商法 条文 商法 解説
第1編 総則

第2章 商人
第4条 【定義】

 @ この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

 A 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。
商人には大きく分けて2種類ある。以下の表を参照。
商人の種類 条文 説明
商人
(本来の商人)
第4条1項 自己の名をもって商行為をすることを業とする者のことである。自己の名をもってとは、自分の氏名を使用するという意味でもないし、必ずしも自ら取引をする必要もなく、権利義務関係の当事者となることをいう。例えば、他人の氏名を使用して営業をしている場合、実際にその営業をしている人が商人となる(名前を貸している人は、第14条の名板貸しの責任を負うことがある)。また、ある店の甲が、店員の乙を雇って営業をしている場合、実際に取引をしているのが乙であっても、商人となるのは甲となる。
擬制商人 第4条2項 擬制商人には以下の2種類がある。

・「店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者」は擬制商人となる。例えば、農産物や水産物などを原始的に取得して販売するような者のことである。

・「鉱業を営む者」は擬制商人となる。鉱業の意義は、鉱業法第4条に規定されている。原始的に鉱物を取得して販売するような者のことである。
※どちらの場合でも、商法が適用される。


商行為には、絶対的商行為と相対的商行為がある。以下の表を参照。
名前 条文 説明
絶対的商行為
第501条 営利性が強いために当然に商法の対象となる行為
相対的商行為
(営業的商行為)
第502条 営業として行った場合に商法の対象となる行為
※詳しくは、第501条と第502条を参照。


どのようなものが、商人資格をもつのかはケースによって違いがある。特に、会社以外の法人については複雑である。以下の表を参照。
商人資格の有無について
名前 説明
自然人 誰でも商人となることができる。ただし、未成年者については、登記が必要である(第5条)。
公法人 国や地方公共団体 特別法などで別に規定されていることが多く、商法が適用されることは少ない。ただし、商法が適用されることもある。また、第2条も参照。
その他の公法人 公庫など
学校法人 私学など 特定の範囲で収益を目的とする事業を行うことが認められており、その場合には商人とされる。
自由職業 医師や弁護士や画家など 本人に営利目的があっても、このような職業の行為は営業ではないとされ、商人ではないとされていた。ただし、医師の病院経営や、弁護士の大規模法律事務所運営などは、商人性があるとされている。
第5条 【未成年者登記】

 未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。
未成年者が第4条の規定により商人となるときは、未成年者登記簿(商登第6条2号)に登記する(商登第35条以下)必要がある。

未成年者が法律行為をする場合、法定代理人(親権者、未成年後見人)の同意を得る必要がある(民法第5条1項)。同意がない場合は、取り消すことができる(民法第5条2項)。ただし、未成年者が法定代理人から許可を得て営業をする場合、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力があるとされている(民法第6条1項)。

このように、未成年者は法定代理人の許可があるのかないのかで、法的効果が異なるため、登記をする必要がある。もし、登記がなければ、その営業について完全な行為能力があることを善意者に対抗できない(第9条1項)。
第6条 【後見人登記】

 @ 後見人が被後見人のために第4条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

 A 後見人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
本条第1項については、以下の表を参照。
後見人 被後見人 説明 補足
・親権者(民法第818条以下)

・未成年後見人(民法第838条以下)
未成年者 後見人が被後見人の代理人として営業を行うことができる。これにより、被後見人は商人となる。 未成年後見人が代理人となるときは、後見監督人がいる場合はその同意を得なければならない(民法第864条から第865条)。

親権者の場合は特に制限はない。
・成年後見人 成年被後見人 成年後見人が代理人となるときは、成年後見監督人がいる場合はその同意を得なければならない(民法第864条から第865条)。
※上記の場合、取引を安全なものとするため、登記をしなければならない。


本条第2項は、後見人と取引をした第三者を保護するための規定である。後見人の代理権は営業の全ての範囲に及び、たとえその一部に制限があったとしても、その制限を知らない善意の第三者に対しては、制限について主張することはできない。


本条については、民法の以下の部分も参照するとよい。
第2節 行為能力 第4条〜第21条
第7条 【小商人】

 第5条、前条、次章、第11条第2項、第15条第2項、第17条第2項前段、第5章及び第22条の規定は、小商人(商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものをいう。)については、適用しない。
本条は、小規模経営者(小商人)に対しては、商人の企業施設に関する一般的規定を適用しないというものである。

小商人とは、その営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額(50万円。商法施行規則第3条)未満の者のことである。営業のために使用する財産とは、資本金のことではなく、営業経営の資金のことである。
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