労働基準法 条文 労働基準法 解説
第12章 雑則
第105の2条 【国の援助義務】

 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、この法律の目的を達成するために、労働者及び使用者に対して資料の提供その他必要な援助をしなければならない。
資料の提供や援助などは、主に、パンフレットやリーフレットのような形で行われており、監督機関によるサービス業務である。そのため、半強制的な指導にならないようにしている(昭和27年9月20日基発675号)。
第105の3条 【】

削除
本条は、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」という名前の法律に規定されたため、削除された。労働者と使用者間の労働条件に関する紛争の解決について、都道府県労働局長の助言または指導ができることについて規定した条文であった。
第106条 【法令等の周知義務】

 @ 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

 A 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
本条は、使用者に対して、知らせる義務を罰則付きで規定した条文である(逆に、労働者は知る権利がある)。労働者はどんなことが違法であるのかを理解するためには、労働基準法の内容を知らなくてはならないためである。

本条第1項の内容をまとめると、以下になる。
条文 内容
労働基準法と労働基準法に基づいて発する命令の要旨
就業規則
第18条第2項 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。
第24条第1項但し書き ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
第32条の2第1項 用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
第32条の3 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。)
3 清算期間における総労働時間
4 その他厚生労働省令で定める事項
第32条の4第1項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

1 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
3 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)
4 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
5 その他厚生労働省令で定める事項
第32条の5第1項 使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であつて、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第三十二条第二項の規定にかかわらず、一日について十時間まで労働させることができる。
第34条第2項但し書き ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
第36条第1項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
第37条第3項 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
第38条の2第2項 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
第38条の3第1項 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。

1 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
2 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間
3 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
4 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
5 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること。
6 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
第39条第4項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。

1 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
2 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
3 その他厚生労働省令で定める事項
第39条第6項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
第39条第7項但し書き ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第九十九条第一項に定める標準報酬日額に相当する金額又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
第38条の4第1項 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第三号に掲げる時間労働したものとみなす。

1 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)
2 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であつて、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
3 対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間
4 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
5 対象業務に従事する第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
6 使用者は、この項の規定により第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第三号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
7 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
第38条の4第5項 第一項の委員会においてその委員の五分の四以上の多数による議決により第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項及び第二項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、前条第一項並びに次条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する事項について決議が行われた場合における第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項から第三項まで、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、前条第一項並びに次条第四項、第六項及び第七項ただし書の規定の適用については、第三十二条の二第一項中「協定」とあるのは「協定若しくは第三十八条の四第一項に規定する委員会の決議(第百六条第一項を除き、以下「決議」という。)」と、第三十二条の三、第三十二条の四第一項から第三項まで、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第二項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、前条第一項並びに次条第四項、第六項及び第七項ただし書中「協定」とあるのは「協定又は決議」と、第三十二条の四第二項中「同意を得て」とあるのは「同意を得て、又は決議に基づき」と、第三十六条第一項中「届け出た場合」とあるのは「届け出た場合又は決議を行政官庁に届け出た場合」と、「その協定」とあるのは「その協定又は決議」と、同条第三項中「又は労働者の過半数を代表する者」とあるのは「若しくは労働者の過半数を代表する者又は同項の決議をする委員」と、「当該協定」とあるのは「当該協定又は当該決議」と、同条第四項中「又は労働者の過半数を代表する者」とあるのは「若しくは労働者の過半数を代表する者又は同項の決議をする委員」とする。
※上記について、以下のどれかの方法により、使用者は労働者に周知させなければならない。

・常時各作業場の見やすい場所へ掲示
・常時各作業場の見やすい場所へ備え付ける
・書面を交付する
・その他の厚生労働省令で定める方法

なお、作業場とは、事業場内において密接な関連のもとに作業の行われている個々の現場のことで、実際的に周知させることができる場所のことである(昭和23年4月5日基発535号)。

そして、労働基準法施行規則第52条の2では、以下のようにされている。
「法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。

1 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
2 書面を労働者に交付すること。
3 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。」


本条第2項は、労働基準法とそれに基づく命令のうち、寄宿舎に関する規定と寄宿舎規則は、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法により、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならないとした条文である。


本条が規定しているのは以上だが、これ以外にも労働者に周知させなければいけないものがある。
名前 内容
寄宿舎規則 寄宿させるときにも、労働者に示す必要がある(事業附属寄宿舎規定第3条)。
労働安全衛生法、これに基づく命令の要旨 本条と同じ方法で周知させなければならない(労働安全衛生法第101条)。


本条に違反した場合は、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金となる。


もし、使用者が就業規則に違反した者に対して何がしかの罰則を与える場合は、労働者に周知しなければならない(第106条、120条)。判例では、就業規則が拘束力を生じるためには、内容を労働者に周知させなければならないとしている(フジ興産事件)。

ちなみに、労働契約法第7条には、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。」、と規定されている。
第107条 【労働者名簿】

 @ 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

 A 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
本条は、労働者名簿についての規定である。まとめると、以下になる。

名前 条文等 内容
1 本条第1項 氏名
2 生年月日
3 履歴
4 厚生労働省令 性別
5 住所
6 従事する業務の種類
7 雇い入れの年月日
8 退職の年月日、退職の事由
9 死亡の年月日、死亡の原因
※上記に変更があった場合は、すぐに訂正しなければならない(本条第2項)。
※使用者は、各事業場ごとに、労働者名簿を作成しなければならない。

※労働者名簿に記載しなければならない労働者は、日雇い労働者以外の労働基準法適用事業の全労働者である。

※労働基準法第41条により、労働時間や休日などの規定が適用除外される監督・管理の地位にある者も、労働者として労働者名簿に記載しなければならない。

※常時30人未満の労働者を使用する事業においては、6の「従事する業務の種類」を記入する必要はない(労働基準法施行規則第53条)。
第108条 【賃金台帳】

 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を作成しなければならない。

賃金台帳に記入しなければならないことは、以下である(労働基準法施行規則第54条)。
条文 名前
本条 賃金計算の木曽
賃金額
労働基準法施行規則第54条 第1号 氏名
第2号 性別
第3号 賃金計算期間

※日々雇い入れられる者(一箇月を超えて引続き使用される者を除く。)については、第一項第三号は記入するを要しない。
第4号 労働日数
第5号 労働時間数

※第41条各号の一に該当する労働者についてはこれを記入することを要しない。
第6号 第33条若しくは第36条第1項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後10時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時)までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数

※第41条各号の一に該当する労働者についてはこれを記入することを要しない。
第7号 基本給、手当その他賃金の種類毎にその額

※賃金の種類中に通貨以外のもので支払われる賃金がある場合には、その評価総額を記入しなければならない。
第8号 第24条第1項 の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額


なお、新しく民事訴訟法が施行されてからは、性や思想等の差別を立証するために、賃金台帳提出命令を肯定する裁判例が増加している。


本条に違反した場合は、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金となる。
第109条 【記録の保存】

 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。
本条により、保存しなければならない書類と起算日などは、以下である。

名前 起算日 期間
労働者名簿 ・労働者が死亡した日
・労働者の退職日
・労働者の解雇日
起算日
から
3年間
賃金台帳 最後の記入日
雇入に関する書類 ・労働者が死亡した日
・労働者の退職日
・労働者の解雇日
解雇に関する書類
退職に関する書類
災害補償に関する書類 災害補償の終了日
賃金その他労働関係に関する重要 完結日
※これらは、労働基準法施行規則第56条に規定されている。
第110条 【】

削除
本条は、削除された。第104条の2を参照。
第111条 【無料証明】

 労働者及び労働者になろうとする者は、その戸籍に関して戸籍事務を掌る者又はその代理者に対して、無料で証明を請求することができる。使用者が、労働者及び労働者になろうとする者の戸籍に関して証明を請求する場合においても同様である。
本条をまとめると、以下になる。

名前 内容
請求できる者 ・労働者
・労働者になろうとする者
・使用者
請求する相手 ・戸籍事務をつかさどる者
・戸籍事務をつかさどる者の代理者

※労働者の本籍地市町村に限定される
(昭和23年2月25日基発364号)
証明の内容 労働者と労働者になろうとする者の戸籍に関するものに限られる。

戸籍に関する証明とは、戸籍謄本抄本などは含まないし、戸籍記載事項の証明でも労働基準法に関して必要な事項に限られる(昭和22年9月13日基発17号)。寄留籍の記載事項の証明については、無料証明制度は含まれない(昭和23年7月26日基発1069号)。
第112条 【国及び公共団体についての適用】

 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。
労働基準法は、一般職員の国家公務員には、その他の法律の制定に伴い、準用されるだけに過ぎない(国家公務員法一次改正法律附則第3条)。

一方、特定独立行政法人等労働関係法の適用になる国家公務員と地方公務員に対しては、一部の例外を除いて、全面的に適用される(特定独立行政法人等労働関係法第40条、地方公務員法第58条)。
第113条 【命令の制定】

 この法律に基いて発する命令は、その草案について、公聴会で労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者の意見を聴いて、これを制定する。
労働基準法に基づく命令は、労働基準審議会に諮問される。また、これ以外にも、以下の三者の代表の意見も聞いて制定される。

・労働者の代表
・使用者の代表
・公益の代表
第114条 【付加金の支払】

 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。
労働基準法に違反した者は、第13章の罰則が科せられるが、これ以外にも本条の付加金(労働基準法に違反して、支払わなかった金額と同一の金額)を労働者に支払わなければならない場合もある。

本条の制度は、アメリカの公正労働基準法を参考にしたものであり、日本の法律としては珍しいものである。


使用者が付加金を支払わなければならない場合などについては、以下を参照。
名前 説明
付加金の支払いを命じられる場合 条文 内容
第20条 解雇の予告
第26条 休業手当
第37条 時間外、休日及び深夜の割増賃金
第39条第7項 年次有給休暇
手続き 付加金の支払いは、労働者の請求により、裁判所が命じる。そのため、労働者が請求をしなければ、使用者が付加金の支払いを命じられるということはない。
期限 労働者が、付加金の請求をする場合、違反のあったときから2年以内にしなければならない。

違反があったときからであり、違反であることを知ったときではない点に注意しなければならない。
付加金の支払い義務の発生時期 発生時期については、以下の3つがある。

・違反があったとき(違反時説)
・労働者が請求したとき(請求時説)
・裁判所が命じる判決が確定したとき(裁判確定時説)

最高裁では、労働基準法第20条と関連して、判決が確定したときが付加金の支払い義務の発生時期であるとしている。
使用者が付加金の支払いをしなかった場合 使用者が付加金の支払いをしなかった場合、最高裁は、遅延損害金の支払い義務があるとしており、発生時期は裁判が確定した日の翌日としている。

利率は、裁判所の命令により発生する義務であるため、民法の年5&としている(賃金の場合であれば商法の法定利率である年6%である)。
※第37条の時間外労働の場合、判例では、付加金とは、「通所の賃金と割り増し部分の合計についての未払い金」のことであるとしている(セントラル・パーク事件)。
第115条 【時効】

 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
本条は、時効についての規定である。民法にも同じような規定があるため、比較してみると以下のようになる。

名前 条文 内容 時効期間
民法 第174条 賃金債権 1年
第167条 その他の請求権(特別な規定がない限り) 10年
労働基準法 本条 賃金 2年
災害補償
その他の請求権
退職手当 5年
※労働基準法のその他の請求権とは、以下である。

・金品請求権(第23条)
・休業手当請求権(第26条)
・年次有給休暇の賃金請求権(第39条)
・帰郷旅費請求権(第15条、第68条)

※解雇予告手当の請求権については、これを支払わないと解雇の効力が生じないため時効の問題は生じないとしている(昭和27年5月27日基収1906号)。


本条が規定するように、時効はある一定の月日がたつと消滅する。消滅を防ぐためには、時効の中断をしなければならない。しかし、労働基準法には、時効の中断に関する規定は存在しない。そのため、時効の中断については、民法第147条以下によることとなる。
第1節 総則 第144条〜第161条
第2節 取得時効 第162条〜第165条
第3節 消滅時効 第166条〜第174条の2


結局のところ、時効の中断の方法としては、労働者の請求と、使用者がその請求権を承認するというのが、主なものとなる。しかし、労働者の請求は裁判上のものでなければ時効中断の効力は生じないため、使用者の承認が現実的である。

通達等では、以下のようなものがあるが、どれも使用者の承認を厳格にしている。

・勤怠簿・年次有給休暇取得簿に年次有給休暇の取得日数を記載している程度のことは、使用者が承認したことにはならない(昭和24年9月21日基発3000号)

・労働者が年次有給休暇の一部を請求するとき、使用者がその一部の請求を残部のなかの一部であることを承認したと認められる事実のある場合に限り、民法第147条第3号により時効が中断される(昭和23年7月20日基収2483号)。
第115の2条 【経過措置】

 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃するときは、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
本条は、政府が作る経過措置命令の規定である。これにより一方的に作られた命令が多くあった。

昭和63年3月施行の労働基準法改正時に週40時間労働が規定されたが、経過措置命令において常時5人未満の商店などは週54時間としたものがあった。これに対しては、本条の「合理的に必要と判断される範囲内」にあたるのかという疑問がマスコミを中心に出され、廃止された。
第116条 【適用除外】

 @ 第一条から第十一条まで、次項、第百十七条から第百十九条まで及び第百二十一条の規定を除き、この法律は、船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条第一項に規定する船員については、適用しない。

 A この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
本条は、労働基準法の適用を受けない者についての規定である。

第1項をまとめると以下になる。
名前 船員の種類 船員法の条文 労働基準法
適用される 適用されない
船員 船員法の適用を受ける船員 ・第1条第1項 ・第1条から第11条

・第117条から第119条

・第121条
・左記以外
船員法の適用を受けない船員 ・第1条
・第2条
全条文 なし
※船員には、船員法の適用を受ける船員と受けない船員がある。


第2項は、労働基準法は同居の親族のみを使用する事業と家事使用人に対しては適用されないことを規定している。

同居の親族を使用していても、同居の親族以外を一人でも使用すれば適用される。家事使用人とは、家庭で家事一般に従事する者のことである(昭和63年3月14日基発150号)。
トップへ戻る