労働基準法 条文 |
労働基準法 解説 |
第8章 災害補償 |
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第75条 【療養補償】
@ 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
A 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
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労働者が、業務上において、けがや病気をした場合、使用者は必要な療養を行ったり、療養費を負担しなければならない。この使用者が負担しなければならない範囲については、厚生労働省令で規定されている。
具体的には、労働基準法施行規則において規定されている。以下を参照。
条文 |
内容 |
第35条 |
法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。 |
第36条 |
法第七十五条第二項の規定による療養の範囲は、次に掲げるものにして、療養上相当と認められるものとする。
1 診察
2 薬剤又は治療材料の支給
3 処置、手術その他の治療
4 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
5 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
6 移送 |
別表第一の二 |
一 業務上の負傷に起因する疾病
二 物理的因子による次に掲げる疾病
1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患
2 赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患
3 レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患
4 マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患
5 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
6 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函病又は潜水病
7 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症
8 暑熱な場所における業務による熱中症
9 高熱物体を取り扱う業務による熱傷
10 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷
11 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患
12 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊死
13 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
三 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
1 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛
3 さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害
4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病
四 化学物質等による次に掲げる疾病
1 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であつて、厚生労働大臣が定めるもの
2 弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
3 すす、鉱物油、うるし、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患
4 蛋白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
5 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
6 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患
7 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚
8 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症
9 1から8までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他化学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
五 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和三十五年労働省令第六号)第一条各号に掲げる疾病
六 細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
2 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
3 湿潤地における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
4 屋外における業務による恙虫病
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病
七 がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
1 ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
2 ベーターナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍
3 四―アミノジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
4 四―ニトロジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
5 ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん
6 ベンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん
7 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫
8 ベンゼンにさらされる業務による白血病
9 塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫又は肝細胞がん
10 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫
11 オーラミンを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
12 マゼンタを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
13 コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん
14 クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん
15 ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん
16 砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん
17 すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による皮膚がん
18 1から17までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他がん原性物質若しくはがん原性因子にさらされる業務又はがん原性工程における業務に起因することの明らかな疾病
八 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病
九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
十一 その他業務に起因することの明らかな疾病 |
本条に違反した場合、第119条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる。 |
第76条 【休業補償】
@ 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
A 使用者は、前項の規定により休業補償を行つている労働者と同一の事業場における同種の労働者に対して所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下四半期という。)ごとの一箇月一人当り平均額(常時百人未満の労働者を使用する事業場については、厚生労働省において作成する毎月勤労統計における当該事業場の属する産業に係る毎月きまつて支給する給与の四半期の労働者一人当りの一箇月平均額。以下平均給与額という。)が、当該労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた日の属する四半期における平均給与額の百分の百二十をこえ、又は百分の八十を下るに至つた場合においては、使用者は、その上昇し又は低下した比率に応じて、その上昇し又は低下するに至つた四半期の次の次の四半期において、前項の規定により当該労働者に対して行つている休業補償の額を改訂し、その改訂をした四半期に属する最初の月から改訂された額により休業補償を行わなければならない。改訂後の休業補償の額の改訂についてもこれに準ずる。
B 前項の規定により難い場合における改訂の方法その他同項の規定による改訂について必要な事項は、厚生労働省令で定める。 |
本条は、休業補償についての規定である。
第1項については、以下を参照。
条文 |
内容 |
本条第1項 |
労働者が、業務上において、けがや病気をして、労働することができないために賃金を受けられない場合、使用者は、平均賃金の60%の休業補償をその療養中支払わなければならない。 |
※もし、使用者が支払わなかった場合は、第119条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる。
※この支払いは、毎月一回以上行わなければならない(労働基準法施行規則第39条)。 |
休業補償については、労働基準法施行規則にも規定がある。以下を参照。
労働基準法施行規則 |
内容 |
第37条の2 |
使用者は、労働者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、休業補償を行わなくてもよい。
1 懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて刑事施設(少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十六条第三項の規定により少年院において刑を執行する場合における当該少年院を含む。)に拘置されている場合若しくは留置施設に留置されて懲役、禁錮若しくは拘留の刑の執行を受けている場合、労役場留置の言渡しを受けて労役場に留置されている場合又は監置の裁判の執行のため監置場に留置されている場合
2 少年法第二十四条の規定による保護処分として少年院若しくは児童自立支援施設に送致され、収容されている場合又は売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十七条の規定による補導処分として婦人補導院に収容されている場合 |
第38条 |
労働者が業務上負傷し又は疾病にかかつたため、所定労働時間の一部分のみ労働した場合においては、使用者は、平均賃金と当該労働に対して支払われる賃金との差額の百分の六十の額を休業補償として支払わなければならない。 |
第38条の2 |
法第七十六条第二項 の常時百人未満の労働者を使用する事業場は、毎年四月一日から翌年三月三十一日までの間においては、当該四月一日前一年間に使用した延労働者数を当該一年間の所定労働日数で除した労働者数が百人未満である事業場とする。 |
第38条の3 |
法第七十六条第二項の規定による同一の事業場における同種の労働者に対して所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、第二十五条第一項に規定する方法に準じて算定した金額とする。 |
第38条の4 |
常時百人以上の労働者を使用する事業場において業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者と同一職種の同一条件の労働者がいない場合における当該労働者の休業補償の額の改訂は、当該事業場の全労働者に対して所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の四半期ごとの平均給与額が上昇し又は低下した場合に行うものとする。 |
第38条の5 |
法第七十六条第二項後段の規定による改訂後の休業補償の額の改訂は、改訂の基礎となつた四半期の平均給与額を基礎として行うものとする。 |
第38条の6 |
法第七十六条第二項及び第三項の規定により、四半期ごとに平均給与額の上昇し又は低下した比率を算出する場合において、その率に百分の一に満たない端数があるときは、その端数は切り捨てるものとする。 |
第38条の7 |
常時百人未満の労働者を使用する事業場における休業補償については、厚生労働省において作成する毎月勤労統計(以下「毎月勤労統計」という。)における各産業の毎月きまつて支給する給与の四半期ごとの平均給与額のその四半期の前における四半期ごとの平均給与額に対する比率に基づき、当該休業補償の額の算定にあたり平均賃金の百分の六十(当該事業場が当該休業補償について常時百人以上の労働者を使用するものとしてその額の改訂をしたことがあるものである場合にあつては、当該改訂に係る休業補償の額)に乗ずべき率を告示するものとする。 |
第38条の8 |
@ 常時百人未満の労働者を使用する事業場の属する産業が毎月勤労統計に掲げる産業分類にない場合における休業補償の額の算定については、平均賃金の百分の六十(当該事業場が、当該休業補償について、常時百人以上の労働者を使用するものとしてその額の改訂をしたことがあるものである場合又は毎月勤労統計によりその額の改訂をしたことがあるものである場合にあつては、当該改訂に係る休業補償の額)に告示で定める率を乗ずるものとする。
A 日日雇い入れられる者の休業補償の額の算定については、平均賃金の百分の六十に告示で定める率を乗ずるものとする。 |
第38条の9 |
前二条の告示は、四半期ごとに行うものとする。 |
第38条の10 |
休業補償の額の改訂について、第三十八条の四、第三十八条の五、第三十八条の七及び第三十八条の八の規定により難い場合は、厚生労働大臣の定めるところによるものとする。 |
第39条 |
療養補償及び休業補償は、毎月一回以上、これを行わなければならない。 |
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第77条 【障害補償】
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治つた場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。 |
労働者が、業務上において、けがや病気をして、その後治ったにしても、身体に障害が残っている場合には、使用者は障害補償をしなければならない。
障害補償については、別表第二と労働基準法施行規則第40条に規定されている。以下を参照。
別表第二 身体障害等級及び災害補償表 |
等級 |
災害補償
(労働基準法
第十二条の
平均賃金) |
身体障害 |
第1級 |
1340日分 |
一 両眼が失明したもの
二 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し常に介護を要するもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し常に介護を要するもの
五 削除
六 両上肢を肘関節以上で失つたもの
七 両上肢の用を全廃したもの
八 両下肢を膝関節以上で失つたもの
九 両下肢の用を全廃したもの |
第2級 |
1190日分 |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し随時介護を要するもの
二の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し随時介護を要するもの
三 両上肢を腕関節以上で失つたもの
四 両下肢を足関節以上で失つたもの |
第3級 |
1050日分 |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの
五 十指を失つたもの |
第4級 |
920日分 |
一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳を全く聾したもの
四 一上肢を肘関節以上で失つたもの
五 一下肢を膝関節以上で失つたもの
六 十指の用を廃したもの
七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
第5級 |
790日分 |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・一以下になつたもの
一の二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの
一の三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し特に軽易な労務の外服することができないもの
二 一上肢を腕関節以上で失つたもの
三 一下肢を足関節以上で失つたもの
四 一上肢の用を全廃したもの
五 一下肢の用を全廃したもの
六 十趾を失つたもの |
第6級 |
670日分 |
一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
三の二 一耳を全く聾し他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの
四 脊柱に著しい畸形又は運動障害を残すもの
五 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
六 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
七 一手の五指又は拇指を併せ四指を失つたもの |
第7級 |
560日分 |
一 一眼が失明し他眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの
二の二 一耳を全く聾し他耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの
三 神経系統の機能又は精神に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの
四 削除
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務の外服することができないもの
六 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指を失つたもの
七 一手の五指又は拇指を併せ四指の用を廃したもの
八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
九 一上肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの
一〇 一下肢に仮関節を残し著しい障害を残すもの
一一 十趾の用を廃したもの
一二 女性の外貌に著しい醜状を残すもの
一三 両側の睾丸を失つたもの |
第8級 |
450日分 |
一 一眼が失明し又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 脊柱に運動障害を残すもの
三 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指を失つたもの
四 一手の拇指を併せ三指又は拇指以外の四指の用を廃したもの
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
八 一上肢に仮関節を残すもの
九 一下肢に仮関節を残すもの
一〇 一足の五趾を失つたもの |
第9級 |
350日分 |
一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
三 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
四 両眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの
五 鼻を欠損しその機能に著しい障害を残すもの
六 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
六の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの
六の三 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり他耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になつたもの
七 一耳を全く聾したもの
七の二 神経系統の機能又は精神に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
七の三 胸腹部臓器の機能に障害を残し服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
八 一手の拇指又は拇指以外の二指を失つたもの
九 一手の拇指を併せ二指又は拇指以外の三指の用を廃したもの
一〇 一足の第一趾を併せ二趾以上を失つたもの
一一 一足の五趾の用を廃したもの
一二 生殖器に著しい障害を残すもの |
第10級 |
270日分 |
一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
一の二 正面視で複視を残すもの
二 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
三 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
三の二 両耳の聴力が一メートル以上の距離では尋常の話声を解することが困難である程度になつたもの
四 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
五 削除
六 一手の拇指又は拇指以外の二指の用を廃したもの
七 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
八 一足の第一趾又は他の四趾を失つたもの
九 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
一〇 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第11級 |
200日分 |
一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 両眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの
三 一眼の眼瞼に著しい欠損を残すもの
三の二 十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
三の三 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
四 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では尋常の話声を解することができない程度になつたもの
五 脊柱に畸形を残すもの
六 一手の示指、中指又は環指を失つたもの
七 削除
八 一足の第一趾を併せ二趾以上の用を廃したもの
九 胸腹部臓器の機能に障害を残し労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
第12級 |
140日分 |
一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 一眼の眼瞼に著しい運動障害を残すもの
三 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
五 鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨又は骨盤骨に著しい畸形を残すもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
八 長管骨に畸形を残すもの
八の二 一手の小指を失つたもの
九 一手の示指、中指又は環指の用を廃したもの
一〇 一足の第二趾を失つたもの、第二趾を併せ二趾を失つたもの又は第三趾以下の三趾を失つたもの
一一 一足の第一趾又は他の四趾の用を廃したもの
一二 局部に頑固な神経症状を残すもの
一三 男性の外貌に著しい醜状を残すもの
一四 女性の外貌に醜状を残すもの |
第13級 |
90日分 |
一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
二の二 正面視以外で複視を残すもの
三 両眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの
三の二 五歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
三の三 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
四 一手の小指の用を廃したもの
五 一手の拇指の指骨の一部を失つたもの
六 削除
七 削除
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第三趾以下の一趾又は二趾を失つたもの
一〇 一足の第二趾の用を廃したもの、第二趾を併せ二趾の用を廃したもの又は第三趾以下の三趾の用を廃したもの |
第14級 |
50日分 |
一 一眼の眼瞼の一部に欠損を残し又は睫毛禿を残すもの
二 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
二の二 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
三 上肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの
四 下肢の露出面に手掌面大の醜痕を残すもの
五 削除
六 一手の拇指以外の指骨の一部を失つたもの
七 一手の拇指以外の指の末関節を屈伸することができなくなつたもの
八 一足の第三趾以下の一趾又は二趾の用を廃したもの
九 局部に神経症状を残すもの
一〇 男性の外貌に醜状を残すもの |
労働基準法施行規則 |
第40条 |
@ 障害補償を行うべき身体障害の等級は、別表第二による。
A 別表第二に掲げる身体障害が二以上ある場合は、重い身体障害の該当する等級による。
B 次に掲げる場合には、前二項の規定による等級を次の通り繰上げる。但し、その障害補償の金額は、各ゝの身体障害の該当する等級による障害補償の金額を合算した額を超えてはならない。
1 第十三級以上に該当する身体障害が二以上ある場合 一級
2 第八級以上に該当する身体障害が二以上ある場合 二級
3 第五級以上に該当する身体障害が二以上ある場合 三級
C 別表第二に掲げるもの以外の身体障害がある者については、その障害程度に応じ、別表第二に掲げる身体障害に準じて、障害補償を行わなければならない。
D 既に身体障害がある者が、負傷又は疾病によつて同一部位について障害の程度を加重した場合には、その加重された障害の該当する障害補償の金額より、既にあつた障害の該当する障害補償の金額を差し引いた金額の障害補償を行わなければならない。 |
本条に違反した場合、第119条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる。
また、本条以外に、労災保険法による国からの補償給付がある。以下を参照。
労災保険法 |
第15条 |
@ 障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金とする。
A 障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ、別表第一又は別表第二に規定する額とする。 |
労災保険法 別表第1 |
一 同一の事由(障害補償年金及び遺族補償年金については、それぞれ、当該障害又は死亡をいい、傷病補償年金については、当該負傷又は疾病により障害の状態にあることをいう。以下同じ。)により、障害補償年金若しくは傷病補償年金又は遺族補償年金と厚生年金保険法の規定による障害厚生年金及び国民年金法の規定による障害基礎年金(同法第三十条の四の規定による障害基礎年金を除く。以下同じ。)又は厚生年金保険法の規定による遺族厚生年金及び国民年金法の規定による遺族基礎年金若しくは寡婦年金とが支給される場合にあつては、下欄の額に、次のイからハまでに掲げる年金たる保険給付の区分に応じ、それぞれイからハまでに掲げるところにより算定して得た率を下らない範囲内で政令で定める率を乗じて得た額(その額が政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)
イ 障害補償年金 前々保険年度(前々年の四月一日から前年の三月三十一日までをいう。以下この号において同じ。)において障害補償年金を受けていた者であつて、同一の事由により厚生年金保険法の規定による障害厚生年金及び国民年金法の規定による障害基礎年金が支給されていたすべてのものに係る前々保険年度における障害補償年金の支給額(これらの者が厚生年金保険法の規定による障害厚生年金及び国民年金法の規定による障害基礎年金を支給されていなかつたとした場合の障害補償年金の支給額をいう。)の平均額からこれらの者が受けていた前々保険年度における厚生年金保険法の規定による障害厚生年金の支給額と国民年金法の規定による障害基礎年金の支給額との合計額の平均額に百分の五十を乗じて得た額を減じた額を当該障害補償年金の支給額の平均額で除して得た率
ロ 遺族補償年金 イ中「障害補償年金」とあるのは「遺族補償年金」と、「障害厚生年金」とあるのは「遺族厚生年金」と、「障害基礎年金」とあるのは「遺族基礎年金又は寡婦年金」として、イの規定の例により算定して得た率
ハ 傷病補償年金 イ中「障害補償年金」とあるのは、「傷病補償年金」として、イの規定の例により算定して得た率
二 同一の事由により、障害補償年金若しくは傷病補償年金又は遺族補償年金と厚生年金保険法の規定による障害厚生年金又は遺族厚生年金とが支給される場合(第一号に規定する場合を除く。)にあつては、下欄の額に、年金たる保険給付の区分に応じ、前号の政令で定める率に準じて政令で定める率を乗じて得た額(その額が政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)
三 同一の事由により、障害補償年金若しくは傷病補償年金又は遺族補償年金と国民年金法の規定による障害基礎年金又は遺族基礎年金若しくは寡婦年金とが支給される場合(第一号に規定する場合及び当該同一の事由により国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定による障害共済年金又は遺族共済年金が支給される場合を除く。)にあつては、下欄の額に、年金たる保険給付の区分に応じ、第一号の政令で定める率に準じて政令で定める率を乗じて得た額(その額が政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)
四 前三号の場合以外の場合にあつては、下欄の額 |
区分 |
額 |
障害補償年金 |
一 障害等級第一級に該当する障害がある者給付基礎日額の三一三日分
二 障害等級第二級に該当する障害がある者 給付基礎日額の二七七日分
三 障害等級第三級に該当する障害がある者 給付基礎日額の二四五日分
四 障害等級第四級に該当する障害がある者 給付基礎日額の二一三日分
五 障害等級第五級に該当する障害がある者給付基礎日額の一八四日分
六 障害等級第六級に該当する障害がある者 給付基礎日額の一五六日分
七 障害等級第七級に該当する障害がある者給付基礎日額の一三一日分 |
遺族補償年金 |
次の各号に掲げる遺族補償年金を受ける権利を有する遺族及びその者と生計を同じくしている遺族補償年金を受けることができる遺族の人数の区分に応じ、当該各号に掲げる額
一 一人 給付基礎日額の一五三日分。ただし、五十五歳以上の妻又は厚生労働省令で定める障害の状態にある妻にあつては、給付基礎日額の一七五日分とする。
二 二人 給付基礎日額の二〇一日分
三 三人 給付基礎日額の二二三日分
四 四人以上 給付基礎日額の二四五日分 |
傷病補償年金 |
一 傷病等級第一級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の三一三日分
二 傷病等級第二級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の二七七日分
三 傷病等級第三級に該当する障害の状態にある者 給付基礎日額の二四五日分 |
労災保険法 別表第2 |
区分 |
額 |
障害補償一時金 |
一 障害等級第八級に該当する障害がある者 給付基礎日額の五〇三日分
二 障害等級第九級に該当する障害がある者 給付基礎日額の三九一日分
三 障害等級第一〇級に該当する障害がある者 給付基礎日額の三〇二日分
四 障害等級第一一級に該当する障害がある者 給付基礎日額の二二三日分
五 障害等級第一二級に該当する障害がある者 給付基礎日額の一五六日分
六 障害等級第一三級に該当する障害がある者 給付基礎日額の一〇一日分
七 障害等級第一四級に該当する障害がある者 給付基礎日額の五六日分 |
遺族補償一時金 |
一 第十六条の六第一項第一号の場合 給付基礎日額の一、〇〇〇日分
二 第十六条の六第一項第二号の場合 給付基礎日額の一、〇〇〇日分から第十六条の六第一項第二号に規定する遺族補償年金の額の合計額を控除した額 |
|
第78条 【休業補償及び障害補償の例外】
労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。 |
労働者が、業務上において、けがや病気をした場合において、その原因が労働者の重過失であり、その重過失を行政官庁が認定した場合は、休業補償または障害補償を行わなくてもよい。
けがや病気が労働者の重過失によるものであったとしても、そのことを行政官庁が認定しなければいけない。
また、本条には休業補償と障害補償についてしか書かれていないため、逆に言うと、療養補償・遺族補償・葬祭料については支払わなければならないということである。 |
第79条 【遺族補償】
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。 |
労働者が、業務上において、死亡した場合、使用者は、遺族に対して平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない。
本条に違反した場合、第119条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる。 |
第80条 【葬祭料】
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の六十日分の葬祭料を支払わなければならない。 |
労働者が、業務上において、死亡した場合、使用者は、葬祭を行う者に対して平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない。
本条に違反した場合、第119条により、6ヶ月以下の懲役か30万円以下の罰金に処せられる。 |
第81条 【打切補償】
第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。 |
第75条は、療養補償についての規定である。療養補償とは、労働者が、業務上において、けがや病気をした場合に、使用者が必要な療養を行ったり、療養費を負担することである。
本条は、療養を開始した後、3年経過しても、労働者のけがや病気が治らない場合、使用者は平均賃金の1200日分の打切補償を行えば、以後、労働基準法による補償を行わなくてもよいと規定している。
行政解釈では、本条の規定による打切補償を行えば、その後は一切の補償を行わなくてもよいとしている(昭和28年4月8日基発192号)。
ただし、本条の目的は、長期間の療養補償を免除するという点にあるため、療養補償とそれに伴う休業補償をしなくてもよいと解すべきであるが、労働基準法第77条の身体の障害が残れば、障害補償を請求できるとする学説もある。 |
第82条 【分割補償】
使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、第七十七条又は第七十九条の規定による補償に替え、平均賃金に別表第三に定める日数を乗じて得た金額を、六年にわたり毎年補償することができる。 |
障害補償(第77条)と遺族補償(第79条)は、金額が大きいため、本条により6年間の分割補償が認められている。ただし、この場合、以下の二点が必要である。
・使用者に支払い能力があることを証明すること
・補償を受ける者の同意があること
また、分割補償を開始した後でも、補償を受ける者の同意があれば、残額を一度に支払うことができる(分割補償をやめて、普通に支払うということである)。
分割補償の方法については、以下を参照。
条文 |
内容 |
労働基準法施行規則第46条 |
使用者は、法第八十二条の規定によつて分割補償を開始した後、補償を受けるべき者の同意を得た場合には、別表第三によつて残余の補償金額を一時に支払うことができる。 |
別表第三 |
種別 |
等級 |
災害補償 |
障害補償 |
第1級 |
240日分 |
第2級 |
213日分 |
第3級 |
188日分 |
第4級 |
164日分 |
第5級 |
142日分 |
第6級 |
120日分 |
第7級 |
100日分 |
第8級 |
80日分 |
第9級 |
63日分 |
第10級 |
48日分 |
第11級 |
36日分 |
第12級 |
25日分 |
第13級 |
16日分 |
第14級 |
9日分 |
遺族補償 |
|
180日分 |
※分割補償は、平均賃金に上記の日数を乗じた金額を、6年にわたり毎年補償する。 |
|
第83条 【補償を受ける権利】
@ 補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。
A 補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。 |
本章の災害補償を受ける権利は、退職したり解雇されたとしても、変更されることはなく、補償を受けることができる。また、補償を受ける権利は、譲渡や差し押さえをすることは、禁止されている。
補償を受ける権利の譲渡契約は、民法上無効とされている。また、本条には書かれていないが、民法第343条の質入、民法第510条の相殺も禁止されている。
本章の災害補償についてまとめたものは、以下である。
名前 |
条文 |
原因 |
金額 |
備考 |
療養補償 |
第75条 |
業務上において、けがや病気をした場合 |
必要な療養や療養費 |
打切補償ができる(第81条) |
休業補償 |
第76条 |
業務上において、けがや病気をし、休業した場合 |
休業中、平均賃金の60% |
労働者の重過失による場合で、その重過失を行政官庁が認めた場合は、支払わなくても良いとされている(第78条) |
障害補償 |
第77条 |
業務上において、けがや病気をし、身体に障害が残った場合 |
平均賃金に別表第一の日数を乗じたもの |
労働者の重過失による場合で、その重過失を行政官庁が認めた場合は、支払わなくても良いとされている(第78条)
6年間の分割補償ができる(第82条) |
遺族補償 |
第79条 |
業務上において、死亡した場合 |
平均賃金の1000日分 |
6年間の分割補償ができる(第82条) |
葬祭料 |
第80条 |
業務上において、死亡した場合 |
平均賃金の60日分 |
|
|
第84条 【他の法律との関係】
@ この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
A 使用者は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。 |
本条は、災害補償において、労働基準法とその他の法令などとの関係についての規定である。
業務上において、けがや病気をした場合、労災保険に入っていれば、国が補償してくれる。しかし、これにより相当な補償がなされない場合には、使用者はその足りない部分について責任を負わなければならない(差額補償)。
また、使用者が労働基準法による補償を行った場合、その価額の限度において民法による損害賠償の責任を免れる(逆に、使用者が民法の損害賠償をした場合、それが災害補償の一部となるような場合には、その不足額を補償すればよい。)。民法による損害賠償の額の方が、労働基準法による補償の額を上回る場合には、労働者はその上回る部分を損害を与えた者に対して請求できる。
本条については、労災保険法第64条も参照。
条文 |
内容 |
労災保険法第64条 |
@ 労働者又はその遺族が障害補償年金若しくは遺族補償年金又は障害年金若しくは遺族年金(以下この条において「年金給付」という。)を受けるべき場合(当該年金給付を受ける権利を有することとなつた時に、当該年金給付に係る障害補償年金前払一時金若しくは遺族補償年金前払一時金又は障害年金前払一時金若しくは遺族年金前払一時金(以下この条において「前払一時金給付」という。)を請求することができる場合に限る。)であつて、同一の事由について、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から民法その他の法律による損害賠償(以下単に「損害賠償」といい、当該年金給付によつててん補される損害をてん補する部分に限る。)を受けることができるときは、当該損害賠償については、当分の間、次に定めるところによるものとする。
1 事業主は、当該労働者又はその遺族の年金給付を受ける権利が消滅するまでの間、その損害の発生時から当該年金給付に係る前払一時金給付を受けるべき時までの法定利率により計算される額を合算した場合における当該合算した額が当該前払一時金給付の最高限度額に相当する額となるべき額(次号の規定により損害賠償の責めを免れたときは、その免れた額を控除した額)の限度で、その損害賠償の履行をしないことができる。
2 前号の規定により損害賠償の履行が猶予されている場合において、年金給付又は前払一時金給付の支給が行われたときは、事業主は、その損害の発生時から当該支給が行われた時までの法定利率により計算される額を合算した場合における当該合算した額が当該年金給付又は前払一時金給付の額となるべき額の限度で、その損害賠償の責めを免れる。
A 労働者又はその遺族が、当該労働者を使用している事業主又は使用していた事業主から損害賠償を受けることができる場合であつて、保険給付を受けるべきときに、同一の事由について、損害賠償(当該保険給付によつててん補される損害をてん補する部分に限る。)を受けたときは、政府は、労働政策審議会の議を経て厚生労働大臣が定める基準により、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。ただし、前項に規定する年金給付を受けるべき場合において、次に掲げる保険給付については、この限りでない。
1 年金給付(労働者又はその遺族に対して、各月に支給されるべき額の合計額が労働省令で定める算定方法に従い当該年金給付に係る前払一時金給付の最高限度額(当該前払一時金給付の支給を受けたことがある者にあつては、当該支給を受けた額を控除した額とする。)に相当する額に達するまでの間についての年金給付に限る。)
2 障害補償年金差額一時金及び第十六条の六第一項第二号の場合に支給される遺族補償一時金並びに障害年金差額一時金及び第二十二条の四第三項において読み替えて準用する第十六条の六第一項第二号の場合に支給される遺族一時金
3 前払一時金給付 |
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第85条 【審査及び仲裁】
@ 業務上の負傷、疾病又は死亡の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、行政官庁に対して、審査又は事件の仲裁を申し立てることができる。
A 行政官庁は、必要があると認める場合においては、職権で審査又は事件の仲裁をすることができる。
B 第一項の規定により審査若しくは仲裁の申立てがあつた事件又は前項の規定により行政官庁が審査若しくは仲裁を開始した事件について民事訴訟が提起されたときは、行政官庁は、当該事件については、審査又は仲裁をしない。
C 行政官庁は、審査又は仲裁のために必要であると認める場合においては、医師に診断又は検案をさせることができる。
D 第一項の規定による審査又は仲裁の申立て及び第二項の規定による審査又は仲裁の開始は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。 |
業務上において、けが・病気・死亡をした場合、その認定・療養方法・補償金額の決定・その他補償の実施に関して異議がある者は、行政官庁に対して審査・仲裁を請求することができる。
これに対して、行政官庁は、その職権で審査・仲裁をすることができる。この場合、必要があれば、行政官庁は医師の診断・検案をさせることができる。
行政官庁に審査・仲裁の請求をすることや、請求により実際に行政官庁が審査・仲裁を開始することは、時効の中断に関して裁判上の請求がなされたものとみなされる。つまり、時効の進行が一時的にストップするということである。
ただし、行政官庁に審査・仲裁の請求があった事件、請求により実際に行政官庁が審査・仲裁を開始した事件について、民事訴訟が提起された場合、行政官庁は審査・仲裁をしない。 |
第86条 【審査及び仲裁】
@ 前条の規定による審査及び仲裁の結果に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官の審査又は仲裁を申し立てることができる。
A 前条第三項の規定は、前項の規定により審査又は仲裁の申立てがあつた場合に、これを準用する。 |
労働者災害補償保険審査官とは、第85条の規定による審査・仲裁の結果に不服がある者が、あらたに審査・仲裁を請求するところである。ただし、この場合であっても、その事件について民事訴訟が提起されたときは、労働者災害補償保険審査官は審査・仲裁をしない。 |
第87条 【請負事業に関する例外】
@ 厚生労働省令で定める事業が数次の請負によつて行われる場合においては、災害補償については、その元請負人を使用者とみなす。
A 前項の場合、元請負人が書面による契約で下請負人に補償を引き受けさせた場合においては、その下請負人もまた使用者とする。但し、二以上の下請負人に、同一の事業について重複して補償を引き受けさせてはならない。
B 前項の場合、元請負人が補償の請求を受けた場合においては、補償を引き受けた下請負人に対して、まづ催告すべきことを請求することができる。ただし、その下請負人が破産手続開始の決定を受け、又は行方が知れない場合においては、この限りでない。 |
本条第1項の厚生労働省令で定める事業とは、以下を参照。
条文 |
内容 |
労働基準法施行規則第48条の2 |
法第八十七条第一項の厚生労働省令で定める事業は、法別表第一第三号に掲げる事業とする。 |
※法別表第一第三号とは、労働基準法の別表第1第3号のことで、「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業」、と規定されている。つまり、建設業のことである。 |
労働基準法第10条には、「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」、と規定されており、つまり、現実の監督責任者を使用者としている。しかし、建設業においての災害補償に関しては、元請負人を使用者とみなしている。
つまり、建設業においては、実際の労働時間や休憩についての使用者は下請負人、災害補償についての使用者は元請負人ということである。
ただし、元請負人が書面による契約で下請負人に災害補償を引き受けさせた場合は、その下請負人も使用者となる。この場合において、注意しなければならないことは、以下である。
・契約は口頭などでは駄目であり、書面によらなければならない。
・同一事業については、二つ以上の下請負人に引き受けさせてはならない。
・下請負人に災害補償を引き受けさせたとしても、元請負人の災害補償の義務がなくなるわけではない。
もし、書面による契約で元請負人が下請負人に災害補償を引き受けさせた跡で、元請負人が災害を受けた労働者から災害補償の請求を受けた場合、この元請負人は労働者に対してまずはじめに下請負人に請求するよう断る権利がある(催告権)。しかし、この下請負人がすでに破産手続開始の決定を受けていたり、行方がわからないときは、元請負人に催告権はなく、災害補償をしなければならない。 |
第88条 【補償に関する細目】
この章に定めるものの外、補償に関する細目は、厚生労働省令で定める。 |
補償に関する細目は、本章以外に、厚生労働省令で規定される。 |
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