商法 条文 | 商法 解説 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第2編 商行為 第1章 総則 |
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第501条 【絶対的商行為】 次に掲げる行為は、商行為とする。 1 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 2 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 3 取引所においてする取引 4 手形その他の商業証券に関する行為 |
本条は、営利性が強いものであるために当然に商法の対象となる行為について規定されている。営業と無関係な商人でない者のその場一回限りの行為であっても、商法が適用される。
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第502条 【営業的商行為】 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。 1 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為 2 他人のためにする製造又は加工に関する行為 3 電気又はガスの供給に関する行為 4 運送に関する行為 5 作業又は労務の請負 6 出版、印刷又は撮影に関する行為 7 客の来集を目的とする場屋における取引 8 両替その他の銀行取引 9 保険 10 寄託の引受け 11 仲立ち又は取次ぎに関する行為 12 商行為の代理の引受け 13 信託の引受け |
本条は、営業として行われた場合に商行為となり商法が適用される行為について規定されている。営業的商行為または相対的商行為という。営業として行われた場合とは、利益を得る目的で同種の行為を反復的・継続的に行われることをいう(つまり、その行為を商売として行うような場合のことである)。
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第503条 【附属的商行為】 @ 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。 A 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。 |
本条は附属的商行為についての規定である。附属的商行為とは、営業資金の借入れ、店舗の建築など営業の開始や継続のために必要な行為のことである。このような行為も商行為とされている。 また、営業を廃止するための後始末の行為も附属的商行為であると解釈されている。 |
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第504条 【商行為の代理】 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。 |
代理人は、「商人の代理人で、商人のために取引をしている」ということを、相手方に言わずに取引をしても、その取引から生じた権利義務は商人の権利義務となる。また、相手方は代理人に対して履行請求をすることができる。 民法では、代理人は上記のことをしっかり相手に伝えておかなければならない(これを顕名主義という)が、商取引においては継続して大量に取引があり複雑となるため本条が規定されている。 ただし、手形や小切手行為については商行為であるが書面のため、代理関係の表示が必要である。また、定款の発起人署名(会社法第26条)について、代理人であることを表示せずに自己の氏名を記載した場合に本条の適用はないとした判例がある。
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第505条 【商行為の委任】 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。 |
商行為の委任を受けた者は、本来の趣旨に反しない場合に限り、委任されていないことについても法律行為をすることができる。 民法第644条の趣旨を明確にした注意的規定である。 |
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第506条 【商行為の委任による代理権の消滅事由の特例】 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。 |
商人が死亡しても代理権は消滅しない。 民法では、本人が死亡した場合、代理権は消滅する(民法第111条第1項第1号)が、商行為の代理権の場合は違う。 |
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第507条 【対話者間における契約の申込み】 商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 |
第507条から第510条までは契約成立に関する民法の特別法である。 契約が成立するには、申し込みとそれに対する承諾という意思の合致が必要である。商取引においては、迅速性が求められるため、本条が規定されている。 対話者とは直接に面談できたり、電話で話ができる者ということである。本条の規定により、対話者間においては、申し込みに対してはすぐに承諾がなければ、契約は成立しない。 |
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第508条 【隔地者間における契約の申込み】 @ 商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。 A 民法第五百二十三条 の規定は、前項の場合について準用する。 |
隔地者とは、離れた場所におり郵便などでしか連絡が取れない者のことである。民法にも隔地者間の条文があるため、比較するとわかりやすい。
民法の隔地者については以下を参照。 第1節 総則 第521条〜第548条 |
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第509条 【契約の申込みを受けた者の諾否通知義務】 @ 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。 A 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。 |
本条は、得意先や仕入先などとの商取引についての規定である。
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第510条 【契約の申込みを受けた者の物品保管義務】 商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。 |
商取引においては、見本などをはじめに添付した上で申し込みを行うことがある。また、承諾を予想して、契約の目的物の全部または一部を送付することもある。そのようなときのための規定である。 このような場合、申し込みを断ったときであっても、申込者の費用でその品物を保管しておかなければならない。ただし、その品物の価額が保管費用にもならないときや損害を受けるようなときは保管する必要はない。 |
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第511条 【多数当事者間の債務の連帯】 @ 数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。 A 保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。 |
本条は民法の特則である。以下の表を参照。
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第512条 【報酬請求権】 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。 |
商人は自分の営業範囲において、他人のためにある行為をしたときは、それにふさわしい報酬を請求することができる(相手方は商人に限定されない)。ただし、社会通念上、無償であるのが普通であったり、報酬が代金等の対価に含まれる場合は請求できない。 民法では、他人のためにある行為をしても、特約がない限り報酬を請求できない(民法第648条、第656条、第665条、第702条)。 また、商法第550条、第561条、第576条、第618条に本条の特別規定がある。 |
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第513条 【利息請求権】 @ 商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息(次条の法定利率による利息をいう。以下同じ。)を請求することができる。 A 商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。 |
第1項は、金銭の貸し借りをした場合、利息の取り決めがなかった場合でも、年6%の利息(第514条)の支払いを請求することができるということである。これは商人と商人の間でのことである。 第2項は、自分の営業範囲において、他人のために金銭を立て替えた日から、年6%の利息(第514条)の支払いを請求することができるということである。これは相手方が商人に限定されないものである。 |
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第514条 【商事法定利率】 商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。 |
商行為によって生じた債務の利息は年6%である。これは、当事者の間で利息の取り決めがされていない場合であり、取り決めがある場合はそれに従う。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第515条 【契約による質物の処分の禁止の適用除外】 民法第三百四十九条 の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。 |
民法第349条は流質契約を禁止する規定である。本条は、その流質を認めるという規定である。つまり、商行為によって生じた債務が弁済されないときは、質権者が質物を自由に処分することができるということである。 質屋営業では、質屋営業法第19条において、流質が認められている。 |
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第516条 【債務の履行の場所】 @ 商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。 A 指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)においてしなければならない。 |
本条は民法第484条の特則である。
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第517条 【指図債権等の証券の提示と履行遅滞】 指図債権又は無記名債権の債務者は、その債務の履行について期限の定めがあるときであっても、その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う。 |
本条は、債務の履行について、民法第412条に対する特則を規定したものである。実際に、証券を持っている人から差し出されたその支払いを要求されたときにはじめて、その履行をする責任を負うということである。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第518条 【有価証券喪失の場合の権利行使方法】 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の所持人がその有価証券を喪失した場合において、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第百五十六条 に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその有価証券の趣旨に従い履行をさせることができる。 |
有価証券を喪失した場合に対しての救済の規定である。救済方法のひとつに、公示催告がある。これは、簡易裁判所が利害関係人の申し立てによって、公告の方法で失権の警告を付して権利届出の催告をすることである。有価証券を喪失した者が、これを行えば、債務者に対して債務の目的となっているものを供託させたり、みずから相当額の担保を供託したうえで、証券どおりの内容の義務を履行させることもできる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第519条 【有価証券の譲渡方法及び善意取得】 @ 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の譲渡については、当該有価証券の性質に応じ、手形法 (昭和七年法律第二十号)第十二条 、第十三条及び第十四条第二項又は小切手法 (昭和八年法律第五十七号)第五条第二項 及び第十九条 の規定を準用する。 A 金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券の取得については、小切手法第二十一条 の規定を準用する。 |
本条は有価証券の譲渡方法と取得者の保護についての規定である。金銭その他の物または有価証券を引き渡すことを内容とする有価証券の譲渡については、手形法と小切手法の規定の一部が適用される。
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第520条 【取引時間】 法令又は慣習により商人の取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、債務の履行をし、又はその履行の請求をすることができる。 |
法令の定めとは、例えば、銀行の営業時間(銀行法第15条)などである。 本条は任意規定であるため、特別の定めをしている場合などは適用されない。 |
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第521条 【商人間の留置権】 商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。 |
商人と商人が、お互いにとって商行為となる行為により生じた債権が弁済期にあるとき、債権者は債務者から弁済を受けるまで、債務者に所有権がある品物または有価証券を差し押さえておくことができる。ただし、当事者同士で別の取り決めをしていた場合はそれに従う。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第522条 【商事消滅時効】 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。 |
商行為によって生じた債権の消滅時効は、5年である。ただし、これは特別の定めがない場合であり、商法や会社法などの他の条文で別に期間が定められていることが多い。 商法第566条、第567条、第589条、第615条、第626条、第663条、第722条、第765条、会社法第701条などがそうである。 また、民法では、債権の消滅時効は10年である(民法第167条第1項)。 |
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第523条 【営業的商行為】 削除 |
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