憲法 条文 憲法 解説
第4章 国会(Chapter 4:THE DIET)
第41条

 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
国民の代表機関である国会が、どのような地位にあるのかを規定した条文である。

官庁などの国家機関は、何らかの権力(憲法・法律・命令等に基づいて何かを行う強制力)を持っている。例えば、裁判官が行う裁判が人権侵害などにならないのは、それが適法な権力(強制力)だからである。

国家機関は様々あるが、その中で一番最高のものが、国会である(本条)。そのため、国会は唯一、法律を制定することができる。また、以下のような多くの権限を持っている。
条文 権限
第8条 皇室に対し、または皇室から財産の授受を行う際の議決
第41条 国権の最高機関
法律制定(唯一)
第60条 予算制定
第61条 条約承認
第62条 国政調査
第64条 裁判官の弾劾
第67条 内閣総理大臣の指名
第69条 憲法改正の提案
第83条 財政の監督
※国会には法律制定以外に、上記のような権限があり、国家権力(国権)の最高機関とされている。憲法のこの規定は、諸外国と比較しても、珍しいといわれている。これは、戦前の大日本帝国憲法が、天皇を最高機関としており、天皇に立法権があり(また、天皇に緊急勅令権や独立命令権が憲法で認められており、議会の審議。議決を経ないで立法ができた。これを、天皇の副立法権という。)、帝国議会はその協賛機関に過ぎなかったことによる過ち(議会では立法化できないような事柄や、国民の自由や権利を制限する政策が実現されていった。)を清算するための規定でもあるからである。


ただし、最高の機関、唯一の立法機関という点については、少しの例外がある。それは以下である。
名前 条文 例外
最高機関 第7条 国会の招集や衆議院の解散は、内閣によって行われる。
唯一の立法機関 第96条 憲法改正は、国会だけではできない。国民投票などが必要である。
第81条 国会が決定した法律は、裁判所による違憲無効となる場合がある。
第95条 ある地方だけで実施される特別法の制定は、国会の議決だけではなく、その地方住民の同意が必要である。
※これら以外にも、衆参両議院の規則制定や、最高裁判所の規則制定なども例外といえる。
Article 41

 The Diet shall be the highest organ of state power, and shall be the sole law-making organ of the state.
第42条

 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
日本の国会は、衆議院と参議院の二院制となっている。諸外国の国会は、以下のようになっている。
制度 国名
一院制 ・ポーランド
・ポルトガル
・ハンガリー
・ブルガリア
・韓国
・中国
二院制 ・イギリス
・アメリカ
・ドイツ
・フランス
・オランダ
・ベルギー
・オーストリア
・イタリア
・カナダ
※二院制は、イギリスで生まれた制度である。イギリスは、元々、一院制の階級代表会議(高僧、貴族、上層市民の代表)だったが、14世紀頃から都市経済の発展に伴い市民層の政治力が増大し、市民代表は庶民院として分離し、二院制となった。
※一院制は、議会制民主主義の普及した比較的小国で採用される場合が多い。財政負担が少なくてすむためなどの利点がある。
※先進国は、二院制を採用している場合が多いため、二院制が当然であると思われているが、第二次世界大戦後に独立した国では一院制を採用するケースも多い。


利点 欠点
一院制 ・一院のみからなるため、両院の意見の対立がない。二院に比べて、スムーズに立法できる。
・財政負担が少なくてすむ。
・両院相互の均衡と抑制(チェック・アンド・バランス)がないため、議会が暴走する可能性ある。
・選挙が半減するため、民意が反映されにくくなる。
二院制 ・一院で決定したことについて、他の院で再考できるため、慎重な審議が可能となる。
・一院の多数党が、他の院の多数党とは限らないため、ある院の多数党の横暴を抑制できる可能性がある。
・両院相互の均衡と抑制(チェック・アンド・バランス)により、国政が安定化する。
・財政負担が増える。
・ある院で決まったことが、もう一院により否決されることにより、立法がスムーズにいかない場合がある(下の※を参照)。
※二院制の場合において、両院の権限が等しいならば、両院の意見が一致しない限り、審議が進まなくなる。そのため両院の権限には優劣がつけられている場合が多い。日本の場合、予算や法案などの重要事項は衆議院が優越されているため、参議院の必要性を問う声が根強い。


日本の両院の権能の違いは以下を参照。
議院 権能
衆議院 ・法律案の提出
・議院規制の制定
・国政の調査
・請願の受理
・議員の資格争訟
・議員の逮捕の許諾、釈放の要求
・議員の懲罰
・会議公開の停止
・役員の選任
・大臣出席の要求
・決議(祝賀・弔意の決議)
・内閣の信任・不信任の決議
・緊急集会に対する同意
・法律・予算・条約承認・総理指名における優越
参議院 ・参議院の緊急集会
※日本の場合、衆議院が重要事項について優越権がある。これを、衆議院優越の原則という。
Article 42

 The Diet shall consist of two Houses, namely the House of Representatives and the House of Councillors.
第43条

 @ 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

 A 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
衆議院と参議院の議員は、全国民の代表者により組織される。大日本帝国憲法時代の貴族院議員のように、国民からの選挙によらない議員であってはならない。

ただし、全国民とはなっているが、選挙権は日本国民で満20歳以上の男女となっている(公職選挙法第9条)ため、国民全てという意味ではない。


現在の両議院の議員定数などについては、以下の表を参照。
名前 衆議院 参議院
議員
定数
480人 242人
小選挙区選出議員:300人
比例代表選出議員:180人
選挙区選出議員:146人
比例代表選出議員:96人
選挙区 小選挙区:300
比例代表:全国を11に分けた選挙区
選挙区:都道府県単位の選挙区
比例代表:全国単位の選挙区
任期 4年 6年
解散制度 有り 無し
被選挙権 満25歳以上 満30歳以上
選挙権 満20歳以上の男女
特別な
権限
内閣不信任決議
予算先議権
議決の優越
緊急集会
Article 43

1) Both Houses shall consist of elected memebers, representative of all the people.

2) The number of the members of each House shall be fixed by law.
第44条

 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
衆議院と参議院の議員に選ばれる資格(被選挙権)とそれらの議員を選ぶ資格(選挙権)は、公職選挙法に規定されている。

民主国家であれば、国民はみな主権者であり、政治参加の権利が保障されなければならない。しかし、法的行為者には、行為能力があることが前提である。

名前 内容
選挙権 満20歳以上の男女
被選挙権 衆議院議員は、満25歳以上。
参議院議員は、満30歳以上。
※どちらの場合も、日本国民である必要がある。但し、最近は、この国籍条項をなくすべきだという主張も多い。
※人種、信条、性別、社会的身分、門地(家柄)、教育、財産・収入で差別してはならない(これを普通選挙という。)。教育とは、学歴だけではなく、文字が書けるかどうかも含む。
※普通選挙に対して、色々な条件で差別をつける制度を制限選挙という。


日本の選挙制度の歴史については、以下の表を参照。
選挙権 備考
1890年 満25歳以上の男性で、
直接国税を15円以上納めている者
制限選挙
1900年 満25歳以上の男性で、
直接国税を10円以上納めている者
1919年 満25歳以上の男性で、
直接国税を3円以上納めている者
1925年 満25歳以上の男性 普通選挙
1945年 満20歳以上の男女


例外的に選挙権を有しない者もいる。
・成年被後見人
・禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
・禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
・公職にある間に犯した収賄罪または斡旋利得罪により刑に処せられ、実刑期間経過後5年間を経過しない者。または刑の執行猶予中の者
・選挙に関する犯罪で禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行猶予中の者
・公職選挙法等に定める選挙に関する犯罪により、選挙権、被選挙権が停止されている者
・政治資金規正法に定める犯罪により選挙権、被選挙権が停止されている者
Article 44

 The qualifications of members of both Houses and their electors shall be fixed by law. However there shall be no discrimination because of race, creed, sex, social status, family origin, education, property or income.
第45条

 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
任期とは、議員が議員としての資格をもっている期間のことである。衆議院議員の任期は、4年である。ただし、解散があれば、それ以前で任期は終わる。
場合 任期
総選挙で議員となった者の場合 選挙の日から4年間である。
任期満了により4年目を迎えるに先立って、次の議員の選挙が行われ議員となった者の場合 前議員が満4年になった翌日から4年間である(公選法第256条)。
※衆議院には解散制度があるため、解散があれば、4年たたなくても、任期は終わる。


また、衆議院では、以下の場合、補欠選挙というのが行われることがある。
条文 理由
憲法 第55条 議員の資格喪失
第58条 除名
国会法 第107条 辞職
死亡
上記の理由などにより、
小選挙区で1人の欠員、
比例代表ではその選挙区の定数の4分の1を超える欠員(公選法第113条)、
があれば、
40日以内に(公選法第34条)、
補欠選挙が行われる。

この補欠選挙により選ばれた議員の任期は、
欠員となった議員の残りの任期となる(公選法第260条)。
Article 45

 The term of office of members of the House of Representatives shall be four years. However, the term shall be terminated before the full term is up in case the House of Representatives is dissolved.
第46条

 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
任期とは、議員が議員としての資格をもっている期間のことである。参議院議員の任期は、6年である。また、解散はない。

議院 選挙 定数 任期 解散
衆議院 総選挙、解散選挙 480人 4年 有り
参議院 通常選挙(公選法第31条・第32条) 242人 6年 無し
※参議院の通常選挙は、3年ごとに行われ、半数(121人)を改選する。
※参議院の任期は6年と長い。これにより、議員の身分に比較的永続性と安定性を持たせている。衆議院に対して抑制的・補完的な面で機能するようにするためである。
※参議院の任期は、前通常選挙による議員の任期満了日の翌日から計算する(公選法第257条)。
※参議院にも補欠選挙がある。議員定数の4分の1を超えた欠員が生じたとき、40日以内に補欠選挙が行われる(公選法第34条)。これにより選ばれた議員の任期は、前議員の残りの任期となる。(公選法第260条)。
Article 46

 The term of office of members of the House of Councillors shall be six years, and election for half the members shall take place every three years.
第47条

 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
選挙区、投票の方法、その他両議院の議員の選挙については、公職選挙法で決める。公職選挙法とは、1950年に、それまであった衆議院議員選挙法・参議院議員選挙法の各条文、地方自治法における選挙に関する条文を統合する形で新法として制定されたもので、国会議員、地方公共団体の議会の議員・首長に関する定数や選挙運動などの選挙制度に関して規定している(対象となる職位を総称して公職と言う。)。

選挙区とは、選挙人の構成する地域を言うが、選挙を実施する側(政府や政党)の独善的な区制決定を避けるため、選挙区法定主義がとられている。近代国家の選挙制度においては、普通平等選挙の原則から、選挙人団を決定する基準として、財産や身分などによる選挙基準を避け、地域主義とする。ただし、現代の国民生活においての利害は、地域よりも職域に関係することが多いため、職域代表を加味したほうがよいとの意見もある。


現在の両議院の選挙区などについては、以下の表を参照。
名前 衆議院 参議院
議員
定数
480人 242人
小選挙区選出議員:300人
比例代表選出議員:180人
選挙区選出議員:146人
比例代表選出議員:96人
選挙区 小選挙区:300
比例代表:全国を11に分けた選挙区
選挙区:都道府県単位の選挙区
比例代表:全国単位の選挙区
※比例代表制は、ドント方式による政党の得票数に応じて議席が配分される。


選挙区の違いについては、以下の表を参照。
選挙区 内容
大選挙区制

1選挙区から2名以上
長所 ・死票が少ない
・少数政党も当選可能
・人物選択の範囲が広がる
・買収などの不正投票が減少する
短所 ・少数政党乱立により、政局不安が起きやすい
・選挙費用が多額になる
・選挙区が広いため、候補者選びが難しくなる
・補欠選挙や再選挙が行われにくい
小選挙区制

1選挙区から1名
長所 ・多数政党が有利になる
・2大政党制になり、政局が安定する可能性が高い
・選挙費用が少なくてすむ
・選挙の取締りを徹底できる
・候補者をよく理解できる
短所 ・死票が最も多く出る
・少数政党が不利になる
・ゲリマンダーの危険性が高い
比例代表制 長所 ・死票が一番出にくい
・民意を正確に反映できる
・少数政党も議席を確保できる
短所 ・少数政党乱立による、政局不安が起きやすい
※現在の選挙区制度は、小選挙区と比例代表である。
※死票とは、選挙において、その票を投じた有権者を代表する当選者がいない票のことである。
※ゲリマンダーとは、選挙において特定の政党や候補者に有利なように、選挙区を区割りすることである。


投票とは、各選挙人のなす意思表示のことであり、大別して、口頭投票・用紙投票・記名投票・無記名投票・公開投票・秘密投票・任意投票・強制投票がある。日本では、用紙投票・無記名投票・秘密投票・任意投票が採用されている。
Article 47

 Electoral districts, method of voting and other matters pertaining to the method of election of election of members of both Houses shall be fixed by law.
第48条

 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
日本では、議員が同時に衆議院と参議院の議員になることはできない。これは、厳格な二院制を採用しているためである。

もし、どちらか一方の議員がもう一方の議員となったときは、先の議院の退職者となる(国会法第108条)。
Article 48

 No person shall be permitted to be a member of both Houses simultaneously.
第49条

 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
本条は、国会議員が職務に専念するためには、相応の経済的裏づけが必要であるという意図に基づいて置かれた規定である。

条文中の法律とは、具体的には以下のような法律のことである。
法律名 条文 内容
国会法 第35条 議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける。
第36条 議員は、別に定めるところにより、退職金を受けることができる。
第38条 議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 第1条 各議院の議長は二百十七万五千円を、副議長は百五十八万八千円を、議員は百二十九万七千円を、それぞれ歳費月額として受ける。
第2条 議長及び副議長は、その選挙された当月分から歳費を受ける。議長又は副議長に選挙された議員は、その選挙された前月分までの歳費を受ける。
第3条 議員は、その任期が開始する当月分から歳費を受ける。ただし、再選挙又は補欠選挙により議員となつた者は、その選挙の行われた当月分から、更正決定又は繰上補充により当選人と定められた議員は、その当選の確定した当月分からこれを受ける。
※国会議員は重要な公務に携わるため、一般職の国家公務員の最高の給与額より多い歳費を受け取ると規定している。
※国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律は、第13条まであり、国会議員の歳費等について詳しく規定している。
※職業政治家を防ぐため、報酬はゼロにしたほうが良いという意見も多い。
Article 49

 Members of both Houses shall receive appropriate annual payment from the national treasury in accordance with law.
第50条

 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
本条は、いわゆる国会議員の不逮捕特権についての規定である。国民の代表である国会議員の登院を妨げて発言を封じようとするような反議会主義的・反民主主義的な策動を防ぐための規定である。

ただし、国会議員は国会の会期中であれば、何をしても絶対に逮捕されないというわけではなく、逮捕される場合は二つある。
その1 院外における現行犯罪を犯した場合
その2 その議員の逮捕を議院が許諾した場合
※その2の、議員の逮捕を議院が許諾した場合については、憲法にも国会法にも明確な規定がない。
※その2の、議員の逮捕を議院が許諾した場合について、昭和29年2月23日の有田二郎議員の逮捕の要求に対して、衆議院が3月3日まで期限を切って逮捕を許諾するということがあり、期限付き逮捕許諾は法律的に有効かどうかが問題となったことがある。3月6日、東京地方裁判所は逮捕に期限をつけるのは無効であると判断した。


本条の後半部分の会期前に逮捕された議員の釈放については、20人以上の議員が連名で、理由をつけて、その議院の議長に提出して行う(国会法第34条の3)。


本条に関係する条文は以下である。
国会法 内容
第33条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第34条 各議院の議員の逮捕につきその院の許諾を求めるには、内閣は、所轄裁判所又は裁判官が令状を発する前に内閣へ提出した要求書の受理後速かに、その要求書の写を添えて、これを求めなければならない。
第34条の2 @ 内閣は、会期前に逮捕された議員があるときは、会期の始めに、その議員の属する議院の議長に、令状の写を添えてその氏名を通知しなければならない。

A 内閣は、会期前に逮捕された議員について、会期中に勾留期間の延長の裁判があつたときは、その議員の属する議院の議長にその旨を通知しなければならない。
第34条の3 議員が、会期前に逮捕された議員の釈放の要求を発議するには、議員20人以上の連名で、その理由を附した要求書をその院の議長に提出しなければならない。
Article 50

 Except in cases provided by law, members of both Houses shall be exempt from apprehension while the Diet is in session, and any members apprehended before the opening of the session shall be freed during the term of the session upon demand of the House.
第51条

 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
本条は、議員の免責特権についての規定である。両議院の議員は、議員内でどのような発言(演説、討論、表決)をしても、議院外で責任を問われることはない。しかし、議院内においては、免責特権はないため、当然法律上の責任を負う。

議院 発言の免責特権 説明
有り 責任を負わない
無し 責任を負う
※議院外では免責特権があるが、議院が無責任であっていいというわけではなく、議院外の圧力に屈せず自由な発言ができるようにするためである。
※議院外での免責特権については、議員が選挙時の公約を破るなど、選挙民や国民との遊離をもたらす原因になるとして、批判する意見もある。


議員の発言には、発案権、質問権、表決権がある。
発案権 衆議院 参議院
発案権 通常 議員20人以上の賛成 議員10人以上の賛成
議案の修正動議
発案権 予算を伴う場合 議員50人以上の賛成 議員20人以上の賛成
議案の修正動議
※国会法第56条〜第57条の3に規定されている。


質問権 議員 議長・内閣
順序 質問主意書を作成する

議長に提出する

議長の承認を得る

質問する
質問主意書の提出を受ける

承認する

質問主意書を内閣に送る

7日以内に答弁する(内閣)
通常は、上記の順序に従うが、事が緊急を要する場合は、質問主意書を作成せずに、議院の議決により、口頭質問をすることができる。
※国会法第74条から第76条に規定されている。
※質問とは、議員が内閣に対して行うことである。
※議長の承認が得られなかった場合、議員の要求があれば、会議録に掲載しなければならない。
※内閣は、7日以内に答弁できない場合は、その理由と答弁できる日時を示さなければならない。


議員が行った表決は、出席議員の5分の1以上の要求があれば、会議録に記載しなければならない(第57条)。表決方法には、起立・無記名・記名などの方法がある。

また、会議は原則として公開されるが、出席議員の3分の2以上の賛成があれば、秘密会にすることができる(第57条)。
Article 51

 Members of both Houses shall not be held liable outside the House for speeches, debates or votes cast inside the House.
第52条

 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
日本の国会は、常時活動しているわけではなく、一定の限られた期間だけ活動能力をもつ。以下の種類がある。
名前 国会法 召集者 会期 会期の
延長
時期
通常
国会
(常会)
第1条
第2条
第10条
第12条
第13条
天皇 150日 1回
まで
1月中
臨時
国会
第2条の3
第11条
第12条
第13条
天皇 規定
なし
2回
まで
必要に
応じて
特別
国会
第2条の2
第11条
第12条
第13条
天皇 規定
なし
2回
まで
総選挙後
30日以内
※国会の会期は、召集日から起算される(国会法第14条)。
※通常国会は、毎年1月中に、10日前に公布される召集詔書により召集される(国会法第1条、第2条)。会期は150日であるが、この間に議員の任期が満了すれば、その時に会期は終わる(国会法第10条)。
※会期は両議院一致での議決で延長することができる(不一致の場合は、衆議院の議決で決める)。
※両議院一致の議決により、休会することができる(国会法第15条)。
※召集は、内閣の助言と承認により天皇が行う(憲法第7条第2号)。ただし、召集を決定するのは内閣などである。
※国会は、各会期ごとに独立である。そのため、会期が終了になると、会期中に議決に至らなかった議事は全て打ち切りとなる(これを、会期不継続の原則という)。ただし、各議院の議決で特に付託された議案及び懲罰事犯の件については、審議継続する(国会法第68条)。
Article 52

 An ordinary session of the Diet shall be convoked once per year.
第53条

 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
臨時会(臨時国会)は、臨時の必要に応じて召集される国会のことであり、活動能力は常会と同じである。

名前 説明
召集 ・内閣が決定する場合(本条)

・いずれかの議院の総議員の4分の1以上の議員の連名による要求する場合(本条、国会法第3条)

・衆議院議員の任期満了による総選挙において、任期の始まる日から30日以内に開かれる場合(国会法第2条の3)

・参議院議員の通常選挙において、任期の始まる日から30日以内に開かれる場合(国会法第2条の3)
招集者 天皇
召集方法 常会と同じである。ただし、召集詔書の公布日について規定がない。
会期と会期の延長 両議院の議決により決まる(国会法第11条、第13条)。ただし、衆議院優越の原則がある。
※4分の1以上の議員で臨時会の召集が要求された場合、内閣はこの要求にこたえる義務がある。
Article 53

 The Cabinet may determine to convoke extraordinary sessions of the Diet. When a quarter or more of the total members of either House makes the demand, the Cabinet must determine on such convocation.
第54条

 @ 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

 A 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

 B 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
本条をまとめると、以下になる。

経過 説明
衆議院解散の原因が生じる 解散の決定原因には、以下のものがある。
・内閣独自の判断である場合
・衆議院が内閣不信任の決議をした場合
衆議院解散 天皇は、内閣の助言と承認により衆議院を解散する。

衆議院が解散された場合、参議院は同時に閉会となる。もし、この時に、国会の活動が必要な緊急事態が発生した場合、内閣は参議院の緊急集会を開くことができる。緊急集会でとられた措置は、臨時的なものであるため、総選挙後に開かれた特別国会で10日以内に衆議院の同意が必要であり、同意が得られなければ無効となる(この場合の無効は、将来効である)。
↓ 40日以内
衆議院議員総選挙 総選挙が行われる日は、衆議院解散日から40日以内である。
↓ 30日以内
特別国会が召集される この特別国会は、新内閣総理大臣の指名を主要目的としている。特別国会が、常会開会の時期と重なる場合は、常会とあわせて召集されることになる(国会法第2条の2)。
Article 54

1) When the House of Representatives is dissolved, there must be a general election of members of the House of Representatives within forty (40) days from the date of dissolution, and the Diet must be convoked within thirty (30) days from the date of the election.

2) When the House of Representatives is dissolved, the House of Councillors is closed at the same time. However, the Cabinet may in time of national emergency convoke the House of Councillors in emergency session.

3) Measures taken at such session as mentioned in the proviso of the preceding paragraph shall be provisional and shall become null and void unless agreed to by the House of Representatives within a period ot ten (10) days after the opening of the next session of the Diet.
第55条

 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
議員の資格や選挙についての裁判には、以下のようなものがある。

・本条による議員の資格に関する裁判
・選挙訴訟
・当選訴訟
・選挙犯罪による当選無効の訴訟


この議員の資格とは、公職選挙法に規定されている。この資格に関する裁判だけは、裁判所で行うのではなく、議院で行われる(政治主義)。逆に、その他の選挙違反などは全て裁判所で行われる(法律主義)。

どのように裁判するかは、国会法に規定されている。以下を参照。
国会法 条文
第111条 @ 各議院において、その議員の資格につき争訟があるときは、委員会の審査を経た後これを議決する。

A 前項の争訟は、その院の議員から文書でこれを議長に提起しなければならない。
第112条 @ 資格争訟を提起された議員は、2人以内の弁護人を依頼することができる。

A 前項の弁護人の中1人の費用は、国費でこれを支弁する。
第113条 議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。但し、自己の資格争訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない。


国会法第113条に規定されているように、議員は資格がないことが証明されるまで、議院において他の議員と同じ地位および権能を持つ。

議員の資格なしという決定により、議員を辞めさせる場合には、出席議員の3分の2以上の賛成が必要である。

もし、当該議員がこの議決に不服の場合、さらに普通の司法裁判所に出訴することはできないと考えられている。それは、資格に関する裁判は、憲法が自律権として議院に与えた特別の権限であり、裁判所法第3条第1項が規定する「日本国憲法に特別の定めのある場合」に該当するためである。
Article 55

 Each House shall judge disputes related to qualifications of its members. However, in order to deny a sent to any member, it is necessary to pass a resolution by a majority of two-thirds or more of the members present.
第56条

 @ 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。

 A 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
議会は、常に全員が同時に集まり、審議することは、議員それぞれの事情などがあり困難である。だらかといって、議会に集まったほんの小数の議員だけで、何かが決まるというのも問題である。

そこで、議会では定足数(何かをするために必要な一定の人数のこと。)というのが定められている。本条において、定足数は、総議員の3分の1以上の出席とされている。また、議会以外の定足数については、以下の表を参照。
名前 条文 定足数
議会 憲法第56条 3分の1以上
両院協議会 国会法第91条 3分の2以上
委員会 国会法第49条 2分の1以上
※定足数を欠く場合は、無効となるはずである。しかし、その効力は、その議院のみが認定できるため、その議院が効力があると認めれば、その議院の有効な議決となる。つまり、議院の定足数の問題は裁判所の審査権も及ばないということである(議院自律の原則)。


議決の決定は、出席議員の過半数決制である。ただし、いくつかの例外もある。
条文 内容
原則 本条 議会の議決は、出席議員の過半数以上の賛成が必要である。
例外 第55条 議員の資格争訟をする場合
第57条第1項 秘密会を開く場合
第58条第2項 議員の除名をする場合
第59条第2項 参議院で否決された法律案を、
衆議院で再可決する場合
第96条第1項 憲法改正の発議を行う場合
※例外の場合は、3分の2以上の賛成が必要である。
Article 56

1) Business cannot be transacted in either House unless one-third or more of total membership is present.

2) All matters shall be decided, in each House, by a majority of those present , except as elsewhere provided in the Constitution, and in case of a tie, the presiding officer shall decide the issue.
第57条

 @ 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

 A 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

 B 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
両議院の会議は、原則として公開される。公開とは、国会における傍聴の自由が国民に保障され、国会と国民の媒介の役目を果たす報道の自由が確保されることなどである。国会の活動は、国民の前に明らかにされるほうが望ましいためである。

ただし、プライバシーの保護や機密を要する国際関係の議事など何らかの理由により、傍聴・報道の規制が必要な場合は、出席議員の3分の2以上の多数の議決により、秘密会にすることができる。


本条をまとめると、以下になる。
・両議院の会議は、原則、公開される。
・出席議員の3分の2以上の多数の議決があれば、秘密会とすることができる。ただし、秘密会の記録は公表され、一般に頒布される(特に秘密にしなければならないものは別である)。
・会議の記録を保存しなければならない。
・出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。


なお、委員会などについては、以下を参照。
名前 条文
両議院の会議 本条 @ 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

A 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。

B 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
両院協議会 国会法第97条 両院協議会は、傍聴を許さない。
委員会 国会法第52条 @ 委員会は、議員の外傍聴を許さない。但し、報道の任務にあたる者その他の者で委員長の許可を得たものについては、この限りでない。

A 委員会は、その決議により秘密会とすることができる。

B 委員長は、秩序保持のため、傍聴人の退場を命ずることができる。
※両院協議会は、非公開ということである。
※委員会は、報道関係者などは、傍聴できるということである。
Article 57

1) Deliberation in each House shall be public. However, a secret meeting may be held where a majority of two-thirds or more of those members present passes a resolution therefor.

2) Each House shall keep a record of proceedings. This record shall be published and given general circulation, excepting such parts of proceedings of secret session as may be deemed to require secrecy.

3) Upon demand of one-fifth or more of the members present, votes of the members on any matter shall be recorded in the minutes.
第58条

 @ 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

 A 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
本条の役員とは、以下の者のことである。
名前 条文 議員資格 選任
議長 国会法
第16条
から
第32条
有り 選挙で決める
副議長
仮議長 議長が議員に
諮って指名する
常任委員長
事務総長 無し
※議長と副議長は党籍を離れるのが慣行である。
※これらの役員は、衆議院と参議院のどちらにも必要である。


議員規則とは、それぞれの議院が、会議の進め方や決め方について、憲法や法律の範囲内で、自主的に制定する法である。具体的には、衆議院規則、参議院規則、参議院緊急集会規則などがある。この議院規則は議院内の法であるが、議院外の人(国務大臣、公述人、傍聴人など)も、議院内であれば、適用を受ける。

懲罰とは、議院内の秩序を維持するために、議員に科せられる特別の罰則のことである。これは、一般国民に対する刑罰とはちがい、公務員に対する懲戒と同じである。懲罰の種類は、以下を参照。
条文 名前
国会法
第122条
公開議場における戒告
公開議場における陳謝
一定期間の登院停止
除名
※懲罰の手続きは、議長の意見、または、議員(衆議院は40人以上、参議院は20人以上)の賛成による懲罰の動議により、懲罰委員会にかけた後、本会議で議決されたのち、これを宣告する(国会法第121条)。
※除名は、重罰であるため、出席議員の3分の2以上の賛成が必要である(本条)。
※両議院は、除名された議員で再び当選した者を拒むことができない(国会法第123条)。
※懲罰を受けた議員がこれを不服としても、司法裁判所に出訴することはできない。
Article 58

1) Each House shall select its own president and other officials.

2) Each House shall establish its rules pertaining to meetings, proceedings and internal discipline, and may punish members for disorderly conduct. However, in order to expel a member, a majority of two-thirds or more of those members present must pass a resolution thereon.
第59条

 @ 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

 A 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

 B 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

 C 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
国会は、唯一の立法機関である。ただし、例外もある。以下の表を参照。
名前 条文 説明
原則 本条第1項 国会は、唯一の立法機関である。
例外 第58条第2項 両議院による規則制定。
第73条第6号 内閣による政令制定。
第77条第1項 最高裁判所による規則制定。
第94条 地方公共団体による条例制定。
※法律は、国民の代表機関である国会で議決されただけで確定した内容をもった法律として成立する。
※法律原案を議院の審議に付することを発議という。これは、議員や内閣が行う。
※大日本帝国憲法では、帝国議会は天皇の立法大権に対する協賛機関であった(大日本帝国憲法第5条)。そのため、法律が成立するためには、帝国議会の議決以外にも、天皇の裁可が必要であった(大日本帝国憲法第6条)。


法律が成立するには、以下の要件が必要である。
名前 条文 説明
原則 本条第1項 衆議院と参議院で可決されて成立する。
例外 本条第2項 参議院で否決された場合において、衆議院により再可決されて成立する。
第54条第2項、第3項 参議院の緊急集会において可決されて成立する。
※参議院の緊急集会において可決された法律は、臨時のものである。そのため、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がなければ、無効となる。


両議院において、可決されなかった場合については、以下の表を参照。
議院の審議
衆議院で可決
参議院で可決 参議院で否決 参議院で否決、
または、
参議院で60日以内に
議決なし
両院協議会 衆議院で、
3分の2以上の
多数で再可決
意見一致 意見不一致
成立
※予算とは違い、両院協議会は必ず開かなければならないというわけではない(本条第3項、国会法第84条)。


本条の、法律の制定は、衆議院優越の原則の一つである。その他などについては、以下の表を参照。
条文 説明
第59条 法律案
第60条 予算
第61条 条約
第67条 首相指名
※これら以外には、臨時国会と特別国会の会期の決定・延長の場合などがある。
Article 59

1) A bill becomes a law on passage by both Houses, except as otherwise provided by the Constitution.

2) A bill which is passed by the House of Representatives, and upon which the House of Councillors makes a decision different from that of the House of Representatives, become a law when passed a second time by the House of Representatives by a majority of two-thirds or more of the members present.

3) The provision of the preceding paragraph does not preclude the House of Representatives from calling for the meeting of a joint committee of both Houses, provided for by law.

4) Failure by the House of Councillors to take final action within sixty (60) days after receipt of a bill passed by the House of Representatives, time in recess excepted, may be determined by the House of Reperesentatives to constitute a rejection of the said bill by the House of Councillors.
第60条

 @ 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

 A 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
国の予算は、国民の負担によるものであるため、どこにどれほどのお金が使われているのかは、国民に最も深い利害関係をもつ。

予算は、まず、衆議院で審議されなければならない。これを、衆議院の予算先議権という(衆議院優越の原則の一つである)。これは、国会の中でも、衆議院が、より国民の政治意識に近いと見られているためである。


予算が成立するまでの過程は、以下を参照。
衆議院で予算審議
衆議院で可決
参議院で可決 参議院で否決 参議院で30日以内に、
議決なし
両院協議会
意見一致 意見不一致
成立
※両院協議会は、必ず開かなければならない。
Article 60

1) The budget must first be submitted to the House of Representatives.

2) Upon consideration of the budget, when the House of Councillors makes a decision different from that of the House of Representatives, and when no agreement can be reached even through a joint committee of both Houses, provided for by law, or in the case of failure by the House of Councillors to take final action within thirty (30) days, the period of recess excluded, after the receipt of the budget passed by the House of Representatives, the decision of the House of Representatives shall be the decision of the Diet.
第61条

 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
条約は、内閣によって締結される(第73条)。ただし、国会の承認も必要である。この国会による承認は、条約の締結前か、場合によっては締結後にしなければならない(第73条第3号)。また、条約は天皇が公布する(第7条)

つまり、条約成立には、締結と承認という二重の手続きが必要ということである。

国会の承認について、両議院で意見が一致しない場合は、第60条第2項の規定が準用される。つまり、衆議院の議決が優越する。

行為 条文 行為
締結 第73条 内閣
承認 第61条 国会
公布 第7条 天皇
※条約の成立=締結+承認


もし、内閣が条約を締結し、その後に、国会の承認を得ようとして得られなかった場合は、憲法上重大な問題が生じる。以下のようなことと矛盾することになる。
・自国のことのみに専念してはならない(前文)
・国会の承認(本条)
・日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする(第98条)
・国際法と国内法との優劣問題

現在においては、国内法(つまり憲法)優越説のほうがやや強いと言われている。この説にたてば、国会の承認がない条約は無効とすべきである。
Article 61

 The second paragraph of the preceding article applies also to the Diet approval required for the conclusion of treaties.
第62条

 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
本条は、両議院の国政調査権(10年おきに行われる統計調査である国勢調査のことではない。)についての規定である。

国政調査権とは、国の政治について調査を行う議院に与えられた権能のことである。必要であれば、証人を呼び、証言させ、記録書類の提出を要求することができる。

本条で問題となるが、調査の対象となる国政が、どこからどこまでを言うのかということである。国政とは、広く解釈すれば、国家の行為のことで行政も司法も含むことになる。しかし、憲法では、司法権の独立が規定されている(第76条)ため、国政調査権と裁判権が衝突するような事態も考えられる(浦和事件などを参照。)。

現在の通説では、国政調査権は、原則として裁判作用には介入できないとされている。
Article 62

 Each House may conduct investigations in relation to government, and may demand the presence and testimony of witnesses, and the production of records.
第63条

 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
内閣は、国会に対して政治責任を負っている。そのため、総理大臣やその他の大臣は、議席を持っていない議院でも、いつでも、議院に出席し発言することができる(総理大臣は常に両議院のどちらかの議員である。しかし、その他の大臣はどちらの議院の議員でもない場合がある。)。

国会は、国権の最高機関であるため、つねに政府の見解をただし、政治をコントロールできなければならない。そのため、国会は、総理大臣やその他の大臣に対して、答弁や説明のために出席するよう求めることができる。出席を求められた総理大臣やその他の大臣は、出席する義務を負う。

本条の規定により、出席する者は、出席するだけではなく、求められれば発言もしなければならない。国会から出席や発言を求められた場合、これを拒否したときについて、法律による罰則などは規定されていないが、国会の最高機関性、議院内閣制度などからみて、許されないことである。


国会に出席できる者は、国会法にも規定されており、内閣総理大臣・その他の大臣・内閣により任命された政府委員とされている(国会法第70条、第71条)。委員会には、会計検査院長・検査官・最高裁判所長官またはその代理者も、出席し発言することができる(国会法第72条)。


国務大臣や政府委員が議院に出席して発言することを、議院が拒否することは原則としてできない。ただし、秘密会や特定の大臣の職務に関係ない会議においては、その大臣の出席を拒否することができると考えられている。
Article 63

 The Prime Minister and other Ministers of state may, at anytime, appear in either House for the purpose of speaking on bills, regardless of whether they are members of the House or not. They must appear when their presence is required in order to give answers or explanations.
第64条

 @ 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

 A 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
裁判官は、裁判権の独立(第76条)のため、強い身分保障を受けている(第78条)。

しかし、裁判官が、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒されると、されている(裁判所法第49条)。

そして裁判官が、罪状がより重く、職務上の義務の著しい違反または著しい職務怠慢、裁判官としての品位を著しく辱める行状があったときは、司法機関ではない国会に弾劾裁判所が設置され、国会議員が弾劾裁判官となり、この弾劾裁判所で罷免されることとなる(弾劾裁判所は国会に設置されるが、国会の機関ではなく、憲法上の特別な機関とされている。そのため、国会が閉会されているときでも機能する。)。

本条第1項の訴追とは、裁判官を罷免するための裁判を求める行為のことである。この訴追を行う機関として、訴追委員会を設けている(国会法第125条から第129条)。この訴追委員会は、両議院から選ばれた同数の訴追委員により組織される(各10人)。

弾劾裁判の手続きなどについては、裁判官弾劾法という法律に詳しく規定されている。弾劾裁判所の裁判員は、両議院から同数の議員が選ばれる(国会法と裁判官弾劾法では、各7人とされている)。任期は、議員の任期と同じである(裁判官弾劾法第16条)。

裁判により罷免とされた裁判官は、当然その職を失うことになる(裁判官弾劾法第37条)。
Article 64

1) The Diet shall set up an impeachment court from among the members of both Houses for the purpose of trying those judges against whom removal proceedings have been instituted.

2) Matters relating to impeachment shall be provided by law.
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