労働基準法 条文 労働基準法 解説
第13章 罰則
第117条 【1年以上10年以下の懲役、または、20万円以上300万円以下の罰金に処せられる場合】

 第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
第5条は、「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」という規定である。

第5条に違反した者は、1年以上10年以下の懲役、または、20万円以上300万円以下の罰金に処せられる。

当然のことながら、第5条に書かれているようなことを労働者にした場合、その労働者が怪我等をすれば、治療費等は別に支払わなければならない。つまり、本条が規定する懲役や罰金だけで済むのではない。

本条は、労働基準法の中で最も重い罰則である。
第118条 1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる場合

 @ 第六条、第五十六条、第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 A 第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十三条又は第六十四条の二の規定に係る部分に限る。)に違反した者についても前項の例による。
本条をまとめると以下になる。

条文 内容
第6条 就職の世話による利益を得た場合
第56条 15歳未満の児童を労働者として使用した場合
第63条
第64条の2
第70条
18歳未満の者・女性等に坑内労働をさせた場合
職業訓練のため、都道府県労働局長の許可を得て坑内労働させることができるが、使用者が遵守すべき労働基準法施行規則に違反した場合
※これらの規定に違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。
第119条 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる場合

 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 1 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第一項ただし書、第三十七条、第三十九条、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者

 2 第三十三条第二項、第九十六条の二第二項又は第九十六条の三第一項の規定による命令に違反した者

 3 第四十条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者

 4 第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十二条又は第六十四条の三の規定に係る部分に限る。)に違反した者
本条をまとめると以下になる。

本条 条文 内容
第1号 第3条 均等待遇
第4条 男女同一賃金の原則
第16条 賠償予定の禁止
第17条 前借金相殺の禁止
第18条第1項 強制貯金
第19条 解雇制限
第20条 解雇の予告
第22条第4項 退職時等の証明
第32条 労働時間
第34条 休憩
第35条 休日
第36条第1項但し書き 時間外及び休日の労働
第37条 時間外、休日及び深夜の割増賃金
第39条 年次有給休暇
第61条 深夜業
第62条 危険有害業務の就業制限
第64条の3 危険有害業務の就業制限
第65条 産前産後
第66条 産前産後
第67条 育児時間
第72条 職業訓練に関する特例
第75条 療養補償
第76条 休業補償
第77条 障害補償
第79条 遺族補償
第80条 葬祭料
第94条第2項 寄宿舎生活の自治
第96条 寄宿舎の設備及び安全衛生
第104条第2項 監督機関に対する申告
第2号 第33条第2項 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等
第96条の2第2項 監督上の行政措置
第96条の3第1項 監督上の行政措置
第3号 第40条 労働時間及び休憩の特例
第4号 第70条 職業訓練に関する特例
※これらに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。
第120条 30万円以下の罰金に処せられる場合

 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 1 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者

 2 第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第十四条の規定に係る部分に限る。)に違反した者

 3 第九十二条第二項又は第九十六条の三第二項の規定による命令に違反した者

 4 第百一条(第百条第三項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者

 5 第百四条の二の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
本条をまとめると以下になる。

本条 条文 内容
第1号 第14条 契約期間等
第15条第1項、第3項 労働条件の明示
第18条第7項 強制貯金
第22条第1項、第2項、第3項 退職時等の証明
第23条 金品の返還
第24条 賃金の支払
第25条 非常時払
第26条 休業手当
第27条 出来高払制の保障給
第32条の2第2項 労働時間
第32条の5第2項 労働時間
第33条第1項但し書き 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等
第38条の2第3項 時間計算
第57条 年少者の証明書
第58条 未成年者の労働契約
第59条 未成年者の労働契約
第64条 帰郷旅費
第68条 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置
第89条 作成及び届出の義務
第90条第1項 作成の手続
第91条 制裁規定の制限
第95条第1項、第2項 寄宿舎生活の秩序
第96条の2第1項 監督上の行政措置
第105条 労働基準監督官の義務
第106条 法令等の周知義務
第107条 労働者名簿
第108条 賃金台帳
第109条 記録の保存
第2号 第70条 職業訓練に関する特例
第3号 第92条第2項 法令及び労働協約との関係
第96条の3第2項 監督上の行政措置
第4号 第101条 労働基準監督官の権限
第5号 第104条の2 報告等
※これらに違反した場合、30万円以下の罰金に処せられる。
第121条 【労働基準法違反においての処罰者】

 @ この法律の違反行為をした者が、当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても各本条の罰金刑を科する。ただし、事業主(事業主が法人である場合においてはその代表者、事業主が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人(法定代理人が法人であるときは、その代表者)を事業主とする。次項において同じ。)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、この限りでない。

 A 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかつた場合、違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかつた場合又は違反を教唆した場合においては、事業主も行為者として罰する。
本条は2項からなるが、第1項は両罰規定により罰金刑を科される事業主についての規定であり、第2項は行為者として罰せられる事業主についての規定である。

本条を理解するためには、事業主、使用者などを区別しなければならない。

名前 説明
事業主 個人事業 本人
法人 法人。ただし、本条の規定により違反防止義務があるのは、代表者である。
※事業主が、未成年者又は成年被後見人である場合においてはその法定代理人が事業主となる。法定代理人が法人である場合は、法人の代表者が事業主となる。
使用者 使用者とは、「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」と、労働基準法第10条に規定されている。
代理人・使用人・その他の従業者 代理人・使用人・その他の従業者とは、使用者(労働基準法第10条)たる資格を有する者のことである(昭和23年11月9日基収2968号)。また、判例では代理人の部分に、法人の代表者(取締役)も含むとしている(日本衡器工業事件)。


本条 説明
第1項 事業主が罰せられるのは、代理人・使用人・その他の従業者が、事業主のために違反行為をした場合である。


つまり、使用者が労働基準法に違反すれば、使用者も当然罰せられるが、それが事業主のためにしたものであれば、事業主は本条第1項の規定により罰金刑を科せられるということである。

ただし、事業主が違反の防止のために必要な措置をした場合は、罰金刑を科せられることはない(本条第1項但し書き)。


問題となるのが、違反防止のための必要な措置の程度であり、判例によると、以下のようになっている。

・一般的抽象的に労働基準法に違反しないようにと注意したのみでは、足りない(奥谷木工事件)。
・労働基準法に違反しないようという注意書きを各職場の入り口に掲示しただけでは、必要な措置とはいえない(三和電線工業事件)。
・社長回章により各工場に伝達して普及徹底をはかり、各課から1名を選び指導教育をし、女性に対しては宿舎の部屋ごと、男性に対しては休憩所に、労働基準法の一部を掲示した。また、課長会議において、人事課長から説明もさせた。このような場合は、必要な措置をとったといえる(鐘淵紡績事件)。
第2項 事業主を行為者として罰する規定である。罰せられる場合は、以下の三つである。

・違反の計画を知っていたのに必要な措置を講じなかった場合
・違反を知っていたが是正措置を講じなかった場合
・違反を教唆した場合

このような場合は、実際の行為者ではなくても、行為者と同じように、つまり第117条〜第120条に規定する罰則となる。
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