労働基準法 条文 | 労働基準法 解説 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第2章 労働契約 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第13条 【この法律違反の契約】 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。 |
労働基準法は、労働者の生命や健康を守るための最低条件について規定した強行法規である。そのため、この基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その達しない部分については無効となる。 例えば、労働基準法では時間外労働に対しては、2割5分以上の割増賃金を支払わなければならないが、労使間で1割の支払いを約束したとする。これは当然無効となり、使用者は労働基準法に従い最低2割5分の割増賃金を支払わなければならないことになる。 本条は労働契約についてだけ書かれているが、就業規則や労働協約についても、同様である。 |
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第14条 【契約期間等】 @ 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。 1 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約 2 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。) A 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。 B 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。 |
本条は、契約期間についての規定である。 基本的に、労働契約は期間を決める必要はなく、期間の定めのない常用雇用が原則である。しかし、例外的に期間の定めをする場合、それが長期になると強制労働(人身拘束)になるため、1947年の労働基準法制定により、上限を1年とすることになった。そして、1998年の改正で専門的知識労働者の上限が3年になり、2003年の改正で一般労働者については3年、専門的知識労働者と60歳以上の労働者については5年になった。 原則は、期間の定めのない常用雇用であるが、もし期間を定めをする場合は、上限が以下のようになる。上限以下であれば、1ヶ月でも3ヶ月でもかまわない。
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第15条 【労働条件の明示】 @ 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。 A 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。 B 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。 |
使用者は、労働者と労働契約を結ぶときに、以下のことを労働者に明示しなければならない。
使用者が明示した労働契約は、使用者と労働者の双方が守らなければならない。もし、明示された労働条件が事実と違う場合、労働者はすぐにその労働契約を解除することができる(本条第2項)。もし、労働するために住居を変更した労働者が、労働契約解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者は旅費を負担しなければならない(本条第3項)。この場合においての必要な旅費とは、労働者の分だけはなく一緒に移転した家族の分も含まれる(昭和22年9月13日発基7号)。 また、パートタイム労働者については、本条の規定以外にも明示しなければならない事項がある。それらについては、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称、パートタイム労働法)の第6条に規定されている。 |
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第16条 【賠償予定の禁止】 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。 |
本条は、労働者が契約不履行をした場合に備えて、使用者があらかじめ違約金や損害賠償金の設定をすることを禁止する規定である。これは、労働者の足止め防止のためである(労働者が辞めたくても辞められないような状況になることを防止するため。)。 ちなみに、民法では、「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」、という規定がある(民法第420条)。しかし、労働基準法の場合は、禁止されている。 本条に関連する判例には、以下のようなものがある。 ・時計修理の見習いに対して、「途中で辞めた時は、教授料や食費等の損害として1ヶ月5,000円ほど支払うこと」とした労働契約について、違法であり有罪とする(長谷川時計店事件)。 ・日本熔接協会の熔接技量資格検定試験希望の労働者に、「試験の結果によらず、結果がわかった日から1年間は退職しない。もし、この間に退職した場合は、試験のための練習費用等として3万円を支払う」という誓約書を提出させたことについて、無罪とした(藤野金属工業事件)。 上記の判例では、一方が有罪で一方が無罪となっているが、無罪のほうは、希望者に限定していること、費用の計算が合理的な実費であり使用者が肩代わりしていたと考えられること、1年が短期間であることなどが理由である。総合的に考えて労働者に対して雇用関係の継続を強要しているとは考えられない場合は、違法ではないとしている。 今現在も、論争となっているのが、研修(留学等も含む)の後に他の会社に移った場合に研修費用を返還する合意は、違約金と解され、本条に違反するのかどうかという問題である。長谷工コーポレーション事件と野村證券事件は違反しないとされ、富士重工業事件と新日本証券事件は違反するとされた。同様の裁判は多いが、違反し無効であるとする判例のほうが多い。 本条は、労働者が労働契約の不履行時に違約金や損害賠償金を支払うということをあらかじめ決めておくことを禁止する規定である。逆に言えば、そのようなことが起こった後で、損害賠償金等を請求することはできるということである(昭和22年9月13日発基17号)。 なお、本条に違反した場合は、第119条により、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。 |
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第17条 【前借金相殺の禁止】 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。 |
本条は、前条と同じように、労働者の足止め防止のための規定である。使用者が労働者に対して、高い金利でお金を貸し、毎月の賃金から差し引く形で返済させ、労働者が仕事を辞めたくても辞められないといったような事態を防ぐためである。 しかし、労働者がなんらかの避けられない理由で使用者からお金を借りなければならないといったことがあるかもしれず、その場合、使用者は労働者に対して信用貸し(貸し手が借り手を信用して、担保・保証なしで金銭などを貸し付けること。)をしたとする。そして、賃金から返済するといった場合は、本条には違反しない。ただし、この場合、第24条第1項において、手続き等が規定されているため、それに従わなければならない。 本条に関連する判例には、以下がある。 ・契約期間満了時に支給される勤続奨励手当を前貸金の形で月割りで労働者に支給し、中途退職等の場合は支給額の全額を返還しなければならないという約束を労働者と結ぶことは、本条に違反する(東箱根開発事件)。 |
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第18条 【強制貯金】 @ 使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。 A 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。 B 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。 C 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。 D 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。 E 使用者が前項の規定に違反した場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。 F 前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。 |
本条は、強制貯金を禁止する条文である。使用者が、労働者の貯蓄金を受け入れて管理したり、労働者の通帳を保管したりするようなことは、禁止されている。これは、足止め防止のためである。 しかし、貯蓄の自由や貯蓄金返還請求の自由を保障すれば、使用者は労働者からの委託を受けて貯蓄金を管理することができる。これは、一般的には社内預金と呼ばれているもののことである。この社内預金は、なかば強制を伴っていたり、返却されなかったりということが問題化したため、本条や賃金の支払いの確保等に関する法律などにより、労働者の貯蓄金が保護されるように規定が設けられている。 まず、使用者は労働者の貯蓄金を委託を受けて管理する場合、労使協定をしなければならない。そして、これを行政官庁に届け出る必要がある。また、貯蓄金の管理規程を定めて、作業場に備え付けなければならない。貯蓄金が労働者の預金の受け入れである場合は、利子をつけなければならない。この利子の最低利率は厚生労働省令で決められる。 貯蓄金の返還は、保障されていなければならない。中途では払い戻しができないとか、実際に払い戻されるまでには長い期間がかかるなどといったことは無効である。また、貯蓄金の管理を中止しなければならない旨命ぜられた使用者は、すぐに貯蓄金を労働者に返還しなければならない。 |
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第18条の2 【】 削除 |
本条は、労働契約法第16条に移行したため、削除された。 なお、労働契約法第16条は、以下である。 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」 |
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第19条 【解雇制限】 @ 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。 A 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。 |
本条は、人道的見地・男女平等の立場から、解雇が禁止されている期間についての規定である。 期間などについては、以下を参照。
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第20条 【解雇の予告】 @ 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。 A 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。 B 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。 |
労働者を解雇する場合、それが正当な理由に基づく場合であっても、労働者の期待権を守るため、また労働者が次の就職先を探す時間を与えるため、少なくとも30日前には解雇予告をしなければならない。もし、30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。これらをまとめると、以下になる。
本条に違反した解雇があった場合は、以下のようになる。
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第21条 【解雇の予告】 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。 1 日日雇い入れられる者 2 二箇月以内の期間を定めて使用される者 3 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者 4 試の使用期間中の者 |
本条は、期待権(将来一定の事実が発生すれば一定の法律上の利益を受けることができるという期待を内容とする権利)を生じないものとして、解雇する場合に第20条の予告義務が必要ない労働者を規定している。 予告義務が必要ない労働者は、以下である。
本条に関連する判例には、以下がある。 ・日々雇い入れられる者については1ヶ月で解雇し、臨時労働者については期間満了日に解雇し、それぞれ数日後にまた使用した場合、同一事業に使用されているという客観的事実があるため、引き続き使用されたと見て、予告義務が生じる(芳野金属熔接事件)。 |
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第22条 【退職時等の証明】 @ 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。 A 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。 B 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。 C 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。 |
本条は、労働者が再就職をしやすいように、退職時の証明書の発行について規定している。
本条第4項は、ブラックリストの禁止等についての規定である。禁止されていることは、以下を満たした場合についてである。
なお、本条第1項から第3項までに違反すれば、第120条により、30万円の罰金に処せられる。本条第4項に違反すれば、第119条により、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる(第4項のほうが罪が重い)。 |
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第23条 【金品の返還】 @ 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。 A 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。 |
労働者の死亡又は退職の場合、使用者は、権利者の請求があれば7日以内に、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。 労働者の権利に属する金品とは、積立金・保証金・貯蓄金等のことであり、名称の如何を問わない。 未払賃金に対しては、年に14.6%という高利息も支払わなければならない(賃金の支払の確保等に関する法律第6条、賃金の支払の確保等に関する法律施行令第1条)。ただし、やむをえない事情がある場合は、その事情の間は高利息を免れることができる。しかし、この期間であっても、民法の年5%という利息を支払う必要がある(民法第419条第2項)。 退職手当は、労働基準法上の当然の義務ではない。退職手当の定めをするときには、それに関する事項を労働契約の締結の際に明示しなければならず、また就業規則の制定の義務のある事業場では、定めをする場合には、所定の手続きによって、就業規則に規定しておかなくてはならない。これらの手続きが行われていれば、退職手当請求権が生じる。 使用者が従業員に対して、「何らかの形でその労に報いたい」と述べていたが、上記のような手続きをしていなかったケースでは、法的な退職金支給の約定まではしていなかったとの合理的な疑いがあるとして、退職金請求を認めないとした(北一興業事件)。 なお、本条に違反すれば、第120条により、30万円以下の罰金に処せられる。 |
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