがあった。しかし、日本は国民主権国家であり、天皇に国民以上の権威を認めるようなことは、法の下の平等の原則に反するため、不適当である。
君が代の国歌化について 日本の憲法には国歌や国旗を定めた規定がない(外国の憲法にはある)。その為、現在まで国歌と国旗については様々な問題が生じてきた。1999年に、日章旗を国旗、君が代を国歌とする法律が成立したが、法律で国歌と定め学校行事の際に、歌うことを義務付け違反者を処罰することは、憲法第19条の思想・良心の自由、第21条の言論表現の自由を侵すものとして違憲である可能性が高い(バーネット事件の判決なども参照)。
元号法について 元号は、古代中国の専制君主が、領土という空間だけではなく時間と歴史をも支配するという思想により、法的には、君主主権の属性である君主の元号制定権・改元権の行使として定められた。

明治・大正・昭和の元号は天皇の詔書によって定められたことからして、それを受け継ぐことは、国民主権の新憲法に違反し、元号法は無効となる。
※象徴をめぐる問題については、シビアであり、様々な説があり、矛盾が多い。
Article 1

 The Emperor shall be the symbol of the state and of the unity of the people, deriving his position from the will of the people with whom resides sovereign power.
第2条

 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
本条は、皇嗣(こうしと読む。天皇の跡継ぎのことである。)についての規定である。

世襲(せしゅう)とは、その家の地位・財産・職業などを嫡系の子孫が代々うけつぐことであり、君主制の特徴である(共和国の大統領に世襲はない)。

戦前の刑法には、大逆罪(皇族に危害を加え、または加えようとしたものは死刑とする罪)というものがあったが、これは神聖不可侵とされた天皇などに対する反逆であるばかりでなく、皇位継承資格者を絶やさないための法律でもあった。

また、皇位継承資格者を維持するという理由のために、皇族費が国費から支出されている(共和国の大統領に、子弟や親族の生活維持費等は支給されない)。皇室の費用に関しては、第88条も参照。

皇位継承の資格や順序については、皇室典範に規定されている(以下を参照)。
皇室典範
第1条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
第2条 @ 皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。

1 皇長子
2 皇長孫
3 その他の皇長子の子孫
4 皇次子及びその子孫
5 その他の皇子孫
6 皇兄弟及びその子孫
7 皇伯叔父及びその子孫

A 前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える。

B 前2項の場合においては、長系を先にし、同等内では、長を先にする。
第3条 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる。
第4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。
※これらは、大日本帝国憲法第2条に基づく旧皇室典範と同様である。
※これらは、男女差別を禁止した現在の憲法からすると、違憲であるという意見も多い。
※皇室典範は、第37条まである。


皇室典範第2条の規定による、順序は以下である。
順序
天皇の崩御(死去)
皇長子(こうちょうしと読む。つまり、皇太子のことである。)
皇長孫
皇長子の子孫
皇次子と子孫
その他の皇子孫
皇兄弟と子孫
皇伯叔父と子孫
最近親の皇孫
※天皇の崩御により、順序に従い、皇嗣が直ちに即位する。
※現在の天皇のことは、今上天皇(きんじょうてんのう)とも言う。
Article 2

 The Imperial Throne shall be dynastic and succeeded to in accordance with the Imperial House Law passed by the Diet.
第3条

 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
本条は、いわゆる大臣助言制について規定している。つまり、天皇の国事に関する一切の行為は、天皇単独で行うことはできず、内閣の助言と承認が必要であるということである。また、その結果についての国会と国民に対する全責任は、天皇ではなく内閣が負わなければならない。

大日本帝国憲法では、「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と規定されていた(大日本帝国憲法第3条)。神聖不可侵であるがゆえに、天皇は何らの責任も追求されなかった。イギリスにおいても同じように、「King can do no wrong(王は悪を為しえず)」として、王は何らの責任も追及されなかった。

これらは非民主的であると言える。イギリスにおいては、「King can not do alone(王は単独ではなしえない)」という法理が作られ、大臣の助言と承認によって行わねばならないとされた。そして、大臣と内閣は、行為の結果について連帯して国会に責任を負い、最終的に国民に責任を負う。この制度により、王の絶大な権限が民主的に統制され運用されることになるのである。

大日本帝国憲法では、「国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」という規定があった(大日本帝国憲法第55条)。国務大臣ではなく、国務各大臣となっているため、大臣それぞれが、国会に対してではなく、天皇に対して責任を負うというものである(連帯して責任を負うのではなく、個々の大臣が個々の問題について責任を負うということである)。そのため、軍の統制等について、天皇の権限を統制することができなかった(その結果は、誰もが知るところである。)。

また、本条については、第7条も参照。
Article 3

 The advice and approval of the Cabinet shall be required for all acts of the Emperor in matters of state, and the Cabinet shall be responsible therefor.
第4条

 @ 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

 A 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
本条は、天皇の行為とその限界について定めた原則規定である(本来であれば、この第4条が第3条の前に規定されているのが論理的であると言われている。)。

第1項の国事に関する行為(国事行為)とは、第6条、第7条、第15条、第41条、第67条、第68条、第73条、第79条等に関連する条文がある。天皇の国事行為については、結局のところ誰が認証・決定・授与するのかなどを注意して読まなければならない。

一般的に、天皇の国事行為は、「国政に関する権能を有しない」という規定があるため、国政に実質的な影響を与えることのない、事務的であり形式的であり儀礼的であり栄誉的である行為と言われている。まとめると以下である。

・天皇は自由意思で決定することはできない
・他の国家機関が決定した行為を、自動機械的に認証する行為である
・国政に実質的な影響を与えることはない

一般的にはこのように考えられているが、国事行為には実際的には高い段階の行政権や統治行為や残余権(残余権とは、国会・内閣・裁判所の三権に配分することができないような権限のことである。例えば、恩赦権などのことである。)などが内に含まれているし、天皇の国事行為に関しては、内閣の助言と承認が必要であり、内閣が責任を負う(第3条)と規定されている(なぜこのような厳重な規定が必要なのか。)。

国家元首(君主や大統領)

残余権、調整権、統治行為

高い段階の行政権
(govermental power)
裁判所

司法権(judicial power)

第76条
内閣

低い段階の行政権
(executive power)

第65条
国会

立法権(legisiative power)

第41条
※低い段階の行政権は、立法権や司法権と同じ次元にあり、裁判所による違憲審査の対象となる。
※高い段階の行政権は、統治行為や政治行為と言われるものであり、裁判所の違憲審査の対象とはならない。

つまり、天皇の国事行為とは、天皇が独断的に行うことはできず、内閣の助言と承認が必要であるが、重大な国政権限であるということである。しかし、学説などが様々あり、どの程度重大な権限があるのかは不明である。

第2項の、国事行為の委任については、第5条に基づく法律たる皇室典範第16条や、「国事行為の臨時代行に関する法律(昭和39年)」が制定されている。国事行為の委任についても、国会の統制下に置かれている。
Article 4

1) The Emperor shall perform only such acts in matters of state as are provided for in this Constitution and he shall not have powers related to government.

2) The Emperor may delegate the performance of his acts in matters of state as may be provided by law.
第5条

 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
本条は、天皇が国事行為を行うことができない場合の摂政(せっしょう)についての規定である。摂政は、国会が制定した皇室典範に基づいて置かなければならず、憲法第4条第1項の規定が準用される。

摂政についての規定は、皇室典範第3章に規定されている。
皇室典範
第16条 @ 天皇が成年に達しないときは、摂政を置く。

A 天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。
第17条 @ 摂政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。

1 皇太子又は皇太孫
2 親王及び王
3 皇后
4 皇太后
5 太皇太后
6 内親王及び女王

A 前項第2号の場合においては、皇位継承の順序に従い、同項第6号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。
第18条 摂政又は摂政となる順位にあたる者に、精神若しくは身体の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従つて、摂政又は摂政となる順序を変えることができる。
第19条 摂政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前条の故障があるために、他の皇族が、摂政となつたときは、先順位にあたつていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなつたときでも、皇太子又は皇太孫に対する場合を除いては、摂政の任を譲ることがない。
第20条 第16条第2項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、摂政を廃する。
第21条 摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。


皇室典範第22条において、天皇は18歳で成年と規定されているため、天皇が18歳未満の場合は摂政が置かれるということである。天皇に、精神若しくは身体の重患又は重大な事故があった場合も、摂政が置かれる。
Article 5

 When, in accordance with the Imperial House Law, a Regency is established, the Regent shall perform his acts in matters of state in the Emperor's name. In this case, paragraph one of the preceding article will be applicable.
第6条

 @ 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

 A 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
本条は、内閣総理大臣と最高裁判所長官の任命についての規定である。

条文 名前 指名 任命
第6条第1項 内閣総理大臣 国会 天皇
第6条第2項 最高裁判所長官 内閣 天皇
※内閣総理大臣の実質的な決定は、憲法第67条により国会だけが行う。そのため、天皇が介入する余地はない。国会による指名がなされると、衆議院が指名について優越する(憲法第67条)ことから、衆議院議長がその旨を内閣を経由し天皇に奏上する(国会法第65条第2項)。そして、天皇は任命について内閣の助言と承認を必要とする(助言と承認については以下の表のように行われる)。

※最高裁判所の裁判官は、長官が1人(天皇が任命)、その他が14人(内閣が任命)の合計15人である(詳しくは憲法第79条を参照)。長官がその地位を失う場合は、憲法第78条と第79条に規定されている。

※内閣総理大臣と最高裁判所長官は、どちらも天皇による免官規定はない。

内閣総理大臣の任命について
助言 日本国憲法第6条第1項に依り○○○を
内閣総理大臣に任命するについて
右謹んで裁可を仰ぎます
平成○○年○月○日
内閣総理大臣 氏名
承認 氏名
内閣総理大臣に任命する
署名 天皇御璽
平成○○年○月○日
内閣総理大臣 氏名(署名)
Article 6

1) The Emperor shall appoint the Prime Minister as designated by the Diet.

2) The Emperor shall appoint the Chief Judge of the Supreme Court as designated by the Cabinet.
第7条

 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

 1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

 2 国会を召集すること。

 3 衆議院を解散すること。

 4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

 5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

 6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。

 7 栄典を授与すること。

 8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。

 9 外国の大使及び公使を接受すること。

 10 儀式を行ふこと。
本条は、天皇の国事行為についての10項目規定している。


条文中にある、「国民のために」という部分は、国民に代わってと、国民の利益のために、という二種類の解釈があるが、後者の解釈が一般的である(憲法第99条に天皇の憲法尊重擁護義務があるからである)。


本条の10項目は、規定の仕方に重要な違いがある。
相違点 本条
「認証すること」という文がある 第5号
第6号
第8号
「認証すること」という文がない 第1号
第2号
第3号
第4号
第7号
第9号
第10号
※認証という用語は、大日本帝国憲法にはなく、現在の憲法ではじめて使われたものである。認証は、確認の認と、証明の証をつなげて簡略化したものと考えられている。意味は、一定の行為が正当な手続きで行われたことを確認し証明する国家機関の行為とされている。

※認証を必要とする行為は、内閣等の他の国家機関が決定した行為である。

※認証を必要としない行為は、他の国家機関の決定を憲法が明示しないことから、天皇の行為と解されている行為である。

※どちらの行為についても、天皇の国事行為は内閣の助言と承認が必要であるため、実質的な相違はほとんどないといえる。


各号については、以下の表を参照。
本条 説明
第1号 公布とは、憲法に定める手続きに従って成立した法令などの国法形式を広く国民に知らせる行為のことである。官報に、公布年月日と施行年月日を記載し、施行年月日から効力を持つ(施行の要件は公布である。法令は、国民に広く知られてから適用すべきだからである。)。

憲法改正の公布は、憲法第96条に規定されている。

法律の公布は、国会法第66条において、奏上の日から30日以内に公布しなければならないと規定されている。

政令・条約の公布は、特に規定がなく天皇の権能とされている。期日や方式は、内閣が決定し、内閣の助言と承認により天皇が公布する。
第2号 現在の憲法では、常会の召集(第52条)と、臨時会の召集(第53条)が規定されている。また、国会法第1条では、国会の召集詔書(以下を参照)と公布などについて規定されている。
日本国憲法第七条及び第五十二条ならびに国会法第一条及び第二条によって平成○○年○月○日に、国会の常会を東京に召集する

御名 御璽

平成○○年○月○日
第3号 衆議院の解散とは、衆議院議員全員について、任期(4年)満了前に議員としての資格を失わせる行為のことである(第45条参照)。

現在の憲法では、解散権が誰にあるのか明記していないが、第7条第3号・第54条・第69条の規定から、解散権は内閣ではなく、天皇に認めていると考えられる。しかし、天皇の国事行為には、内閣の助言と承認が必要であるため、実質的な決定権は内閣にあるといえる。

衆議院の解散詔書は以下である。
日本国憲法第七条により、衆議院を解散する

御名 御璽

平成○○年○月○日
第4号 総選挙とは、一般的には、衆議院の解散と任期満了に伴う衆議院議員総選挙のことである。


しかし、本号では、「国会議員の総選挙」と規定されているため、本号の総選挙には、衆議院議員総選挙だけではなく、参議院議員通常選挙も含まれると解されている。
第5号 任命権者による任命(または免官)を経た後に、天皇による認証を受ける。任命の官記に認証の意を示す御璽を捺して交付するため、文書上の任命と認証は同時となる。

国務大臣、最高裁判所判事、副大臣、検事総長、大使、公使、宮内庁長官、侍従長、公正取引委員会委員長などがあり、これらを認証官とも呼ぶ。

全権委任状は、以下である。
 日本国天皇裕仁は、この書を見る各位に宣示する。
 日本国政府は、昭和二十六年九月四日からアメリカ合衆国サン・フランシスコ市において開催される平和条約に署名するための国際会議における日本国全権委員として
    内閣総理大臣
    外 務 大 臣 吉田 茂
              (以下五名略)
を任命し、この会議に参加する諸国の全権委員とともに、又は共同して、議事に参加し、且つ、この会議において作成せられるすべての国際的文書に署名調印する全権を与える。これらの文書は、国会の承認を経て批准するため、日本国政府に提出せられるべきものとする。
 ここに、日本国憲法に従い、これを認証し、その証拠として、親しく名を署し、璽をツせしめる。
 昭和 年 月 日
                 東京皇居において
 御名 御璽
        内閣総理大臣 氏名 宣印
        外 務 大 臣 氏名 宣印
第6号 恩赦の認証についての規定である。認証することとと規定されており、実質的な恩赦の決定は内閣により行われる(第73条第7号)。

恩赦(おんしゃ)とは、刑罰の全部または一部を免除したりするようなことであり、恩赦法に規定されている。
名前 恩赦法 条文
大赦
(たいしゃ)
第2条 大赦は、政令で罪の種類を定めてこれを行う。
第3条 大赦は、前条の政令に特別の定のある場合を除いては、大赦のあつた罪について、左の効力を有する。

1 有罪の言渡を受けた者については、その言渡は、効力を失う。

2 まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。
特赦
(とくしゃ)
第4条 特赦は、有罪の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第5条 特赦は、有罪の言渡の効力を失わせる。
減刑 第6条 減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、又は刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
第7条 @ 政令による減刑は、その政令に特別の定のある場合を除いては、刑を減軽する。

A 特定の者に対する減刑は、刑を減軽し、又は刑の執行を減軽する。

B 刑の執行猶予の言渡を受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては、前項の規定にかかわらず、刑を減軽する減刑のみを行うものとし、又、これとともに猶予の期間を短縮することができる。
刑の執行の免除 第8条 刑の執行の免除は、刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。但し、刑の執行猶予の言渡を受けてまだ猶予の期間を経過しない者に対しては、これを行わない。
復権 第9条 復権は、有罪の言渡を受けたため法令の定めるところにより資格を喪失し、又は停止された者に対して政令で要件を定めてこれを行い、又は特定の者に対してこれを行う。但し、刑の執行を終らない者又は執行の免除を得ない者に対しては、これを行わない。
第10条 @ 復権は、資格を回復する。

A 復権は、特定の資格についてこれを行うことができる。
第7号 栄典(えいてん)とは、国家や公共に対する功労者を表彰するためのものである。日本では、以下の3種類があり、本人一代限りである。
位階 長く官職にあった者や特に功績のあった者などに与えられる。明治22年(1889)以後は一位から八位までの正・従合わせて一六階となり、第二次大戦以降は故人にのみ与えられるようになった。
勲章 国家や公共に対する勲功・功労を表彰して国から授けられる記章である。以下のようなものがある。勲章を与えることを、叙勲(じょくん)という。

・大勲位菊花章(大勲位菊花章頸飾大勲位菊花大綬章)
・桐花大綬章
・旭日章
・瑞宝章
・宝冠章

昭和12年(1937)に文化勲章が設けられた。武功に対して与えられた金鵄(きんし)勲章は昭和22年(1947)に廃止された。
褒章 ある分野において、立派な行い、功績のあった人を表彰するために国から与えられる記章である。以下のようなものがある。

・紅綬(こうじゅ)(人命救助)
・緑綬(徳行卓越)
・藍綬(らんじゅ)(公益・教育など)
・紺綬(公益のための私財寄付)
・黄綬(業務精励)
・紫綬(文化功労)
栄典は、以下のような形で行われる。
   位  記
                   氏名
 正四位に叙する
 天皇御璽
 平成 年 月 日
        内閣総理大臣  氏名
   勲  記
 日本国天皇は勲○等○○を勲一等に叙し○
○章を授与する
 平成 年 月 日皇居において親ら名を
署し璽を捺させる
 御名 御璽
 平成 年 月 日
 内 閣 総 理 大 臣     氏名 宣印
 内閣総理大臣官房賞勲部長 氏名 宣印
第8号 批准とは、国家が条約に正式に拘束されることへの同意を表明することである。条約への署名を行った後、その内容について議会の同意を得て、批准書を寄託や交換することによって行う。

政府代表が署名を行った後に、議会が否決した場合、批准は行われない。議会による承認の手続を行った後、批准書を作成する。

そして、作成された批准書は、天皇により認証されることとなる。

このように、批准は手続きに時間がかかるため、近年では、批准に代えて、天皇による認証を要しない受諾の手続によって条約を締結することも多い(例えば、京都議定書、たばこ規制枠組条約などがある)。

批准書は、以下のような形となる。
 日本国天皇裕仁は、この書を見る各位に宣示する。
 日本国政府は、日本国の全権委員が連合国の全権委員とともに千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名した日本国との平和条約を閲覧点検し、これを批准する。
 ここに、日本国憲法の規定に従い、これを認証し、その証拠として、親しく名を署し璽をツせしめる。
 昭和 年 月 日
                  奈良において
 御名 御璽
        内閣総理大臣 氏名 宣印
        外 務 大 臣 氏名 宣印
第9号 大使と公使については、以下の表を参照。
大使 最上級の外交使節のことであり、正式には特命全権大使という。派遣先の国に駐在して派遣元の国を代表し、派遣先の国との外交交渉や、派遣先国における派遣元国民の保護などを行う。
公使 大使に次ぐ外交使節のことであり、正式には特命全権公使という。信任状を持ち国家を代表して他国に派遣され,その地位・職務・特権などは大使とほぼ同じである。最近では単に外交使節団の一員として,文化交流,通商など専門分野において大使を補佐するために派遣される例も多い。
※有名人がよくなる観光親善大使などは、大使という言葉がついているが、外交官の大使ではないため、外交特権などはなく、国家の代表というわけではない。
接受(受け入れること)とは、国際法上、消極的公使権と言われる。逆に、外国に対して大公使を派遣することは積極的公使権と言われる。

どの国も、外国の大公使を当然的に受け入れるという義務はなく、拒否する権利があり、拒否するという例もあった(国際関係の悪化につながる。)。そのため、現在では、相手国に対して、アグレマン(事前承認)を求め、それを得た後に、大公使を派遣する(外交関係に関するウィーン条約4条1項)。

信任状には正と副があり、正は元首(日本では天)に、副は政府(外務省)に提出され、正の信任状が受理されてはじめて外国の大公使は、任国で外交特権を認められる。
第10号 儀式とは、新年祝賀の儀、新年一般参賀、親任式、認証官任命式などがある。
Article 7

 The Emperor, with the advice and approval of the Cabinet, shall perform the following acts in matters of state on behalf of the people :

(1) Promulgation of amendments of the constitution, laws, cabinet orders and treaties.

(2) Convocation of the Diet.

(3) Dissolution of the House of Representatives.

(4) Proclamation of general election of members of the Diet.

(5) Attestation of the appointment and dismissal of Ministers of State and other officials as provided for by law, and of full powers and credentials of Ambassadors and Ministers.

(6) Attestation of general and special amnesty, commutation of punishment, reprieve, and restoration of rights.

(7) Awarding of honors.

(8) Attestation of instruments of ratification and other diplomatic documents as provided for by law.

(9) Receiving foreign ambassadors and ministers.

(10) Performance of ceremonial functions.
第8条

 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
本条は、以下の行為については、国会の議決が必要であるとする規定である。皇室とは、天皇や皇族などのことである。

・国民が皇室に財産を譲り渡すこと
・皇室が国民から財産を譲り受けること
・皇室が無償で国民へ財産を与えること

なぜこれらの行為に国会の議決が必要であるかというと、皇室が特定の政治勢力を利用したり、特定の政治勢力が皇室を利用したり、戦前のように皇室が財閥化するといったような、ことを防止するためである。

しかし、このようなおそれがない件については、国会の議決は必要ないとされている(皇室経済法)。
Article 8

 No property can be given to, or received by, the Imperial House, nor can any gifts be made therefrom, without the authorization of the Diet.
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