商法 条文 | 商法 解説 |
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第3編 海商 第2章 船長 |
本章は船舶の船長についての規定である。 本章で削除されている部分は、船員についての規定がほとんどである。これらは、船員法や船員保険法において規定されている。 |
第705条 【船長の損害賠償責任】 @ 船長ハ其職務ヲ行フニ付キ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ船舶所有者、傭船者、荷送人其他ノ利害関係人ニ対シテ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス A 船長ハ船舶所有者ノ指図ニ従ヒタルトキト雖モ船舶所有者以外ノ者ニ対シテハ前項ニ定メタル責任ヲ免ルルコトヲ得ス |
「@ 船長はその職務を行うにあたって、注意を怠らなかったことを証明しない限り、船舶所有者、用船者、荷送人、その他の利害関係者に対して、損害賠償の責任を負う。 A 船長は船舶所有者の指図に従ったとしても、船舶所有者以外の者に対しては@の責任を負う。」 船長を選任する者は、船舶所有者、船舶賃借人、船舶管理者である。 |
第706条 【船長の船員監督責任】 海員カ其職務ヲ行フニ当タリ他人ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ船長ハ監督ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス |
「船員がその職務を行うにあたって、他人に損害を加えた場合、船長は監督を怠らなかったことを証明しない限り、損害賠償の責任を負う。」 商法の条文では船員のことを海員と書いている。 船長が休養中に、船員が他人に損害を与えた場合であっても、船長は責任を負うとする判例がある。ただし、船荷証券の約款などで、船長の責任について免責規定がある場合が多い。 |
第707条 【代理船長】 船長カ已ムコトヲ得サル事由ニ因リテ自ラ船舶ヲ指揮スルコト能ハサルトキハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外他人ヲ選任シテ自己ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得此場合ニ於テハ船長ハ其選任ニ付キ船舶所有者ニ対シテ其責ニ任ス |
「船長がやむを得ない事情によって、船舶の指揮をとることができないときは、法令で禁止されている場合を除いて、他人を代理船長にしてその者に職務を行わせることができる。この場合、船長は選任について船舶所有者に対して責任を負う。」 本条は船長が選任する代理船長についての規定である。他に、代行船長というものがあり、これは船長が死亡したり、代理船長を選任せずに船を去った場合などに、船員が船長の職務を代行する場合のことである。 |
第708条 削除 |
削除 |
第709条 【船舶に備え付けておく書類など】 @ 船長ハ属具目録及ヒ運送契約ニ関スル書類ヲ船中ニ備ヘ置クコトヲ要ス A 前項ノ属具目録ハ外国ニ航行セサル船舶ニ限リ国土交通省令ヲ以テ之ヲ備フルコトヲ要セサルモノト定ムルコトヲ得 |
「@ 船長は船舶の付属具目録および運送契約に関する書類を、船に備えて置かなければならない。 A @の付属具目録は、外国に航行しない船舶に限って、国土交通省令で備え付ける必要はないと規定することができる。」 |
第710条 削除 |
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第711条 削除 |
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第712条 【積荷の処分】 @ 船長ハ航海中最モ利害関係人ノ利益ニ適スヘキ方法ニ依リテ積荷ノ処分ヲ為スコトヲ要ス A 利害関係人ハ船長ノ行為ニ因リ其積荷ニ付テ生シタル債権ノ為メ之ヲ債権者ニ委付シテ其責ヲ免ルルコトヲ得但利害関係人ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス |
「@ 船長は航海中に積荷を処分しなければならない事態に陥ったとき、利害関係人に最も利益となるような方法で処分しなければならない。 A 利害関係人は船長の行為によって積荷に生じた債務の弁済方法として、積荷をその債権者に委付して、責任を免れることができる。ただし、その利害関係人に注意義務を怠ったようなことがあれば、できない。」 海難によって積荷が損害を受けたり、遅延によって積荷が腐るなどの理由で処分する必要があるときなどの規定である。処分とは、売却、寄託、捨てるなどのことである。処分できるのは、海上の危険から船を守るときだけである。 委付とは、損害賠償の責任を負う者が、自分の持っているある財産を相手に提供して、それで自分の責任を決済することをいう。Aが船を所有しており、Bに10の損害を与えたとする。この時、Aの船の値段、船が受け取る運賃などを全部足したら8だったとする。Aは8をBに提供すると、Bに与えた損害の賠償責任を決済することができる。 また、第833条の海上保険の条文にも委付という言葉がある。 |
第713条 【船長の代理権】 @ 船籍港外ニ於テハ船長ハ航海ノ為メニ必要ナル一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有ス A 船籍港ニ於テハ船長ハ特ニ委任ヲ受ケタル場合ヲ除ク外海員ノ雇入及ヒ雇止ヲ為ス権限ノミヲ有ス |
「@ 船籍港外において、船長は航海のために必要な、裁判上または裁判外の、一切の行為を、船舶所有者に代わって行う権限をもつ。 A 船籍港においては、船長は特に委任されている場合は別として、船員の雇い入れと解雇をする権限だけをもつ。」 @の航海のために必要な裁判外の行為とは、船員の雇い入れや解雇、船舶の修繕、食料や燃料の買い入れなどのことである。 |
第714条 【船長の代理権の制限】 船長ノ代理権ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス |
「船長の代理権に制限を加えたとしても、善意の第三者に対して、そのことを主張することはできない。」 善意とは、知らないことを言う。 |
第715条 【船長の代理権の制限】 @ 船長ハ船舶ノ修繕費、救助料其他航海ヲ継続スルニ必要ナル費用ヲ支弁スル為メニ非サレハ左ニ掲ケタル行為ヲ為スコトヲ得ス 1 船舶ヲ抵当ト為スコト 2 借財ヲ為スコト 3 積荷ノ全部又ハ一部ヲ売却又ハ質入スルコト但第七百十二条第一項ノ場合ハ此限ニ在ラス A 船長カ積荷ヲ売却又ハ質入シタル場合ニ於ケル損害賠償ノ額ハ其積荷ノ到達スヘカリシ時ニ於ケル陸揚港ノ価格ニ依リテ之ヲ定ム但其価格中ヨリ支払フコトヲ要セサリシ費用ヲ控除スルコトヲ要ス |
「@ 船長は船舶の修繕費、救助料、その他航海を継続するために必要な費用を支出するため以外に、次の1から3までの行為をしていはいけない。 1 船舶を抵当に入れること 2 金銭を借り入れること 3 積荷の全部または一部を売却または質入すること。ただし、第712条第1項の場合は別である。 A 船長が積荷を売却または質入する場合、積荷の所有者が受けた損害の賠償額は、その積荷が当然に到達するはずであった時の、陸揚げ港での価格によって決める。ただし、その金額の合計から、支出しなくてもよくなった費用は控除しなければならない。」 Aの支出しなくてもよくなった費用とは、入港税、関税、陸揚げ費用などのことである。 |
第716条 削除 |
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第717条 【船舶を競売する権限】 船籍港外ニ於テ船舶カ修繕スルコト能ハサルニ至リタルトキハ船長ハ管海官庁ノ認可ヲ得テ之ヲ競売スルコトヲ得 |
「船籍の港外において、船舶を修繕することができないときは、船長は海を管理する官庁の許可を得た上で、船舶を競売することができる。」 海外の港などで、修繕しても航海のために使用することができないとか、大修繕が必要なときなどのことである。 |
第718条 【船舶の修繕】 @ 左ノ場合ニ於テハ船舶ハ修繕スルコト能ハサルニ至リタルモノト看做ス 1 船舶カ其現在地ニ於テ修繕ヲ受クルコト能ハス且其修繕ヲ為スヘキ地ニ到ルコト能ハサルトキ 2 修繕費カ船舶ノ価額ノ四分ノ三ニ超ユルトキ A 前項第二号ノ価額ハ船舶カ航海中毀損シタル場合ニ於テハ其発航ノ時ニ於ケル価額トシ其他ノ場合ニ於テハ其毀損前ニ有セシ価額トス |
「@ 次の1と2の場合においては、船舶は修繕することができないものとみなす。 1 船舶が現在地において修繕ができない上に、修繕ができる場所まで航海できないとき 2 船舶の修繕費用が、船舶価額の4分の3を超えるとき A @の2の価額は、船舶が航海中に毀損した場合においては、航海に出る直前の価額をいい、その他の場合には毀損直前の価額をいう。」 @の1は、航海中に座礁した場合などを想定している。 |
第719条 【積荷の航海中の使用】 船長ハ航海ヲ継続スル為メ必要ナルトキハ積荷ヲ航海ノ用ニ供スルコトヲ得此場合ニ於テハ第七百十五条第二項ノ規定ヲ準用ス |
「船長は航海を継続するために必要なときは、積荷を航海のために使用することができる。この場合、第715条第2項の規定を準用する。」 例えば、石炭、重油、食料などであれば、航海で使用することができる。ただし、その場合、積荷の所有者に損害賠償をしなければならないが、その方法は第715条第2項に従う。 |
第720条 【船長の報告義務】 @ 船長ハ遅滞ナク航海ニ関スル重要ナル事項ヲ船舶所有者ニ報告スルコトヲ要ス A 船長ハ毎航海ノ終ニ於テ遅滞ナク其航海ニ関スル計算ヲ為シテ船舶所有者ノ承認ヲ求メ又船舶所有者ノ請求アルトキハ何時ニテモ計算ノ報告ヲ為スコトヲ要ス |
「@ 船長は、すぐに航海に関する重要な事項を船舶所有者に報告しなければならない。 A 船長は、航海終了ごとに、すぐに航海に関する収支計算をして、船舶所有者の承認を求めなければならない。また、船舶所有者の請求があればいつでも、収支計算を報告しなければならない。」 船長は航海日誌を備え付けておかなければならない。そして、これに記入したものの中で、重要な事柄などは船舶所有者に報告しなければならない。 |
第721条 【船長の解任】 @ 船舶所有者ハ何時ニテモ船長ヲ解任スルコトヲ得但正当ノ理由ナクシテ之ヲ解任シタルトキハ船長ハ船舶所有者ニ対シ解任ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得 A 船長カ船舶共有者ナル場合ニ於テ其意ニ反シテ解任セラレタルトキハ他ノ共有者ニ対シ相当代価ヲ以テ自己ノ持分ヲ買取ルヘキコトヲ請求スルコトヲ得 B 船長カ前項ノ請求ヲ為サント欲スルトキハ遅滞ナク他ノ共有者又ハ船舶管理人ニ対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス |
「@ 船舶所有者はいつでも船長を解任することができる。ただし、正当な理由なしに解任するとき、船長は船舶所有者に対して解任によって生じた損害を賠償するよう求めることができる。 A 船長が船舶所有者である場合、自分の意思に反して解任されたとき、他の船舶共有者に対して、相当の代価と引換に、自分の持分を買い取るよう請求することができる。 B 船長がAの請求をしたいときは、すぐに他の共有者または船舶管理人に対して、その通知をしなければならない。」 |
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