商法 条文 | 商法 解説 |
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第2編 商行為 第3章 交互計算 |
交互計算とは、繰り返し頻繁に取引をする当事者の間で、債権と債務を一定期間ごとに差し引きして、その差額を当事者の債権または債務とする制度である。 |
第529条 【交互計算】 交互計算は、商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合において、一定の期間内の取引から生ずる債権及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払をすることを約することによって、その効力を生ずる。 |
本条は当事者のうちのどちらか一方は必ず商人でなければ適用されない。また、事実上金銭債権債務の場合に限られる。 銀行と顧客との当座勘定取引契約は、期末に一括相殺をするものではないため、本条の交互計算契約とはいえないとする者もいるが、判例や多数学説では交互計算にあたるとしている。 |
第530条 【商業証券に係る債権債務に関する特則】 手形その他の商業証券から生じた債権及び債務を交互計算に組み入れた場合において、その商業証券の債務者が弁済をしないときは、当事者は、その債務に関する項目を交互計算から除外することができる。 |
交互計算に組み入れられた債権債務は、総額相殺の方法によって決済されるべき制約を受けることとなる(これを交互計算不可分の原則という)。 手形や小切手などの有価証券が債権債務の中にあった場合、債務者がその支払いをしなかったときは、交互計算の当事者はその証券を除外することができる。 |
第531条 【交互計算の期間】 当事者が相殺をすべき期間を定めなかったときは、その期間は、六箇月とする。 |
当事者が相殺をする期間を定めなかったときは6ヶ月という期間になる。当事者が期間を決めていた場合は、その決めた期間になる。 |
第532条 【交互計算の承認】 当事者は、債権及び債務の各項目を記載した計算書の承認をしたときは、当該各項目について異議を述べることができない。ただし、当該計算書の記載に錯誤又は脱漏があったときは、この限りでない。 |
当事者は交互計算の計算書をいったん承認してしまうと、後からその一つ一つの項目について文句をいい決済をのばしてはならないということである。ただし、錯覚や誤解があったときや、計算書に記載漏れがあった場合は別である。 また、もし不必要に払いすぎていた場合などは、民法第703条以下の不当利得返還の請求の方法などで取り戻すことができる場合がある。 |
第533条 【残額についての利息請求権等】 @ 相殺によって生じた残額については、債権者は、計算の閉鎖の日以後の法定利息を請求することができる。 A 前項の規定は、当該相殺に係る債権及び債務の各項目を交互計算に組み入れた日からこれに利息を付することを妨げない。 |
交互計算期間の最終日以後、受け取る側は支払う側に対して年6%の利息を請求することができる。また、あらかじめ当事者の間で約束をしておくことで、交互計算に組み入れた日から、一つ一つの債権項目ごとに利息がつくようにすることもできる。 |
第534条 【交互計算の解除】 各当事者は、いつでも交互計算の解除をすることができる。この場合において、交互計算の解除をしたときは、直ちに、計算を閉鎖して、残額の支払を請求することができる。 |
交互計算は、当事者のうちの一方からいつでも解除をすることができる。この場合、すぐに交互計算期間が終了になったものとして、受け取る側は支払う側に対して残額の支払いを請求することができる。 本条の規定以外にも、以下のような場合に終了することがある。 ・あらかじめ契約期間を定めていた場合 ・当事者の一方が破産宣告をうけたとき(破産法第59条第1項) ・当事者が株式会社の場合は、当事者の一方が更正手続きの開始があったとき(会社更生法第63条) |
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