憲法 条文 | 憲法 解説 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第6章 司法(Chapter 6:) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第76条 @ すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。 A 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。 B すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。 |
本条は、司法に関する諸規定の総括的な条文である。第1項において司法権は裁判所に属するということ、第2項において裁判所の機構の大枠、第3項において裁判官の職権の独立についてが規定されている。 第1項の、司法権は・・・裁判所に属するとは、国会が唯一の立法機関であること(第41条)、行政権は内閣に属する(第65条)という規定とともに、三権分立についての規定である。第1項の意味は、司法権は全て裁判所に属するものであり、裁判所以外の機関が司法権を行使することはできないということである。逆に、裁判所は司法権しか行使することはできないということである。 ただし、国会議員の資格に関する裁判や(第55条)、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する弾劾裁判所の権限(第64条)など、若干の例外がある。 司法権とは、具体的な争訟つまり具体的な法律上の紛争に法律を適用し、それを解決する国家の公権力作用のことである。 最高裁判所は東京にあり(裁判所法第6条)、長官1人とその他の判事14人の合計15人で構成されている。全員で構成される大法廷と5名の判事で構成される3つの小法廷からなる。法令等の合憲性について判断する場合と従来の判例を変更する場合は、大法廷で行わなければならない(裁判所法第10条)。 下級裁判所の設置については、裁判所法に規定されている。この法律では下級裁判所として、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所が設けられている。さらに、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律という法律により、裁判所数・設置場所・管轄区域が規定されている。 日本では、三審制が採用されている。これは、事件当事者が裁判所の出した判決・決定に不服がある場合、上級審に控訴または上告をすることによって、合計3回まで異なった審級の裁判所の判断を受けることができる制度である。原則的に、第一審は地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所が担当し、控訴審(第二審)は高等裁判所が担当し、上告審(第三審、最終審)は最高裁判所が担当する。ただし、公職選挙法に基づく選挙の無効についての裁判や、刑法の内乱罪などは高等裁判所が第一審として事件を審理し、最高裁判所が最終審として裁判を行うなど、若干の例外がある。
このように日本では、最高裁判所を頂点とするピラミッド型の裁判所機構を持つが、最高裁判所と下級裁判所との間に、職権行使の上で指揮命令関係があるわけではない。下級裁判所は、終審たる最高裁判所の前審裁判所というだけで、職務上はそれぞれ完全に独立した地位が認められている。しかし、判決については、裁判所法第4条に、「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。 」と規定されており、最高裁判所の判決によりその他の裁判所の判決が退けられることがある。 特別裁判所とは、最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所以外の裁判所のことである。特別な種類の事件または特別な身分を持つ者の事件だけを扱う裁判所のことである。戦前の軍法会議、皇室裁判所、行政裁判所などのことである。現在の憲法では、特別裁判所の設置は認められていない。 特別裁判所が認められていないのは、戦力の不保持(第9条)、法の下の平等(第14条)、裁判所による法解釈の統一性を確保するためなどの理由によるものである。 特定の種類の事件の裁判のみを管轄する裁判所(例えば、家事審判や少年審判事件のみを扱う家庭裁判所など)であっても、通常の裁判所への上訴が許されており、最高裁判所の前審裁判所として機能する場合は、特別裁判所には当たらない。 第3項は、司法権独立の原則についての規定である。良心とは、裁判官個人の主観的な思想・世界観・信念・信条を意味するのではなく、裁判官としての職務を公平無私に行わなければならないとする心(裁判官としてもつべき客観的良心)のことである。つまり、第19条の良心とは違うということである。 |
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Article 76 1) The whole judicial power is vested in a Supreme Court and in such inferior courts as are established by law. 2) No extraordinary tribunal shall be established, nor shall any organ or agency of the Executive be given final judicial power. 3) All judges shall be independent in the exercise of their conscience and shall be bound only by this Constitution and the laws. |
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第77条 @ 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。 A 検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。 B 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。 |
本条は、最高裁判所の規則制定権についての規定である。これは、裁判所の独立性と専門性を配慮・尊重するためである。 司法権に一定の範囲・事項について自主的・自律的な処理権限を付与するのは、国会における議院の自律(第58条)や、内閣の政令制定権(第73条)と同じ趣旨である。 最高裁判所の規則制定権の範囲は、以下である。
なお、規則は、最高裁判所の裁判官会議の議決によって制定される(裁判所法第12条)。そして、官報で公布される(裁判所公文方式規則第2条)。 |
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Article 77 1) The Supreme Court is vested with the rule-making power under which it determines the rules of procedure and of practice, and of matters relating to attorneys, the internal discipline of the courts and the administration of judicial affairs. 2) Public procurators shall be subject to the rule-making power of the Supreme Court. 3) The Supreme Court may delegate the power to make rules for inferior courts to such courts. |
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第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。 |
本条は、裁判官の身分保障についての規定であり、裁判官の身分関係全般を規律する指導理念である。 本条の裁判官とは、以下の者のことであり、特別職の国会公務員のことである(裁判所法第5条、国家公務員法第2条第3項第13号)。 ・最高裁判所長官 ・最高裁判所判事 ・高等裁判所長官 ・判事 ・判事補 ・簡易裁判所判事 裁判官が罷免される場合は、以下の二つである。
裁判官の懲戒処分とは、裁判官の服務規律を維持するためその非行に対して科される処分のことである。この懲戒処分は、司法権独立の確保のために、裁判所自身によって、裁判手続きにより行われなければならない。裁判官分限法第2条には、「裁判官の懲戒は、戒告又は一万円以下の過料とする。」と規定されている。 |
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Article 78 Judges shall not be removed except by public impeachment unless judicially declared mentally or physically incompetent to perform official duties. No disciplinary action against judges shall be administered by any executive organ or agency. |
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第79条 @ 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。 A 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 B 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。 C 審査に関する事項は、法律でこれを定める。 D 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。 E 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。 |
本条は、最高裁判所の構成や裁判官についての規定である。最高裁判所については、本条以外にも、第6条第2項においても規定がある。 最高裁判所の構成は、以下である。
最高裁判所の裁判官は、以下のような形で、国民の審査を受ける。
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Article 79 1) The Supreme Court shall consist of a Chief Judge and such number of judges as may be determined by law; all such judges excepting the Chief Judge shall be appointed by the Cabinet. 2) The appointment of the judges of the Supreme Court shall be reviewed by the people at the first general election of members of the House of Representatives following their appointment, and shall be reviewed again at the first general election of members of the House of Representatives after a lapse of ten (10) years, and in the same manner thereafter. 3) In cases mentioned in the foregoing paragraph, when the majority of the voters favors the dismissal of a judge, he shall be dismissed. 4) Matters pertaining to review shall be prescribed by law. 5) The judges of the Supreme Court shall be retired upon the attainment of the age as fixed by law. 6) All such judges shall receive, at regular stated intervals, adequate compensation which shall not be decreased during their terms of office. |
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第80条 @ 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。 A 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。 |
本条では、下級裁判所の裁判官の任期、定年、報酬について規定している。
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Article 80 1) The judges of the inferior courts shall be appointed by the Cabinet from a list of persons nominated by the Supreme Court. All such judges shall hold office for a term of ten (10) years with privilege of reappointment, provided that they shall be retired upon the attainment of the age as fixed by law. 2) The judges of the inferior courts shall receive, at regular stated intervals, adequate compensation which shall not be decreased during their terms of office. |
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第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。 |
本条は、最高裁判所に違憲審査の権限を付与した条文である。 これは、国民の基本的人権を保障するためである。人権を侵害するような法律等が制定された場合、それを違憲であるとして排除する権限がどこにもなければ、憲法が第11条・第13条・第97条等で保障した人権保障も絵に描いた餅に過ぎなくなってしまう。 また、違憲審査の権限は、憲法秩序を維持するために行われる。憲法は国の最高法規であり、憲法に違反する一切の法令、国家の行為は効力を持たない。これを具体的に担保するために違憲審査の制度がある。 本条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であると規定しているが、最高裁判所以外の下級裁判所にも違憲審査権は認められている。このことは、民事訴訟法第312条や刑事訴訟法第405条、最高裁判所の判例(昭和25年2月1日)などから明らかである。実際、下級裁判所が違憲判決を下した例は多い。 |
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Article 81 The Supreme Court is the court of last resort with power to determine the constitutionality of any law, order, regulation or official act. |
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第82条 @ 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。 A 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。 |
本条は、裁判が公開の法廷において行われることにより、国民の監視下におき、裁判の公正な運用を期するための規定である。同じような規定は、第32条と第37条においてもされている。 言葉の意味などは、以下である。
実際的に、裁判の公開には、以下のような制限がある。
本条をまとめると、以下になる。
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Article 82 1) Trials shall be conducted and judgement declared publicly. 2) Where a court unanimously determines publicity to be dangerous to public order or morals, a trial may be conducted privately, but trials of political offenses, offenses involving the press or cases wherein the rights of people as guaranteed in Chapter V of this Constitution are in question shall always be conducted publicly. |
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