憲法 条文 | 憲法 解説 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第3章 国民の権利及び義務(Chapter 3:) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。 |
本条は、日本国民であるために必要な条件を、法律で定めるということを規定している(これは、法律以外の命令などで定めることを禁止するということをも含んでいる)。 日本国民とは、日本の構成員の総称であり、日本国籍を有する者のことである。この日本国民を広く解釈すると、以下になる。
一般国民については、国籍法に規定されている。ある個人が日本国籍を有するということは、日本の国民としてあらゆる国家権力との関係において服従関係に立つということを意味する。そのため、日本国民が世界のどの国にあっても、つねに日本の主権に服従すべき関係を有するということである。 日本の国籍法には、国籍の取得方法に以下の二種類を規定している。
先天的取得については、二つの考え方がある。
先天的取得についての条文は、以下である。
帰化には、以下の3種類がある。
なお、日本国籍の喪失については、国籍法第11条から第13条に規定されている。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 10 The conditions necessary for being a Japanese national shall be determined by law. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 |
本条は、第12条・第13条・第97条とともに、基本的人権全体に及ぶ基本原則を規定したものである。基本的人権とは、人間が人間らしく、平和に幸福に生活する上で必要な、生まれながらにして当然もっていると考えられる基本的権利のことである。 本条の基本的人権には、以下の四つの性格がある。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 11 The people shall not be prevented from enjoying any of the fundamental human rights. These fundamental human rights guaranteed to the people by this Constitution shall be conferred upon the people of this and future generations as eternal and inviolate rights. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 |
現在の憲法は、個人の尊重を重視し数多くの権利と自由を認めている。しかし、そこには義務と責任がある。本条は、それらを規定している。 国民は、憲法が保障している自由と権利について、常にこれらを保持するよう努力しなければならない。また、国民はこれらを濫用してはならないし、常に公共の福祉のためにこれらを利用しなければならない。 第97条にあるように、基本的人権は人間が生まれながらにして持っている権利であるが、決して何らの努力なく保持できたものではない。人類の多年の努力と犠牲があって、獲得できたものである。 また、本条が規定する義務は、道徳方針を指す倫理的義務である。そのため、直接明確な法的効果があるわけでなく、国民が自由と権利を放棄したり、これらを濫用したとしても直ちに刑罰の対象となるわけではない。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 12 The freedoms and rights guaranteed to the people by this Constitution shall be maintained by the constant endeavor of the people, who shall refrain from any abuse of these freedoms and rights and shall always be responsible for utilizing them for the public welfare. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 |
本条は、個人の人格の尊重と幸福追求権について規定している。民主主義の発展には、個人の人格の尊重が不可欠である。 社会の複雑化に伴い、従来では予測のつかなかった分野において、人権が侵害される状況が起きている。これに対応していくため、憲法上の規定に不在の人権侵害に対して、本条の幸福追求権の規定を包括人権としてとらえ、人権侵害の救済条項としてとらえていこうとする状況が増えている。例えば、プライバシーの権利、肖像権などである。また、第25条と関連して、環境権などもある。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 13 All of the people shall be respected as individuals. Their right to life, liberty, and the pursuit of happiness shall, to the extent that it does not interfere with the public welfare, be the supreme consideration in legislation and in order governmemental affairs. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第14条 @ すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 A 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 B 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。 |
本条は、法の下の平等について規定している。日本では、明治維新の時に、士農工商の階級制度を廃止して、四民平等の原則が採用された。しかし、これは不徹底なものであり、華族制度や男女差別などが当然とされていた。 本条では、国民はみな法の下に平等であって、以下のことにより、政治的・経済的・社会的な面において差別されないとしている。 ・人種 ・信条 ・性別 ・社会的身分 ・門地 つまり、生まれや育ちや考え方などで、差別されることはないということであり、形式的な平等について規定している。しかし、国民は各々において、年齢・能力などにおいて差があるため、一人一人の自由を尊重すれば実際的には不平等が生じることもある。 そこで平等とは、形式的な平等ではなく、実質的な平等でなければならない。そのためには、当然差別しなければならない面も出てくるが、許される差別と許されない差別については、以下を参照。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 14 1) All of the people are equal under the law and there shall be no discrimination in political, economic or social relations because of race, creed, sex, social status or family origin. 2) Peers and peerage shall not be recognized. 3) No privilege shall accompany any award of honor, decoration or any distinction, nor shall any such award be valid beyond the lifetime of the individual who now holds or hereafter may receive it. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第15条 @ 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 A すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。 B 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 C すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。 |
本条が規定する公務員とは、国家公務員法や地方公務員法の規定する一般職や特別職の公務員以外に、日本銀行や都市整備公団や国民金融公庫などの公共企業体や公法人に勤務する職員なども含まれる。 第1項において、公務員の選定と罷免は、国民固有の権利であると規定されている。これは、国民が現実に、そして直接に公務員を選挙し、免職するという意味ではなく、一般的・抽象的に国民の参政権の一側面を明らかにしたものである。したがって、公務員の選定と罷免の権利は、最終的に主権者である国民の意思に基づくとしたものである。しかし、この第1項の趣旨を具体的に反映させたものもいくつかある。例えば、国会議員・地方公共団体の長・地方議員の選挙や、最高裁判所裁判官の国民審査などである。 第2項では、公務員は国民全体の利益のために職務を行わなければならず、一部の者の利益また自分の利益のために職務を行ってはいけないと規定している。そのため、公務員の政治活動や労働者としてのストライキなどに一定の制限が課せられている。ただし、公務員の職務内容によっては、制限の程度が異なっている(例えば、議員などには政治活動の制限はない。)。 第3項と第4項では、普通選挙の保障について規程されている。選挙は、公務員を選ぶ重要な一方法である。普通選挙の4大原則は以下である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 15 1) The people have the inalienable right to choose their public officials and to dismiss them. 2) All public officials are servants of the whole community and not of any group thereof. 3) Universal adult suffrage is guaranteed with regard to the election of public officials. 4) In all elections, secrecy of the ballot shall not be violated. A voter shall not be answerable, publicly or privately, for the choice he has made. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。 |
請願権の歴史は古い。イギリスでは、1689年に権利章典で確認されている。日本では、江戸時代に目安箱というものがあったし、大日本帝国憲法では、第30条に「日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得」、第50条に「両議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得」、と規定されていた。 現在の憲法では、国民主権を基本原則とし、請願権を人が生まれながらにしてもつ基本的人権の一つとして保障している。関連する法律などは、以下である。
請願手続きなどは、以下である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 16 Every person shall have the right of peaceful petition for the redress of damage, for the removal of public officials, for the enactiment, repeal or amendment of laws, ordinances or regulations and for other matters; nor shall any person be in any way discriminated against for sponsoring such a petition. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。 |
国や公共団体(公共団体には、都道府県・市町村など以外にも、土地改良区や水害予防組合などの公共組合や公団や公庫なども含まれる)の活動は、現実的には公務員により行われている。公務員は、人間であるため、適法な行為以外の違法な行為などを行うことがありえる。 このような場合、損害を受けた者が、損害の全てをその公務員に支払ってもらおうとしても無理なことがあったり、公務員のほうとしても損害賠償を負うかもしれないとすると通常の活動に影響が出る可能性もある。 そこで憲法では、公務員の職務上の不法行為により損害を受けた場合は、国か公共団体がその損害賠償の責任を負うと規定している。大日本帝国憲法には本条の規定はなく、公務員の行為を権力的と非権力的に分け、権力的なものによって加えられた損害については、国や公共団体は責任を負わないとしていた。現在の憲法では、このような区別をしてはいけないことになっている。 本条の規定を受けて、国家賠償法という法律が定められている。第1条では、次のように規定されている。「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」。 本条では、故意とか過失などを問題とはしていないが、国家賠償法では故意や過失が要件とされている。これは、民法(第44条や第715条)の規定が、故意と過失を要件としていることとの釣り合いのためである。 また、本条では、何人(誰でも)も賠償請求ができるとされているが、国家賠償法第6条では、「この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。」と規定されている。 本条で注意しなければならないのが、損害を受けた者は、国か公共団体に損害賠償請求ができるという点である。つまり、その原因を作った公務員に対しては、損害賠償請求をできないということである。ここで問題となるのは、公務員は何をしても損害を賠償しなくても良いのかということである。国家賠償法の第1条第2項では、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」、と規定されている。 つまり、公務員の故意や、その地位にある公務員として著しく不注意であった場合に限って、国や公共団体がその公務員に対して賠償を弁済するよう請求することができるということである(これを国や公共団体の求償権という)。国や公共団体が請求できるのであり、損害を受けた者が公務員に対して請求できないのは同じである。 また、本条では、国や公共団体が設置したり管理している道路や河川や建物などについて何も規定していないが、国家賠償法第2条では、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。」、と規定している。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 17 Every person may sue for redress as provided by law from the State or a public entity, in case he has suffered damage through illegal act of any public official. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 |
本条は、自由権的基本権に属する人身の自由を保障する刑事司法の根本原則について規定している。 人身の自由とは、身体に対する一切の不当な束縛を受けない自由のことである。思想及び良心の自由とともに自由権の中で、最も原初的で基礎的なものである。 人身の自由は、私人間(国民と国民)においての拘禁からの自由も含まれるし、国家権力からの自由も含まれる。 本条の奴隷的拘束とは、奴隷に類すると考えられるような自由の束縛や人格を無視したような束縛のことである。例えば、強制労働、監獄部屋、人身売買などが考えられる。また、私人間における奴隷的束縛を内容とする契約は、公序良俗に反するものとして無効である(民法第90条)。また、刑罰の対象となる。 本条後半の意に反する苦役とは、普通人がいくらかでも苦痛を伴う程度の役務のことである(奴隷的拘束には至らない程度)。したがって、徴兵制度や国民徴用などは、原罪の憲法では許されないことになる。これは、国と国民の間だけではなく、私人間でも同様である。労働基準法では、以下のように規定されている。
ただし、意に反する苦役については、犯罪による処罰の場合は、例外として許されている。刑罰は、もともと本人の意思に反するものであるため、当然といえる。しかし、この場合であっても、意に反する苦役が、奴隷的拘束であったり残虐なものである場合は、絶対に許されない。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 18 No person shall be held in bondage of any kind. Involuntary servitude, except as punishment for crime, is prohibited. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 |
思想及び良心とは、内心におけるものの見方や考え方(世界観、人生観、主義、信条)などのことである。判例では、思想の自由は、人が内心に抱く考え方の自由が外部の強制・圧迫・差別待遇により妨げられないこと、つまり、人の精神活動の自由が外部の力から保障されている状態のことである。そして、この自由は、民主主義の根底をなす信教の自由、表現の自由、学問の自由などの源泉となるものである。 良心とは、思想の中の多少とも道徳的な側面を取り上げたにすぎず、良心の自由は広い意味における思想の自由に含まれる。 思想及び良心の自由には、自分の思想及び良心について、沈黙する自由を含むのかどうかという問題がある。以下参照。 ・裁判などで、証人または鑑定人に対して証言や鑑定をする義務を課している(刑事訴訟法第146条以下、第165条以下、民事訴訟法第280条以下など) ・新聞記者がニュースソースについて証人としての宣誓を拒否した事件においては、取材源を隠すことは、表現の自由を保障した憲法第21条によって保障されるものではないとしている(最高裁判例昭和27年8月6日) ・新聞などに謝罪広告を出すよう強制する裁判の判決については、謝罪広告は屈辱的もしくは苦役的労苦を科したり、または個人の倫理的思想、良心の自由を侵害することを要求するものではないとしている(最高裁判例昭和31年7月4日)。ただし、国が裁判という権力作用で、自分の行為が誤りであったということを公に表現することを命じることは、良心の自由を侵すという意見も多い。また、他の先進国では、名誉回復のために損害賠償を命じる判決を下しても、原則として謝罪広告を命じる判決を下すことは認められていない。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 19 Freedom of thought and conscience shall not be violated. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第20条 @ 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 A 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 B 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 |
信教の自由は、各国の人権宣言で規定されている。日本でも、明治政府が誕生した当時は、江戸時代以来のキリスト教禁制が続いていたが、外国からの圧力がありこの禁止が解かれた。戦前の憲法第28条には、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」という規定があったが、この憲法の根本部分は神権天皇制であり、天皇の祖先を神々として崇めるという考えを、その他の宗教と同列に扱うことはできなかった。 つまり、天皇崇拝の精神的基礎を固めるために、天皇の神格の根拠としての神社に対して国教的性格が与えられていた。例えば、神宮や神社には公法人の地位、神官や神職には官吏の地位が与えられていた。神社は内務省神社局(後の神祇院)の所管であったが、その他の宗教に関する行政は文部省の所管であった。また、一般国民は神社参拝が強制されていたし、公務員に対しては公の儀式として行われる神社の儀式に参列する義務があった。 このように信教の自由とは矛盾した面があったが、当時の政府は、「神社は宗教にあらず」としていたため、信教の自由には反しないとされていた。また、条文中に、「臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」と書かれており、神社の信教は国民の義務に属するため、憲法には違反しないという考え方もされていた。 つまり、戦前の日本の信教の自由は、神社の国教的地位が前提にあり、これに背かない範囲内で認められていたということである。 こうした状態は、敗戦により終止符が打たれることとなり、昭和20年12月15日に、国家神道の禁止に関する指令により、神社の国家的な地位は廃止された。また、翌年の1月1日、天皇は自ら、「天皇の人間宣言」をした。 本条が規定する信教の自由とは、以下のような意味である。 ・内心における宗教上の信仰の自由のことである。これは、思想及び良心の自由の一部をなすものである。ある特定の宗教を信じるまたは信じない自由のことである。さらに、自分の信じる宗教について、沈黙を守る自由も含まれる。 ・宗教上の信仰を外部に発表したり、その宗教を宣伝する自由のことである。これは、表現の自由の一部をなすものである。 ・宗教的行為の自由のことである。これは、集会し、結社する自由の一部をなすものである。 これらの自由を完全に保障するためには、政教分離の原則が不可欠であり、宗教団体は国から特権を受けないことになっている。 宗教法人は、法人税法第7条において、「内国法人である公益法人等又は人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得については、第五条(内国法人の課税所得の範囲)の規定にかかわらず、それぞれ各事業年度の所得に対する法人税及び清算所得に対する法人税を課さない。」と規定されており、公益法人や学校法人などと並んで、法人税が課されないことになっている。これについては、一般に各種の非営利的な法人の一定の所得に対して免税しようとした結果、宗教法人もその恩典に浴したに過ぎないため、特権を受けたことにはならないと考えられている。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 20 1) Freedom of religion is guaranteed to all. No religious organization shall receive any privileges from the State, nor exercise any political authority. 2) No person shall be compelled to take part in any religious act, celebration, rite or practice. 3) The State and its organs shall refrain from religious education or any other religious activity. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第21条 @ 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 A 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 |
集会・結社・表現の自由は、民主国家にとって欠くことのできないものである。思想・良心の自由は内心の自由であるが、集会・結社・表現の自由は内心で形成されたものを外に向かって表出する行為である。 集会と結社の違いについては、以下を参照。
表現の自由とは、あらゆる手段による発表の自由のことである。戦前の憲法でも保障されていたが、「法律の範囲内でのみ認める」という制限があった。そのため、実際は、治安維持法や新聞法などにより厳しい制限がされていた。現在の憲法では、表現の自由は無条件に保障されており、「公共の福祉」に反するという理由で制限されることも許されない。ただし、その表現が猥褻であったり、他人の名誉を傷つけるような場合は、社会法益や個人法益を侵すことになり当然制限される。 検閲とは、国家によって外部に発表されようとする思想の内容をあらかじめ審査し、場合によりその発表を禁止することである。現在の憲法では、検閲は一切認められない。 善良の風俗に反する映画や猥褻本などが上映・発行されようとしても、上映・発行以前に行政機関により禁止することはできない。しかし、上映・発行後に法的措置をとることは検閲とは別問題であるためできる。映画倫理協会による自らの統制は、国家が統制しているものではないため、検閲ではない。 通信の秘密は、個人生活の秘密の保障、さらに思想・表現の自由保障などに不可欠であるため、憲法で保障されている。この通信の秘密は、信書の秘密よりもさらに広い意味である。信書は封書とか葉書などであるが、通信は信書のほかに電信・電話なども含む。本条に基づき、郵便法第8条では、「会社の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。」と規定されている。 ただし、犯罪捜査の令状による通信物の捜査・押収、監獄法に基づき囚人の封書を開封することは、特殊の目的のため行われるもので、認められている。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 21 1) Freedom of assembly and association as well as speech, press and all other forms of expression are guaranteed. 2) No censorship shall be maintained, nor shall the secrecy of any means of communication be violated. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第22条 @ 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 A 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。 |
居住・移転の自由とは、どんな場所へでも自由に住所を定め、移住できる自由のことである。住所を定めることには、積極的に自らが居住を決定することと同時に、自分の意に反して居住地を移されないという意味がある。ただし、これらは公共の福祉に反しない限りという条件がつく。例えば、伝染病にかかった人などを強制隔離するとか、都市計画法などに基づいて必要かつ最小限度の制約をするなどがある。また、親権者である親が子の居住を指定することや、夫婦が同居することなど、民法上の義務は本条に違反しない。 職業選択の自由とは、自分の望むところに従って、どのような職業につくことも自由であり、営業も自由に行うことができるという意味である。ただし、公共の福祉に反することはできない。外国人などは、水先人(水先法第5条)や公証人(公証人法第12条)になることはできないなど、制約がある。衛生・古物・風俗営業などは、警察的な面から許可制となっているし、医者や弁護士や薬剤師などは資格が必要である。 外国移住の自由とは、住所を外国に置いたり、旅行により外国へ行く自由のことである。逆に、日本人が外国から日本へ帰る自由も含まれる。旅券法第13条では、「外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。」 、と規定し、一定の場合には旅券の発給を拒否できるとしている。 国籍を離れる自由は、自分の希望で国籍を離れることである。しかし、国籍を離れて無国籍となる自由は含まれない。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 22 1) Every person shall have freedom to choose and change his residence and to choose his occupation to the extent that it dose not interfere with the public welfare. 2) Freedom of all persons to move to a foreign country and divest themselves of thier nationality shall be involate. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第23条 学問の自由は、これを保障する。 |
学問の研究は、常に従来の考え方を批判して、新しいものを創造しようとする努力であるため、高度の自由が要求される。戦前においては、旧大学令第1条に、「帝國大學ハ國家ノ須要ニ應スル學術技藝ヲヘ授シ及其蘊奧ヲ改究スルヲ以テ目的トス」と規定されていた(これは帝国大学に関してであるが)ことからもわかるように、国家のための学問という観念が強かった。 具体的に、学問の自由とは、以下のような内容のことである。 ・研究者は、学問的研究に基づいて、どのような学説を抱いてもよい。この自由は、思想および良心の自由に含まれるものである。 ・研究者は、学説を発表する自由がある。この自由は、表現の自由に含まれるものである。 ・研究者は、学説を教授する自由がある。教授する場所は、主として大学となる。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 23 Academic freedom is guaranteed. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第24条 @ 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 A 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 |
民主社会は、人間の尊重と平等を根本として成立する。この二つが保障されてこそ、真の民主社会と言える。日本国憲法では、第13条で個人の尊重、第14条で平等の原則が規定されているが、この二つの原則にたって男女の平等、家族の生活を考えたのが本条である(人間を封建的な家族制度から解放するためである。)。 戦前までは、家を中心とした封建的な家族制度があった。この制度は、戸主権をもつ戸主、夫権をもつ夫、親権を持つ親があり、他の者に対して身分的な優越が認められていた(戸主の住所指定権、家族の者の婚姻同意権、全財産の管理権や収益権などがあった。)。また、家督制度というものもあり、長男が戸主の地位と家の財産を全て一人で相続していた。 現在では、婚姻は男女の自由な意思の合致により成立し、夫婦は同権であり、夫婦の愛情を中心とした協力により家族が維持されていくのが基本である。婚姻には親の同意は不要であるが、未成年者の場合だけは、父母のどちらかの同意が必要である(民法第737条)。男は18歳、女は16歳にならないと結婚できない(これは優生学的立場である。)。重婚は禁止されている(民法第732条)。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 24 1) Marriage shall be based only on the mutual consent of both sexes and it shall be maintained through mutual cooperation with the equal rights of husband and wife as a basis. 2) With regard to choice of spouse, property rights, inheritance, choice of domicile, divorce and other matters pertaining to marriage and the family, laws shall be enacted from the standpoint of individual dignity and the essential equality of the sexes. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第25条 @ すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 A 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 |
本条は、日本の憲法がいわゆる社会国家(積極国家)的理念に立つことを明らかにした条文である。 「健康で文化的な最低限度の生活」という部分は、「人間の尊厳にふさわしい生活(世界人権宣言第23条第3項)」や「人間に値する生存(ワイマール憲法)」などと同じ意味である。 しかし、本条は、国は国民に対して一般的に健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を負い、このことは国政上の任務であるが、本条によって直接に国民は国家に対して具体的・現実的な権利を持つわけではない。いわゆるプログラム規定である。 本条が規定する社会福祉の向上と増進に努めるために制定された法律には、以下のようなものがある。 ・生活保護法 ・母体保護法 ・児童福祉法 ・知的障害者福祉法 ・身体障害者福祉法 ・各種健康保険法 ・感染症予防法 ・医療法 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 25 1) All people shall have the right to maintain the minimum standards of wholesome and cultured living. 2) In all spheres of life, the State shall use its endeavors for the promotion and extension of social welfare and security, and of public health. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第26条 @ すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 A すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。 |
本条は、国民が全て等しく教育を受ける権利があることを規定している。これは、個人の尊厳と法の下の平等を基礎とし、国民は、人種・信条・性別・社会的身分・経済的地位・門地等を理由として、教育上差別を受けないということである。 本条の語句については、以下を参照。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 26 1) All people shall have the right to receive an equal education correspondent to their ability, as provided by law. 2) All people shall be obligated to have all boys and girls under their protection receive ordinary education as provided for by law. Such compulsory education shall be free. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第27条 @ すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。 A 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。 B 児童は、これを酷使してはならない。 |
本条は、勤労の権利についての規定である。勤労とは労働のことであり、勤労者とは労働者のことである。 勤労の権利という観念は、以下の二つの意味を持っている。
本条は、第25条と同じく、いわゆる生存権的基本権である。つまり、具体的な法律上の権利ではない。本条を根拠として、国民が国家に対してすぐに職を与えるように要求できる具体的・現実的な権利ではない。 本条により、具体化された法律は以下である。 ・労働基準法 ・最低賃金法 ・船員法 ・児童福祉法 ・職業安定法 ・職業訓練法 ・雇用対策法 ・船員職業安定法 ・雇用保険法 ・緊急失業対策法 ・船員保険法 また、国民の勤労の義務についても、具体的な法律上の義務はない(旧ソ連憲法第12条には、「働かざるものは食うべからず」というような労働の義務があったが、このような義務はない。)。日本の場合、国家が国民を強制的に働かせることはできないとされている。 本条第2項には、賃金・就業時間などについては、以下に規定されている。
本条第3項では、児童の酷使を禁止している。これは、世界各国で、児童の虐待や酷使の例が多いためである。本条の規定は、第18条の苦役の禁止とも相通ずる意味を持つ。 児童とは、何歳までの者をいうかについて、労働基準法では、以下のように規定している。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 27 1) All people shall have the right and the obligation to work. 2) Standards for wages, hours, rest and other working conditions shall be fixed by law. 3) Children shall not be exploited. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 |
本条は、勤労者の団結権や団体行動権についての規定である。勤労とは労働のことであり、勤労者とは労働者のことである。 労働者とは、精神的・肉体的労働を他人に提供することにより、対価として賃金・報酬などを得て生活する者のことである。労働組合法、労働基準法では、以下のように規定されている。
本条の三つの権利は、第25条と同じように生存権的基本権の中心をなすものである。これは、資本主義社会の発展の必然の結果として、使用者に対して経済的に弱い立場である労働者が団結して交渉する権利を与えられることによって、労使間の労働契約を結ぶ際の不平等をなくし、実質的に対等の関係を確保できるようにするためである。 三つの権利については、以下を参照。
本条に関係する労働組合法の規定は、以下である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 28 The right of workers to organize and to bargain and act collectively is guaranteed. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第29条 @ 財産権は、これを侵してはならない。 A 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 B 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。 |
本条は、財産権の不可侵の原則と、私有財産を公共のために使用することについてを規定している。 財産権とは、一切の財産的権利のことである。つまり、物権や債権や営業権、河川利用権のような公法的な権利、著作権や特許権などの無体財産権なども含まれる。中でも一番代表的なのが、土地所有権である。 本条の規定において、財産権は侵害してはならないものである。ただし、これは原則的なものであり、国は公共の福祉のためであれば、正当な保障の下に国民の財産権を使用することができる。 第3項による一般法には、土地収用法などがある。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 29 1) The right to own or to hold property is inviolable. 2) Property rights shall be defined by law, in conformity with the public welfare. 3) Private property may be taken for public use upon just compensation therefor. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ |
本条は、国民の納税義務についての規定である。 本条が規定する納税(租税)については、手数料などとは違うものである。以下を参照。
納税については、第84条において、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」、と規定されている。つまり、国民は法律によって定められている納税だけ行えばよいということである(逆に言えば、法律に定められていない納税はしなくてもよいということである。)。これを、租税法律主義の原則という。 条文中の「国民」の中には、日本国民以外にも、外国人や企業などの法人も含まれている。 本条の納税義務について注意しなければならないことがある。それは、納税は、国民の経済的能力に応じた負担でなければならないということである。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 30 The people shall be liable to taxation as provided by law. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 |
本条は、誰でも、法律の定める適正な手続きによらなければ、その生命や自由を奪われたり、その他の刑罰を科せられたりすることはないと規定している。 様々ある自由の中で、人身にかかわる自由は最も重要で基礎的な自由である。 本条は、第32条から第40条において規定されている人身の自由の具体的保障の総則的地位にあり、全ての権利の手続的保障の基本的地位でもある。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 31 No person shall be deprived of life or liberty, nor shall any other criminal penalty be imposed, except according to procedure established by law. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 |
裁判とは、対立する当事者間の具体的な法的紛争を司法機関である裁判所が、訴訟法の手続きに従って、法的判断をすることにより解決する作用のことである。 裁判所とは、以下の裁判所のことである。
裁判を受ける権利は、独立した司法権の下での、法のあらかじめ定める組織、権限、手続きに基づく公正な裁判所において、平等な裁判をあらゆる人々に保障することにより、人権保障を担うものである。 本条が裁判を受ける権利を規定するのは、誰でも自ら裁判所へ訴訟を提起し、救済を求めることができるという、裁判請求権を明らかにすることにより、人権を不断の努力により保持し利用する責任を有すること(第12条)のさらなる自覚を促すためである。人権は、ただ与えられたものではなく、個人個人が自覚的に活用していくべきものである(人権が侵害された場合は、侵害されたと抗議しなければならない。しかし、日本では昔から、人権は私利であるとして拒絶されてきたきらいがある。)。 裁判所が審理できるのは、法律上の争訟であるため、具体的な権利保護の利益がない場合は、裁判を受ける権利の請求は保障されない。適法な訴訟でなければ、本条が規定する裁判を受ける権利は、保障されない。 また、とくに刑事事件においては、裁判所以外の機関で裁判を受け、刑罰を科せられることがない。この点についても、本条が規定する裁判を受ける権利に含まれる。第37条第1項は、この点についてをさらに強調して規定した条文である。 本条の例外には、以下のものがある。 ・議員の資格争訟(第55条) ・裁判官の弾劾裁判(第64条) ・行政裁判の前審裁判(第76条第2項) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 32 No person shall be denied the right of access to the courts. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 |
本条は、逮捕については必ず令状が必要であるという原則を規定している。人身の自由を保障するためである。 本条が逮捕の場合に必要だと規定しているのは、以下の三つである。 ・あらかじめ発せられた令状が必要である。 ・令状は、司法官憲が発したものでなければならない。 ・令状は、理由となっている犯罪事実が明らかにされていなければならない。 条文の語句については、以下を参照。
本条の規定により、逮捕には原則的に令状が必要であるが、例外もある(令状による逮捕を通常逮捕という。)。以下を参照。
本条に関係する刑事訴訟法の条文は以下である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 33 No person shall be apprehended except upon warrant issued by a competent judicial officer which specifies the offense with which the person is charged, unless he is apprehended, the offense being committed. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。 |
本条は、抑留と拘禁についての規定である。
抑留または拘禁する場合については、以下のことをしなければならない。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 34 No person shall be arrested or detained without being at once informed of the charges against him or without the immediate privilege of counsel; nor shall be he be detained without adequte cause; and upon demand of any person such cause must be immediately shown in open court in his presence and the presence of his counsel. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第35条 @ 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。 A 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。 |
条文中の語句などについては、以下を参照。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 35 1) The right of all persons to be secure in their homes, papers and effects against entries, searches and seizures shall not be impaired except upon warrant issued for adequate cause and particulary describing the place to be searched and things to be seized, or except as provided by Article 33. 2) Each search or seizure shall be made upon separate warrant issued by a competent judicial officer. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。 |
本条は、公務員(特に、裁判・検察・警察関係の公務員を指す)による拷問(被疑者や被告人に自白をさせるために暴行を加えるなどのことである)や残虐な刑罰を禁じる条文である。 拷問は、犯罪の決め手となる自白を得る有効手段として、各国で長く使われていたが、後に廃止する国が増えた。日本では、明治初めに、拷問は公には廃止されたことになっていたが、公務員による拷問は公然の秘密として行われていたといわれている。 このような過去の反省を踏まえ、憲法において、拷問の絶対禁止を規定している。当然、拷問により得られた自白には証拠能力はない。 残虐な刑罰とは、精神的・肉体的に無用な苦痛を与え、残酷な印象を与えるような刑罰のことである。どの程度あれば、残虐な刑罰と言えるかは、時代や状況により異なる。ここで問題となるのが、死刑についてである。最高裁判所は、第13条と第31条により、死刑は合憲であるとしている。ただし、死刑の方法が、火あぶり、はりつけ等のものであれば、残虐な刑罰になるとしている。また、死刑判決が下ってから、死刑が行われることなく30年以上拘禁されていたとしても、残虐な刑罰には該当しないとしている。 また、行われた犯罪に対して非常に重い判決が下った場合や、軽い犯罪に対して重い刑罰を定めておくことは、残虐な刑罰になるのかという問題がある。本条が規定する残虐な刑罰は、刑罰の種類や性質についてのものであるため、問題とはならない(これについては、犯罪と刑罰は釣り合ったものでなければならないとする罪刑法定主義の問題と関係する。)。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 36 The infliction of torture by any public officer and cruel punishments are absolutely forbidden. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第37条 @ すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。 A 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。 B 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。 |
本条は、第38条と並んで、現在の刑事訴訟法の基本的な考え方に大きな影響を与えており、被告人の権利について規定している。 本条があげている被告人の権利は、以下である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 37 1) In all criminal cases the accused shall enjoy the right to a speedy and public trial by an impartial tribunal. 2) He shall be permitted full opportunity to examine all witnesses, and he shall have the right of compulsory process for obtaining witnesses on his behalf at public expense. 3) At all times the accused shall have the assistance of competent counsel who shall, if the accused is unable to secure the same by his own efforts, be assigned to his use by the State. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第38条 @ 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。 A 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。 B 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。 |
本条は、黙秘権と自白についての規定である。 戦前は、「自白は証拠の王である」と言われたほど、自白が証拠として偏重され、処罰の根拠とされた。拷問などを行い、自白させることもあったと言われている。 このようなことの反省の上に、本条が規定されている。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 38 1) No person shall be compelled to testify against himself. 2) Confession made under compulsion, torture or threat, or after prolonged arrest or detention shall not be admitted in evidence. 3) No person shall be convicted or punished in cases where the only proof against him is his own confession. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。 |
本条は、国民が以下のような場合には、罰せられることがないことを規定している。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 39 No person shall be held criminally liable for an act which was lawful at the time it was committed, or of which he has been acquitted, nor shall he be placed in double jeopardy. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。 |
本条は、抑留または拘禁された後に、無罪の裁判を受けた場合、被疑者や被告人とされた者(被害者)は、多大な精神的・肉体的・経済的な苦渋を受けた可能性が高いため、国家が償うことを規定した条文である。被害者は、国家に対して、その補償を請求する権利(刑事補償請求権)を有する。 本条の規定を受けて、刑事補償法という法律が定められている。また、法廷等の秩序維持に関する法律第8条には、監置後、監置の制裁を取り消す裁判があった場合の補償請求権を認め、刑事補償法を準用すると規定している。この他、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」では、合衆国軍事裁判所または合衆国軍隊による拘留または拘禁を、刑事訴訟法による抑留または拘禁とみなすと規定している。 補償請求ができるための要件は、以下である。
補償の内容については、刑事補償法第4条などに規定されている。以下を参照。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Article 40 Any person, in case he is acquitted after he has been arrested or detained, may sue the State for redress as provided by law. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
トップへ戻る |